特集 発展と豊かな暮らし促進

2019-08-05 13:59:37

13期全人代第2回会議が3月5~15日、北京の人民大会堂で開かれた。李克強国務院総理は開幕日の5日、5000人余りの全人代代表と全国政協委員を前に、昨年の政府活動を総括し、今年の国家発展計画の青写真を報告した。その理性的、実務的で優れた報告内容に、満場の代表委員から何度も熱烈な拍手が送られた。この政府活動報告における、中国共産党と政府の、中国経済の発展と人々の生活改善を推し進める決心と自信、その英知に、出席者たちは深い感銘を受けた。国際社会もこの報告に次々に賞賛を表明した。それは、世界が中国の前進の歩みから、世界の発展と繁栄に中国が払った努力と作り出したチャンスを見て取ったからだ。

安定的、理性的な経済成長の目標

李克強総理は政府活動報告の中で、「今年の経済社会発展の主要所期目標として、国内総生産(GDP)の成長率は60~65%」とした。これは、国内外の経済発展の状況から理性的に決定されたものだ。報告にもあるように、中国は大きく変化する外部環境に直面した。経済のグローバル化は曲折をたどり、多国間主義が揺さぶられ、国際金融市場が変動した。特に中米経済貿易摩擦により、一部の企業の生産経営や市場の期待が影響を受けた。同時に、中国は経済のモデルチェンジの痛みにも直面した。新旧の矛盾が入り交じり、周期的な問題と構造的な問題が重なり合い、経済の動きは安定の中に変化があり、変化の中に不安が生まれた。今年、中国の発展が直面する環境は、さらに複雑さと厳しさが増し、予測できるもの、予測できないもの、いずれのリスク試練も増加増大する。しかし、中国の発展は依然として重要な戦略的チャンスの時期にあり、十分な強靭性、巨大な潜在力、ほとばしるようなイノベーションの活力があり、人民大衆がより良い生活を求める気持ちは非常に強く、経済の長期的な上昇傾向は変わっていないし、変わることはない。

経済安定を最優先の活動報告

聯迅証券の首席エコノミストの李奇霖氏はこう述べる。「GDPの成長率の目標が60~65%に定められたことは、マーケットの予測と一致している。2016年と同じように、成長目標は範囲表示に戻り、反循環的な調整政策に一定の自由度を与えている」。長江証券研究所マクロ(経済)部担当の趙偉氏は、これは中国政府がさらに経済発展の質を重視していることを示し、経済成長速度についての許容度は引き続いて高まると指摘した。スペインのEFE通信社は、今年のGDP成長率に対して中国政府は、慎重ながらも楽観的な姿勢である。また、チャンスと課題が依然として共存する状況で、将来の中国は経済成長の質をより重視するだろう、と伝えた。

しかし、中国の昨年のGDP成長率66%と比べると、今年の目標範囲が下方修正されたことに心配も出ている。今回の政府活動報告の中で、「経済の動きを合理的な範囲内に確実に保つ」という表現があったが、これは中国政府の安定的な経済成長についての確固とした意志を反映している。イタリアの『24オーレ紙』は以下のように報道した。中国は経済成長の目標を下方修正したが、これは経済発展の意気込みをなくしたものではない。今年は中華人民共和国成立70周年に当たり、中国政府は「経済の安定」を最優先事項としている。従って、「中国経済の成長ペースの変化」を「衰退の兆し」と読み解くのは大きな間違いだ。中国の科学技術分野における意気込みは非常に大きく、関連する経済の実力や政治の影響力は依然としていささかも失われていない。日本のキヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之研究主幹の見方はこうだ。17年から18年上半期、中国経済は新中国の成立以来で最も安定した時期に入った。確かに中国経済は昨年下半期から再び緩やかな減速状態に入ったが、これは決して中国経済が急激な減速状態にあるということではなく、依然として安定した発展を維持している。

経済運営の目標を実現するために、中国政府は安定成長とリスク防止の関係について対処する要求を打ち出した。今回の活動報告では、「現在、経済の下押し圧力がさらに増している状況で、政策活動措置の公布に当たっては、それが期待の安定化、成長の安定化、構造の調整につながるようにする必要があり、リスクの防止抑制(3)に当たっては、ペースと度合いをしっかりとコントロールして、収縮効果の相乗的拡大を防ぐ必要がある」と指摘している。国連貿易開発会議(UNCTAD)経済事務官の梁国勇氏は、中国経済に対して楽観視している。「中国経済はちょうど大きなモデルチェンジの過程にあり、将来への成長の原動力は引き続いて力強い。中国経済の発展が現在直面している困難に対して、中国政府には十分な対応策があり、中国経済は長期的に安定して発展を維持できる」と語った。

