特集 改革開放40年 さらなる発展に向けた提言

2018-12-17 11:19:01

(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 瀬口清之(談))

今年は、中国の改革開放40周年と日中平和友好条約締結40周年を同時に迎えたが、この40年間に遂げた中国の目覚ましい経済発展は、世界の誰もが全く想像しなかった奇跡と言っても過言ではないだろう。そして日中間も、40年の歳月をかけて緊密な関係を築いてきた。

「改革開放」のモデルだった日本

中国の改革開放は1978年に始まっており、80年代の日本は中国にとって経済発展の目標となる大きなモデルだったと言えるだろう。当時副総理だった鄧小平氏は、訪日時の工場見学や新幹線乗車の体験をモデルに中国の発展を考えた。よって改革開放の初期段階では、中国の発展の将来像を示す日本は非常に大きな貢献をしたと私は思っている。

その背景には、日本と中国が文化面でさまざまな事物を共有しているという点が挙げられる。例えば中国から学んだ「仁義礼智信」などを日本人が誇りに思い、社会生活の中で実践していることを鄧小平氏や中国の方々が見たことは、彼らが日本に親近感を持つ大きな原因になっただろう。そうした心の絆も、日中関係の構築には非常に大きな役割を果たしたと思われる。

中国の改革開放は決して順風満帆ではなかった。例えば90年から91年にかけ、80年代に推進した市場経済化を見直し、もう一度計画経済に戻そうという動きが出た。当時の私は日本大使館に勤務していたが、市場経済化こそが中国経済の発展の原動力で、これを大いに進めるべきと考えていたため、先行きが非常に心配だった。だから92年1月、鄧小平氏が「南巡講話」で市場経済化路線を復活させることを目指すと語ったときには、本当にうれしく思ったものだ。

当時の中国は統制経済から自由主義経済、市場経済化への移行が始まったばかりで、糧票(食糧切符)や配給券が配られていた時代とさして変わりがなかったため、今のような経済発展を遂げるとは全く想像できなかった。私は93年に北京を離れ、2006年に2度目の着任をしたが、中国を離れた13年の間に起きた変化は、タイムマシンで100年ぐらいの時を飛び越えてしまったようなイメージで、今でも鮮明にそのときの驚きを覚えている。

その中国の経済発展は、日本にどのような良い影響を与えたのだろうか。リーマンショック後の世界経済の救済と成果については、誰もが疑う余地を持たないだろうし、隣国の日本は特にその恩恵を大きく受けたと思う。近年では中国からのインバウンド旅行客の急増、日本企業の中国での利益アップなどが挙げられ、それらの新たな中国市場が大きな存在価値を示すようになっている今、中国経済がもたらす日本経済へのメリットは一層大きくなってきていると言える。

今後の発展にも不可欠な日中協力

ここ数年、習近平国家主席は各国際会議の場で「中国が開いた門戸は閉じられることはなく、ただ大きくなり続けるのみである」と繰り返し強調しているが、改革開放を拡大し続けることで、国際社会といかに付き合っていくかが、大きな課題の一つとなっている。例えば今注目を集める「一帯一路」の実践がそれに当たる。

「一帯一路」は意味があるコンセプトだと私も思う。これに沿って中国が周辺国や関係国と平和的にウインウイン関係を構築し、協調発展を実現できればと強く願っている。

しかし、米国サイドや欧州の一部では誤解も含めたネガティブな評価があることも確かで、中国を脅威に感じる見方がまん延している。そうした見方に中国がいかにうまく対応していくのかが、今求められている。

ぜひ努力してもらいたいのは、中国政府が「一帯一路」や「人類運命共同体」の概念を対外的に説明する際、「世界秩序に挑戦する」のではなく、「世界との協調発展を目指している」のだとより一層分かりやすく伝えることだ。中国政府企業関係者の言動を他国の人々がどう受け止めるのかについて、今まで以上に深い配慮と行動が必要だということを、政府や企業を含む中国の人々の共通認識として持っていただきたい。そのためにも外国文化への理解を深める努力や外国人とのフランクな交流が大切だ。

経済成長を続けていた1980年代の日本も、今の中国と同じように欧米から脅威に思われていた。その後の日本は経済成長が止まり脅威ではなくなったので、今は欧米諸国とも良好な関係を保っている。

今後中国企業が欧米やアジアの諸国に出て行く際、すでに各国と良好な関係にあり安心と思われている日本企業と一緒に出ていけば、先方の懸念や不安も多少緩和されるのではと私は思う。つまり、日中共同プロジェクトの形で世界に進出するということだ。日中両国で緊密に連携を取り、世界の協調発展のために両国が手を携えて努力する方向を私は強く願っている。

また、日本企業が中国から学べることも出てきている。10月の安倍晋三首相の訪中前に深圳の視察がうわさされたが、私は首相は深圳に行くべきだったと思っている。

深圳で安倍首相に見てもらいたいのは、深圳にある中国企業が、日本企業よりもはるかにグローバル化された経営マインドを持っていることだ。米国を経験し、共にチャレンジし、世界と互角に闘い渡りあう深圳の企業の世界進出への勢いを、安倍首相にはぜひ肌で感じてほしい。

日本の経営者は常に日本の中のことばかり考えていて、海外で大きくチャレンジしようと考える積極的な経営者はとても少ない。それに日本の企業は数回失敗するとすぐ諦めてしまうが、深圳やシリコンバレーの企業は何度も失敗を繰り返した末に大きな成功をつかみ、発展している。世界で大きく成功するチャンスは、失敗を恐れぬチャレンジ精神でしか得られない。世界の市場を理解し、世界の市場に合わせた研究開発とコストダウンを行い、世界の顧客のために経営を変えていこうとする努力についても、深圳の企業の方がはるかに進んでいる。それを安倍首相に見てもらい、日本の企業経営者たちに向けて深圳に学び、このようなグローバル市場で互角に戦える企業経営の構築を目指せとぜひ言っていただきたい。

中国の改革開放によって世界経済は大きく下支えされ、貧困に悩む人々が世界的に見ても減少した。これからも中国が問われる課題はたくさんあるだろうが、技術面での進歩や、世界に対する貢献の増加を考えると、中国の発展と日中間の協力の拡大に私自身は一層大きな期待を寄せている。(聞き手構成=呉文欽)

 

人民中国インターネット版 2018127

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