【外商投資法】 新法に国内外の期待集まる

2019-05-20 10:21:09

沈暁寧=文

習近平国家主席は、3月15日に主席令第26号に署名し、同じ日に開かれた第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議で可決成立した「中華人民共和国外商投資法」(外商投資法)を公布した。新たに発表されたこの法律は、中国のハイレベルな対外開放にさらに堅実な法的基礎を固めるものとなり、中国での発展を求める海外企業により多くの保障とチャンスをもたらすだろう。

法の力でより開放的に

「中国の開放の扉は閉じることはなく、大きく開かれる一方だ」。2017年の中国共産党第19回全国代表大会(19大、党大会)に始まり、同年の「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」国際協力サミットフォーラム、そして昨年の博鰲(ボアオ)アジアフォーラムに至るまで、習主席は国内外の多くの重要な場面でこの言葉を繰り返し強調している。これは、現在の国際社会における脱グローバリズム保護主義の台頭という背景の下で、扉をより大きく開くという、中国が世界に向けて発信した積極的な信号である。

中国の改革開放はすでに40年の時を経ている。40年余りの間、中国と世界は絶えず深まる協力により、多くの重大な発展のチャンスをつくり、共有してきた。これにより得た成果は、対外開放政策によるけん引と大きな関係があるだけでなく、関連する法律の保障とも大きく関係する。 改革開放初期の1979年、中国で外資分野における初の法律である「中外合弁経営企業法」が実施され、中国と海外企業が手を携えた協力を促進した。その後、「外資企業法」や「中外合作経営企業法」が相次いで誕生し、法律という形式で中国と海外企業の協力の手段と範囲をさらに明確なものとした。この三つの法律は中国が外資を受け入れる法的基礎となり、長期にわたって中国と海外企業の協力環境づくりのルールを制定し、中国における外国投資家の投資の利益を守った。これらは「外資三法」と呼ばれている。

中国の外資利用規模の拡大と質の向上に伴い、中国の対外開放事業は新たな局面を迎えることとなる。昨年末までの段階で中国に設立された外資系企業は累計約96万社で、実際に利用された外資は累計2兆1000億を超えた。昨年、世界ビジネス環境ランキングで中国は前回の78位から46位に躍進した。特に、12年の第18回党大会以降、中国は開放型経済新体制の構築をスタートし、中国経済と世界経済との融合をさらに深めることで、質の高い発展を実現する必要が出てきた。これは、中国の市場環境が、より公平で透明かつ予測可能であることへの要求だ。「外資三法」は、現在の中国と海外企業の協力の発展と、外国投資家による中国市場開拓の速度に明らかに追い付いていなかった。そのため、対外的な法律法規体系の樹立と整備、内資外資に関する法律の統一を求める声が高まっていた。  国内外企業の呼び掛けに応じて、11年時点で「外商投資法(草案)」の法律改正研究がスタートしていた。15年にはこの草案を商務部の公式サイトが初めて公開し、意見を募集した。昨年12月、国務院は3年間下準備をしていた「外商投資法(草案)」を全人代常務委員会の審議に提出した。それから2カ月間、全人代常務委員会はこの草案について2回の審議を行って、内外資本を一律に扱うことや、公平な市場環境を擁護するなどの面で調整完備のための多くの意見を集めた。これと同時に草案は、実務の第一線に対する調査研究、一般人に対するネットでの意見募集、外国商工会や外資系企業に対する座談会形式での意見聴取などを経て、科学的民主的立法という精神に基づき、常に内容を豊かなものにし、修正を繰り返した。  草案は今年3月の第13期全人代第2回会議に提出され、審議された。全人代代表たちは真剣な討議を経て、2000通余りの改善意見を提出し、「外商投資法」の改定制定と公布の基礎をつくった。3月15日に草案が最終的に全人代で可決成立し、中国の新時代の対外開放精神を反映し、国内外企業の中国市場に対する要求を満足させる「外商投資法」が誕生した。

「中国の対外開放立法は、外資に関する法の整備から始まり、発展してきたものだ」。かつて外資法の制定に携わり、世界貿易機関(WTO)紛争解決機関の上級委員会委員長を務めたこともある張月姣氏は、この新しい法律について感慨深げに語る。「『外商投資法』が『外資三法』に取って代わることは、時代の大勢に順応し、中国の対外経済立法がまた新たな段階に入ったことも意味している」 中国社会科学院世界経済政治研究所の張宇燕所長もまた、「『外商投資法』の制定は、中国が制度を整備する形での開放に向かって踏み出した重要な一歩だ。これは制度を保障とし、規則を基礎とする中国の投資環境を確立するもので、全面的開放という新たな局面の中で、よりハイレベルで、より質の高い発展の実現を推し進めるだろう」と語った。

投資環境の根本的な改善

新たに発表された「外商投資法」は全6章からなり、投資促進、投資保護、投資管理などの分野で明確な規定を行った。外国投資家による投資に対し、参入前内国民待遇とネガティブリストによる管理制度を実行し、案件ごとの審査制度というこれまでの管理モデルを廃止し、外国投資家による投資の過程における自由意志の原則と商業ルールに基づく技術協力の展開を奨励する。また、行政機関およびその職員は行政手段を利用して技術移転(2)などを強制してはならない、などの法規が目玉となっている。これらは国内外企業の関心に集中的に応えたもので、中国の外国投資家による投資の管理体制にとって、根本的な変革といえる。