減税など2兆元で企業の成長支援

「年間で企業の税負担と社会保険料負担を2兆元弱軽減する」。今回の政府活動報告では、この一言に代表委員たちの満場の拍手が鳴り止まなかった。「これは新たな、より大規模の減税だ」。全国政協委員で中国社会科学院副院長の高培勇氏はこう話す。「2兆元に及ぶ減税料金(行政手続き費用)引き下げ(4)のリストは、積極的な財政政策が効率化に力を入れた具体的な結果であり、また今年の普遍的な恩恵である減税と構造的な減税が、平行して力を注ぐ目標でもある」

2兆元の減税料金引き下げの「フルコース」の詳細を見ると、その重点は製造業と小企業零細企業の税負担の軽減にある。増値税改革を深化させ、製造業などの業種の税率を現行の16%から13%に、交通運輸業や建築業などの業種の税率を現行の10%から9%に引き下げ、主要業種の税負担がはっきりと減るようにする。現行6%となっている業種の税率は据え置くが、生産者向けサービス業と消費者向けサービス業の税控除額の引き上げなど関連措置を講じることによって、あらゆる業種の税負担を確実に軽減するといったものだ。

多くの全人代代表と全国政協委員は、これは実体経済の負担をさらに減少させるために、現在の中国の経済運営のペインポイントと難点を突き、公平と効率をはっきりと示したと指摘する。「工業系企業の利潤減少の圧力に直面し、製造業企業の増値税率を下方修正することで、企業の活力アップを助け、中国の製造業を大きく強くするための助けとなる」と、全人代代表でトランスファーグループの徐冠巨会長は話した。

小企業零細企業は中国経済発展の新鋭軍であり、雇用の主なルートであり、イノベーションの重要な源泉である。政府活動報告では、小規模納税者の増値税の課税最低限が、月間売上高3万元から10万元に引き上げられる。中小企業向けブロードバンドの平均使用料を15%下げ、中小銀行を対象とした預金準備率の引き下げにさらに力を入れ、国有大型商業銀行の小企業零細企業向け融資を30%以上増やす――とある。これについて北京国家会計学院の李旭紅教授は、「中国の小企業零細企業は数が多く、こうした『合わせ技』の措置は小企業零細企業の負担を一層軽減し、より広い範囲でマーケットの活力を活性化する」と述べた。

全人代代表で歩歩高グループの王填会長は思い出したように、「会場でこのニュースを聞いた時、春の大きなプレゼントのように感じた。こうした減税料金引き下げ措置が本当に実行され、企業の発展生産にちゃんと効果が出ることを期待している」と述べた。

 こうした思いに対して、李克強総理は報告でこう強調した。「今年は、企業、特に小企業零細企業の社会保険料負担が実質的に減るようにしなければならない」「われわれは、市場主体、特に小企業零細企業に税負担料金負担が軽くなったとはっきりと感じてもらえるようにし、企業と社会に対する約束を絶対に果たさなければならない」。これらの力強い言葉は、中国政府が力を入れて実行するという決心の表れだ。全人代代表と政協委員はこう考える。2兆元弱の減税料金引き下げのリストと総理の約束が企業やマーケットに伝えたのは、新たな自信であり、質の高い発展を推し進めるという新たな希望である。中国の経済発展は、さらに広々とした空間を切り開くだろう。

イノベーションが発展をリード

今回の政府活動報告の全体に目を通すと、イノベーション駆動(5)型の発展戦略を踏み込んで実施した、イノベーション能力と効率をさらに高めた、イノベーション環境を大いに改善した、技術革新の主体としての企業の地位を強めた、各種のイノベーション主体の積極性を引き出した――など、「イノベーション」という言葉が43回も出ている。「イノベーション」はすでに中国の経済発展のキーワードとなっている。

イノベーションを基礎に、政府活動報告は以下のように打ち出している。「新興産業の急速な発展を促す。ビッグデータ人工知能(AI)などの研究開発と応用を強化し、次世代情報技術ハイエンド設備バイオ医薬品新エネルギー車 新素材などの新興産業クラスターを育成し、デジタル経済を発展させる」。これは、中国企業が起業モデルチェンジするために新たな天地を切り開いただけでなく、国際的な企業が中国市場へ参入する新たな道筋も指し示している。イスラエルイノベーション局のアハロン局長は、「積極的に科学技術のイノベーションを推し進めることは、中国が経済成長を推進し、国家運営のトップダウン設計を完成するために欠かせない重要なものだ。中国は今まさに科学技術大国を目指して一歩ずつ成長している。中国は科学技術発展に貢献し、世界はその利益を享受している」と話した。

