金融分野に見る日本の好機
2019-05-20 10:37:05
陳言=文
中国は今、世界最大の投資先国となった。改革開放40年余りにわたって、外国の投資家を中国に引き付けたのが中国の製造能力と市場の魅力だったとすれば、経済に大きなモデルチェンジが起きているときに、中国への投資に興味を持たせ、資金供給の継続を確実に保証するのなら、より安定した投資環境が必要となる。
今年の「両会」では、「外商投資法」の成立が注目を集めた。この新しい法律は、対外開放の拡大、外国投資家による投資の促進やそれに対する合法的な利益の保護、全面的な開放の新しい構造づくりの推進と、中国経済の健全な発展の促進において重要な役割を果たすことになる。この新法に対し、日本の行政機関と銀行の見解がどのようなものかは、特に注目に値する。
外資導入額世界第2位
日本の企業家や銀行家から話を聞くと、中国の投資市場に対する関心の高さが印象的だった。
国際連合が昨年6月に発表した『2018年世界投資報告書』によると、中国の外資導入額は米国に次ぐ世界第2位だった。だが、中米には大きな違いがある。中国への投資は主に製造・生産、物流・卸売りを展開するためだが、米国において製造・生産への投資が全くないとは言えないが、それは主な目的ではない。世界中の投資が米国に流れる要因の一つは、充実した金融市場があるからで、米国の金融市場に投資し、合併と買収(M&A)を展開することが米国に進出する外国資本の最大の原動力だ。
日本の銀行が中国へ投資するとき、中国市場をどう見ているのか。筆者は4月4日に国際協力銀行(JBIC)企画部門の西崎隆太郎報道課長を取材した際、昨年11月の最新調査を見せてもらった。それによると、中国は最も有望な投資先国と見なされている。中国を有望視している理由として、以下の点が挙げられた。今後の現地市場に強い成長性があること、市場規模が巨大であること、組み立て工場の供給拠点となり得ること、自国の産業集積があること、現地の道路交通インフラが整っていること。
JBICの分析を読むと、中国に資本が進出する主な理由は中国の市場と製造能力にあると考えられる。近年、市場要素が製造要素より重要視されるようになってきたが、市場と製造は依然として日本資本が中国に進出する主な動機だ。単純に市場と製造能力を考える場合、東南アジア諸国もとても魅力的であり、インドは将来的に中国と競争できる国の一つになるだろう。
欧米の資本市場の場合、これらの国・地域に資本が進出する主な目的は、金融市場で十分な運用を図り、金融的な手段で現地の産業やサービス業を発展させることにあるだろう。中国が欧米のような投資レベルにまで達するには、まだ長い道のりがある。
後発の中国金融の強み
ここ数年、中国の銀行や証券、保険は明らかに成長した。少なくとも、規模からそれをはっきりと見て取れる。しかし、サービス能力や金融商品の開発力はまだ不足しており、国際市場への影響力は日本を含む先進国とは比べものにならない。 経済成長の法則から見ると、金融が誕生するのは製造業が発達してからだ。一方、金融は製造業の発展を促し、経済を絶えず推進する。中国の製造業が規模と技術において明らかな進歩が見えたのは近年になってからのことで、この頃に初めて金融が発展する余地が生まれたのだ。
中国の今後の発展は、自国の金融業を欧米の過程に沿って一歩ずつ進ませるのではない。実力のある製造業は、同じく実力のある金融・保険と共に発展していくと考えられ、海外の経験がとりわけ重要となる。
中国はこれまで、外資が金融・保険分野に進出し、M&Aを行うことで一部の時代遅れの企業を淘汰し、未来性のある企業のよりスピーディーな成長を支えることをあまり重視してこなかった。現在、改革開放の経験を豊富に持っている中国は、立法を通じて外資の投資条件を変え、金融のより速い発展を促すことが十分に可能だ。
日本の証券会社が早速布石
朝日新聞は3月30日付けの朝刊で、野村ホールディングスが中国金融管理部門から子会社設立の認可を受けたと報道した。
これまでの中国の法律では、海外企業が中国で子会社を設立する場合、出資の上限は49%とされており、株式の過半数保有は許されていなかった。しかし現在、中国は外資系企業に対する制限を調整して、51%という過半出資を容認した。言い換えれば、外資系企業は自社の中国子会社で物事を決定できるようになった。わずか2%の違いだが、無視できない変化だ。なぜならこれによって、金融分野の合弁会社は、中国出資側の決定に従わなければならない立場から、外資系金融企業が中国で最終的な決定を下せるようになったからだ。
「私たちの子会社は主に中国の富裕層に向けて資産管理サービスを提供します。年内に営業開始できる見込みです」と野村ホールディングスの関係者は紹介した。 筆者が取材した日系製造業企業は、「われわれこそ、中国に最初に進出した企業です」と紹介するところが多かった。野村ホールディングスは中国で最初に政府の認可を受けた金融企業であり、金融分野でもやはり日本が世界に先駆けている。今後も日本の企業が中国で大きな影響力を発揮することになるはずだ。
人民中国インターネット版 2019年5月
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