【貧困脱却 決着に加速】 豊かさ呼び込む美しい景色

2019-08-08 10:15:16

 

独龍江のほとりにある普卡旺村(写真・高岸明) 

中国南西部、ミャンマーとの国境沿いの谷間にある独龍江郷の普卡旺村では、1年半休業していた民宿が一新され、今年9月から営業を再開し、観光客を受け入れる計画だ。

独龍江郷の環境保護に尽力

美しい独龍江沿いにある普卡旺村は、緑あふれる林に抱かれている。しかし、怒江州の貢山県政府が2017年9月から、大規模な道路とインフラの整備を始めたため、同村も観光客への一般公開を一時停止した。

同村の村民普学清さんが以前住んでいた家は、茅ぶき屋根で、20平方足らずしかない狭い木造家屋だった。15年、政府は彼女を含む13世帯の住民のために新たな住宅を建てた。

新築の住宅はどれも120平方の広さがあり、そのうち40平方は観光客を受け入れる民宿として使用できる。民宿の運営を担うのは貢山県旅遊管理会社だ。この民宿プロジェクトで村民は1世帯当たり年間5000元以上の収入を得られる。  「政府が無償で家を建ててくれ、中には観光客用の部屋もあります。おかげで生活が豊かになりました」と普さん。「以前は主にトウモロコシやジャガイモの栽培、羊や牛の放牧で生計を立てていました。出稼ぎに行かなければ食べ物に困るときもありました。今は、民宿を経営することで家計の支出の大半をまかなえます」

毎年、春節(旧正月)と国慶節の連休は独龍江のベストシーズン。各地からの観光客が川沿いの民宿に泊まり、独龍江の美しい景色を堪能する。同郷の孔玉才郷長の話によると、改装した住宅では、食事や宿泊を提供するだけでなく、「溜索」(綱で川を渡る地元特有の方法)の体験サービスなど、観光客のさまざまなニーズを満たすことができる。今後、同郷はトーロン族の日常生活と生産活動を再現した「トーロン族の村落」をつくり、観光客に同族特有の文化風習を楽しんでもらう計画だという。

自然を敬って生きてきたトーロン族の人々は、観光振興を図ると同時に、環境保護と持続可能な発展を重視している。貢山県の高徳栄元県長は次のように語る。「毎年、雨季になると、村の人々は独龍江の上流から流されてきた大量の木材をすくい上げ、まきとして利用します。これで木の伐採を減らすことができます。素晴らしい自然環境に恵まれた独龍江をしっかりと保護しなければなりません。独龍江はトーロン族とヌー族だけでなく、全国の人民のものなのです」

中国初、貧困脱却した少数民族

独龍江郷はトーロン族唯一の集落で、約2000平方の土地に4000人余りのトーロン族の人々が住んでいる。

同郷は雲南省、また中国全土において最も貧しい地域の一つだったが、各地方レベルの政府と住民の努力によって、昨年ようやく貧困脱却を実現した。これにより、トーロン族は中国で初めて全体的に貧困脱却した少数民族となった。

数百年来、この地域は、交通が不便で外界との交流が難しかった。毎年10月から翌年4月にかけて、村を出るための唯一の道路は大雪のため封鎖される。雪山が高い壁のように立ちふさがり、独龍江郷は包囲された町のように孤立し、内外の人々は互いに行き来ができなくなる。そんな地域の住民たちに14年末、ついに希望の兆しがもたらされた。全長668の高黎貢山独龍江トンネルが開通したのだ。こうして、独龍江郷は大雪に封鎖される歴史にピリオドを打った。トンネル開通前、同郷を出入りするには、標高4000以上のタンタリカ山と高黎貢山を2、3日かけて越えなければならず、その道中は大変危険なものだった。

同トンネルは、トーロン族の人々に「豊かになる」希望をもたらした。同郷では貧困脱却のために、政府が多額の資金を投じてインフラ整備を進めただけでなく、村民に職業訓練の機会を提供し、彼らが技術を身に付けて自力で生計を立てられる(4)ようになるよう支援している。

同郷の孔当村の村民孔明光さんは17年から、森林保護員を務め、毎年政府から1万元ほどの給与を得ている。地元政府は「エコ貧困扶助プロジェクト」を打ち出し、労働力のある貧困層の人々を森林保護員として雇用し、環境保護の利益を一般の人々にもたらすと同時に、貧困地域の環境保護修復を後押ししている。

そのほか、孔さんは地元政府が無償で提供する植物栽培と養蜂の技術訓練を受けた。「以前は、ちゃんとした教育を受けていなかったため、農作業の忙しいときにはトウモロコシを植え、残った時間には生薬を採取したり、酒を飲んでぶらぶらしたりしていました。毎年2頭ずつ飼っていた豚も春節のときに家族が食べるだけで、収入にはならず、本当に貧しい生活を送っていました。森林保護員になってからは、毎月決まった収入があるだけでなく、自宅でソウカやジュウロウを栽培したり、蜂を育てたりして、だんだん生活が豊かになってきました」

独龍江郷小中学校の尹建龍副校長は、人々が幸せな生活を送るには教育が鍵になると考えている。同郷では14歳以下の子どもに義務教育を提供し、その就学率は100%に達している。また、他地域の人々と交流できるよう、子どもたちには幼稚園から標準語を教えている。「今の若者は皆、標準語を話すことができます。彼らは村を離れて、外の世界を見に行くことを望んでいます」と尹副校長は若者の未来に期待を込めた。(何珊=文)

 

人民中国インターネット版 201987

 

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