ここ数年来、「インターネット+(プラス)」は、中国経済の新旧原動力転換のエンジンと見なされ、さまざまな分野で幅広く応用されている。中国のインターネット産業の絶え間ない増大に伴い、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、AI技術はハイスピードで発展している。今回の政府活動報告では、初めて「スマート+」という新たな概念が出てきた。「インターネット+」から「スマート+」へ、全てのインターネット(IoE)というシーンが徐々に展開し、中国人の生産と生活様式もまた新たなアップグレードを迎えようとしている。日本の科学技術振興機構上席フェローの沖村憲樹氏は、「中国の科学技術の進歩は、各産業の全面的なイノベーションを先導している。中国の情報技術の発展は生活様式の変革をもたらし、産業技術の変革は全世界で影響を生んでいる」と指摘した。

全国政協委員で、360社の創業者でありCEOである周鴻禕氏は、「今年は、中国の伝統的な産業がデジタル技術を利用してのアップグレードモデルチェンジ元年だ。将来、デジタル経済は再び提起されるだろう。それはインターネット企業に対してだけではなく、中国の伝統的な業界の企業、特にハイエンド製造業と現代的なサービス業だ」と見ている。

現在、中国のいくつかの企業は、すでにHCI(ヒューマンコンピューターインタラクション=人とコンピューターの関連研究)、AIなどの分野で世界最先端の科学成果を上げている。フランスの経済学者のアリエッタ氏は以下のように指摘する。伝統的な製造業大国の中国は、「世界の工場」という位置付けから一歩ずつモデルチェンジし、ハイエンド技術の分野――ビッグデータやAI、新エネルギーなど「未来の世界」の発展に絶えず向かっており、また国際市場において優位な競争力を備えるようになった。

さらに開放拡大、世界に貢献

「市場参入の条件をいっそう緩和し(6)、外資の参入ネガティブリストの項目を減らし、より多くの分野で外資の独資経営を認める。金融などの産業の改革開放措置をしっかりと実施し、債券市場の開放政策を充実させる。国際的に普及している経済貿易ルールとのすり合わせを急ぎ、政策の透明性と執行の一致性を高め、国内企業と外資企業を分け隔てなく平等に遇し、公平に競争する公正な市場環境を整える。外国企業投資家の合法的な権利利益の保護を強化する。自由貿易試験区に、より大きな改革イノベーション自主権を与え、上海自由貿易試験区に新エリアを増設し、海南自由貿易試験区の建設を推し進め、中国の特色ある自由貿易港の建設を模索する」――政府活動報告で示された全方位で対外開放の拡大を推し進めるこうした一連の新しい措置は、中国に投資に来る外国企業や投資家にとって紛れもない朗報だ。これは、世界に中国市場を一層開放するという中国政府の約束の実現でもある。李克強総理が報告で述べたように、中国の投資環境は必ずますます良くなり、各国企業が中国で発展するチャンスは必ずますます増えるであろう。

全国政協委員で南京大学経済学部主任(学部長)の楊徳才氏は以下のように指摘する。「中国は今、ますます開放的で自信にあふれた態度で門戸を開け広げ、他の国々がわれわれの改革開放や発展の成果を共有することを歓迎している」。また、外国企業投資家の中国における投資環境について、全国政協委員で南開大学金融学院の常務副院長(筆頭副学部長)の范小雲氏は次のように紹介する。「現在の中国は、整ったインフラや工業システム、安定した為替相場と成熟しつつある金融市場を有するだけではなく、広大な市場と膨大な数の消費者を抱えている。これらの要素が国際的な投資家に巨大な発展の空間を提供している」。全人代代表で安徽省宣城市市長の張冬雲氏も、「かつて、われわれは主に生産に必要なものの供給や、減税による利益還元などによって外国の投資家を引き付けていた。今後はさらにビジネス環境の改善や、外資系企業の合法的な権利利益の保護などの措置を講じ、外資企業により完璧な『招待状』を送る」と語った。

報告では、政策に対応して今年の中国政府が力を入れる重要な以下の国際経済貿易協力プロジェクトが挙げられている。東アジア地域包括的経済連携(RCEP) 交渉や中日韓FTA交渉、中国欧州連合(EU)投資協定交渉を推し進め、中米経済貿易協議を引き続き進展させる。また「一帯一路」共同建設を促し、インフラの相互連結を促進し、生産能力の国際協力を強化し、第三国市場での協力を開拓する。第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの開催を成功させる。第2回中国国際輸入博覧会の開催を成功させる――これらのプロジェクトは、いずれも莫大な利益を秘めている。中でも、昨年11月に上海で成功裏に開催された第1回中国国際輸入博覧会で合意した取引高は、578億3000万に達した。「一帯一路」建設を推進した5年間で、中国は沿線105の国と29の国際組織との間に149の政府間協力協定を締結し、輸出入の総額は33兆2000億元以上となった。