「外商投資法」の規範制約の下では、中国に投資する外国投資家は今後、煩雑な政府の許可手続きに悩まされることなく、「法律で禁止されていなければ、それを行うことができる」といった環境の中で自由に創業発展することができる。彼らは中国政府から中国企業と同等の待遇を与えられ、中国企業と同一線上で自由意志による競争と協力を展開することができる。中国のビジネスで、外資系企業の知的財産権は法律によって保護されるだけでなく、強制的な技術移転を要求されることもない。

米ゼネラルエレクトリック(GE)社の段小纓グローバル高級副総裁は「外商投資法」をこう評価する。「この法律は、中国により公平で効率的で予測可能なビジネス環境をもたらし、われわれが中国で製品の研究開発、イノベーション、生産サービスに力を注ぐのに有利となり、最終的に中国市場と消費者が享受する利益をより多くする」。法治は最も優れたビジネス環境だ。中国市場でさまざまなチャンスを狙っている外資系企業にとって、「外商投資法」の公布が中国での投資をより安心させることは間違いない。

松下電器(中国)有限公司の趙炳弟総裁は、「外商投資法」について、「中国の改革開放の道を照らす新たなともしびだ」と語る。趙氏は「外商投資法」の立法過程に注目。この新法が外国投資家による投資の促進と保護を優先的地位に置いていることを深く感じ、中国の揺るぎない開放拡大と徹底した改革進行の決意を見ることができると考える。「松下は最も早く中国市場に参入した外資系企業の一つとして、一貫して創業者である松下幸之助氏の約束を守り、中国の発展のために貢献し続けてきた。われわれは中国政府が外国投資家による投資の安定的成長を促進し、安定した投資環境をつくり、全方位的に対外開放を行って、一流のビジネス環境をつくり上げることをとても期待している。われわれは中国に対する投資と協力を強化し、多くの協力パートナーとウインウインな発展を追求していきたい」 中国企業にとっても、「外商投資法」のプラス作用は明らかだ。ハルビン九洲電気株式有限公司の李寅理事長は次のように指摘する。「中国が外資に向けてさらに扉を開くことで、外国投資家による投資が中国市場を刺激し、中国企業が外資系企業と同じ舞台で競争する中でのモデルチェンジやアップグレードを促進する。それは中国企業が製品の品質向上や先進技術の研究開発、著名ブランドの創設に役立ち、国際化がさらに進む」

万人が「外商投資法」を褒めたたえている中、次のように提起する声もあった。この法律は外国投資家による投資に関する新しい基礎的な法律であり、「外商投資法」の実際の効果を発揮するためには、付属法規をすぐに発表して同時に施行しなくてはならない。

商務部は3月22日に記者会見を行い、「外商投資法」のスムーズな実施を確保するため、現在積極的に「外商投資法」の付属法規を制定しているところで、既存の外資管理規定を全面的に整理していると言明した。この過程において、商務部と関係部門は外資系企業などから意見提案の聞き取りを積極的かつ真剣に行っているところだ。対外経済貿易大学国際経済貿易学院の崔凡教授は、「関連条例は今年末には発表されるだろう」と分析する。

国際社会の評価と期待

「外商投資法」の公布は中国の投資環境の向上を象徴するもので、国際社会から高い評価を得た。フランスの中国語新聞紙『欧州時報』は次のように報道した。「今までと異なり、中国は外資に優遇措置を与えるだけにとどまらず、同時に外国投資家のビジネス環境の改善を図っている。海外からの投資を『招き入れ』て、さらに『とどめる』ことができる『外商投資法』は、外国投資家が求める変化の大勢に適応し、時代と共に進む法的保障を提供する。先進国と発展途上国が外国投資家による投資の魅力を強化しようと努力している現在、中国が『外商投資法』を公布したことはまさに時宜にかなっている」。韓国紙『中央日報』は社説で、「中国政府は外国投資家に対する保護政策を強化しているところで、韓国企業にも大きなチャンスとなる。韓国企業の中国における投資協力の意欲はさらに上がるに違いない」と評価している。

在中外資系企業の発展の見通しはさらに楽観的になった。フランスのトタル(中国)投資有限責任公司の趙偉良理事長は、「『外商投資法』は中国市場で投資する外資系企業に、よりはっきりとした、統一的で、より強力な法的保障を提供する。『外商投資法』実施後、われわれは中国市場が外国投資家に向けてより平等に開放されることを期待しており、一部の外国投資家が直面している潜在的な障害も次第に消えていくだろう」と語る。ドイツのメルクグループのアランガボール中国総裁は、「『外商投資法』は中国における外資の発展により力強い保護を提供し、長期的には投資家の自信の保障になる。これはまた、中国と外国のイノベーション方面における協力改善にも有利で、中国のビジネス環境をより健全なものにする」と語る。

習主席が署名した主席令によると、「外商投資法」は2020年1月1日に正式に発効する。このとき、中国市場と在中外資系企業の新たな発展チャンスの幕が開ける。

中国が確固たる意志と力強い行動によって世界とのウインウインを実現する約束を果たしたことに対し、ロレアル中国のステファンリンデルクネックCEOはこう語る。「自由貿易と投資の確固たる支持者として、ロレアルは中国政府の改革開放の堅持によって得られた大きな経済成果を目撃し、共同繁栄の受益者となった。われわれは、中国が今まさに新たな開放拡大政策を積極的に推進していることを高く評価し、称賛する。中国市場はより安定した、透明で予測可能で、公平な競争の市場に変化しつつあり、これによりわれわれの中国市場への自信は今までにないほど強烈なものとなっている」

 

人民中国インターネット版 2019年5月

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