投資で商社の出番が増える
2019-05-20 10:33:43
陳言=文
西原茂樹氏は3月末に東京都で行われた伊藤忠商事と山東省煙台市の交流活動の現場から、通常とは異なる熱気を感じた。
西原氏は1989年に地方議会の議員になり、後には静岡県牧之原市の市長として、中日の地方政府・自治体間、企業間の交流活動に数多く参加してきた。「伊藤忠商事の社員と煙台の企業がそれぞれ一列に並んで、その交流活動の場で20余りの協力協議に署名しました」。その情景を思い浮かべた西原氏は、規模も雰囲気も予想を超えたものだったと感じたという。
「外商投資法」の実施後、日本の商社が中国で投資するチャンスがより増えることは、ほぼ間違いない。
経済交流には商社が必要
筆者は4月5日に西原氏を訪ねた。氏は2017年に牧之原市市長を退任後すぐに、中日企業交流組織である Made in Japan by China(MIJBC)センターの理事長に就任した。市長時代も積極的にMIJBCの活動を推し進め、退任後も関連業務を続け、地方行政において静岡県と中国・中国企業との交流を極めて緊密なものとしている。
西原氏には次のような考えがある。地方の企業は数に限りがあり、規模もさほど大きくなく、県レベルでの中国との経済交流はさほど多くない。しかし、日本全体の経済力を動員して日本と中国の交流を新たな段階に押し上げるためには、大手企業の参入が必要とされる。そして商社は、投資・物流・情報など各方面での強みを持ち、交流を促進する十分な力を持っている。伊藤忠商事と煙台市との交流活動に参加した西原氏は、日本と中国との新たな経済交流の中で商社が果たす役割はとても大きいと、いっそう感じた。
「静岡県には世界とつながっている静岡空港や清水港があり、中国の地方空港や山東省・浙江省の港と多くの往来があります。しかし結局地方の空港・港にすぎず、日本全国の力を集中させてここで中国企業との交流を行うなら大手企業の参加が不可欠です。特に、商社の役割を十分に発揮させることができれば、交流の成果もまたさらに多くなるでしょう」と西原氏は語る。
例えば、清水港での中日間の貿易交流はここ数年かなり増加している。中国で製造された各種製品の展示会を開き、定期的に中日企業商談会を行えば、伊藤忠商事と煙台市の交流会のように、新たなプロジェクトが次々に生まれるだろう。展示会で直接品物を確認することによって、中国製品の設計・改良などの面で、日本企業はより具体的な役割を見いだせる。唯一の問題は、一つの自治体や民間組織の力だけでは、日本全体の強みを集結させることは難しいということだ。こうした時に求められるのが大手企業、特に商社の参加だ。
金融面の投資に期待
日本の対米投資と対中投資を比較してみると、多くの差があることが分かる。 今年4月時点で、日本銀行が発表した対外投資の関連データは2013年までのものしかない。投資額を見ると、09年の対米投資額は9989億円で、対中は6492億円だ。10~12年で対米投資は伸び始め、13年第1~3四半期の対米投資は3兆7130億円だった。それに対し、対中投資額は基本的に大きな変動がなく、13年の第1~3四半期は6254億円で、年間の増加幅は大きいとは言えない。
その原因を分析すると、まず製造業の対中投資が基本的に飽和状態にあることが挙げられる。新たな投資があっても、ほとんどが流通などの分野におけるものであり、投資額はさほど大きいものではない。特に13年以降の数年間、日本企業は最も有望な投資先としてインドネシア・インド・タイなどを考えていた。昨年になってようやく中国が第1位に返り咲いている。
日本の対米投資は中国のほぼ3倍に当たる。製造業分野での工場建設というパターンもあるが、三井住友信託銀行の関連レポートを見ると、主に社債(8)、政府関係機関債(9)および株券に投資が集中している。対中投資を増やすなら、特に金融方面で新たな分野を開拓する必要がある。
イノベーション企業は注目の的
今年に入って、日本の商社が投資という観点で中国のイノベーション企業に注目するという大きな変化が起きている。
中国経済を専門に研究する拓殖大学の藤村幸義名誉教授は、深圳市の実地調査から戻った後、「伊藤忠が深圳で事務所を開設しましたよ」と教えてくれた。深圳は中国のイノベーション企業が活躍を続ける場所であり、イノベーションの最先端の動向を感じ取ることができる。伊藤忠が深圳に事務所を開いた大きな目的は、新たな投資プロジェクトを探すためである。
筆者は深圳で、現地の衛星テレビ局が丸紅調査部の鈴木貴元部長を取材した番組を見た。鈴木部長は月に1回は深圳に行き、イノベーション企業と深く交流し、新たな投資企業を探している。
中国に工場を建てるという直接投資ではなく、中国で成長するチャンスを秘めた企業を探し、それらの企業に投資することは、中国企業の発展を助けるとともに自社の成長に結び付く。「外商投資法」実施後、中国の投資環境はより優れたものとなり、日本は投資経験・管理能力・技術の蓄積(10)によって、投資をより増やすことになる。
今後、日本の商社などは中国に新たな投資分野を打ち立て、中日の経済面における交流に新たな一歩を踏み出してくれるだろう。
人民中国インターネット版 2019年5月
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