これに対して、日本の国際貿易投資研究所チーフエコノミストの江原規由氏は、次のように強調する。「今年の政府活動報告では、『中国は、各国と手を携えて協力し、同舟相救い、世界の恒久の平和と共同の発展の促進につながる新たな貢献をしていく所存である』と述べられた。現在、中国以外に、これほど壮大な計画を自信満々で打ち出し、世界的な共鳴を引き起こす国はないと考える。世界は中国の新たな貢献を期待している」

豊かな暮らしへ大きな「贈り物」

今年は財政収支の均衡を保つのがさらに難しくなるが、国民の基本的な暮らしのための投入は確実に増やす。都市部の新規雇用者数は1100万人以上とし、消費者物価指数の上昇率は3%前後とする。農村貧困人口を1000万人以上減少させる。養老サービス業、とくにコミュニティーの養老サービス業の発展に力を入れ、高齢者の生活を幸せなものにする。多様な形態の乳幼児保育サービスをどんどん発展させ、児童の安全確保に力を入れる。農村の6000万人分の給水保障水準を高めなければならない。農村の送配電網の新たなグレードアップ改良事業を完了させる。「トイレ革命」やゴミ汚水対策を推し進め、美しい農村をつくる。義務教育に携わる教員の給与待遇の確保に引き続き万全を期す。一流大学一流学科づくりを推し進める。政府財政の教育支出を1兆元以上とし、人々に満足してもらえる教育を提供するように努める。引き続き都市農村住民の基本医療保険および重大疾患保険の保障水準を高める――李克強総理の高らかな宣言とともに、政府が今年実行する数十項目にわたる生活改善の任務の内容が民衆の耳に届き、人々は温かな気持ちになった。

政府活動報告の起草チームの責任者である黄守宏国務院研究室長の紹介によると、今年の政府活動報告の議論修正に直接参加した人は1万人近くになる。内訳は、地方や部門の責任者が4000人余り、「両会」に参加する全人代代表が約2900人と全国政協委員が約2100人。また、その他の関係者も含まれている。さらに起草チームは、社会各界とインターネット利用者の意見や助言も幅広く聴取した。こうして政府活動報告では、国家の発展と人々の生活における最も切実で際立った問題を取り上げ、それをもとに今年の政府活動の重点と目標を作成した。従って、この報告は民衆の要望を反映し、難題を解決しようとする民意にかなったものである。

「両会」の期間中に、以上のような人々の暮らしを改善させる措置が代表委員たちの間で話題になった。全国政協委員で山東省レスリング柔道協会副主席の樊慶斌氏は以下のように語る。「報告には人々の暮らしを改善するための目標と、その実現方法がはっきりと書いてあり、そこから国民は安心感を感じている。それに加え、注目点も多数ある。例えば、高校教育の普及は今回の政府活動報告の中で初めて言及された。これは、共産党政府の民衆に対する配慮の表れだ」。また、全人代代表で河南省開封市通許県の農村医師である馬文芳氏は次のように述べる。「農村では、高血圧や糖尿病のような慢性病がよく見られる。常に薬を飲む必要があるので、患者の農民たちには重い負担となっている。今回の報告で打ち出された、高血圧や糖尿病などの外来診療での医薬品を医療保険の適用枠に入れることは、農民たちにとってはビッグニュースに違いない」

元NHKのアナウンサーでジャーナリストの木村知義氏は、こう指摘する。「現在、中国では60歳以上の人口は2億5000万人に達している。今回の報告には、『高齢者の生活を幸せなものにすれば、後に続く世代の人々が未来に期待を持てる』と書いてある。もし中国が、ひと足先に少子高齢化社会に入った日本と連携し、共に対策を練り、共に難関を乗り越えていけば、日中両国は必ず新たな協力の領域を切り開くことができる」

中国共産党第18回全国代表大会(18大、2012年)で立てた目標では、中国は来年に小康社会を全面的に築き上げる。今年の政府活動報告からは、党と政府が全国の人々を率い、この目標に向かってラストスパートに奮闘する姿が見て取れた。さらに報告での李克強総理の決然とした口調からも、所期の予定通りに目標を達成する中国の自信と決意を強く感じ取れた。(沈暁寧=文)

人民中国インターネット版 201985

 

関連文章