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内外の神々が同居する街

高原=文 馮進=写真

泉州に着いた時、目の前のすべてのものが美しい色彩で織りなされているように感じた。寺、祖廟、媽祖廟や各種の宗教の施設は、例外なく多彩で鮮明なコントラストの色使いをしており、屋根には目がくらむような装飾も施されている。高く反り返った屋根は互いに重なるようで、さまざまな商店が軒を連ねている。通りを人々が行き交い、そのにぎやかさは大都市にも引けをとらない。そんな様子からは、かつて東方第一の港とうたわれた繁栄ぶりが垣間見えるようだ。

福建省南部の建築スタイルと特色を残す泉州市街の新たな姿

遥かに続く商店街

泉州は福建省の東南部に位置し、古代の海のシルクロードの起点だった。宋代(960〜1279年)、元代(1206〜1368年)には東方第一の港と呼ばれるなど、海外との交流や貿易が盛んな港湾都市として長い歴史を持っている。現在は福州とアモイ(廈門)という二大都市の間に挟まれ、いささかイメージが薄いかもしれないが、泉州の発展の勢いは明らかだ。実は、泉州のGDPは13年連続で福建省第一位を維持しており、同省の経済的中心となっているのだ。

高さ48.24㍍の開元寺の鎮国塔

泉州の旧市街を歩くと、濃厚な商業都市のおもむきを感じずにはいられない。どの通りにも両側に商店がずらりと並ぶと言っても決して大げさではない。そこで人々は服、靴、帽子、軽食、金物、文具など多彩な商品を商っている。大型ショッピングセンターやデパートはほとんどなく、小さな店ばかりが一軒また一軒とどこまでも続いている。角を曲がって別の道に入ると、そこもやはり小さな店が並んでおり、さらに曲がってもまた商店が続いている。これは大阪の道頓堀にもよく似た風景だが、道頓堀は大阪市内のわずかな部分を占めるに過ぎないが、泉州の商店街は旧市街のいたるところに見られる。ここでは住民の三分の二が店を経営しているのではと感じるほどだ。

塗門街にある関帝廟。反り返った屋根にある龍や花、鳥、獣などさまざまな造型の彫塑に福建省南部の建築芸術のスタイルと特色がうかがえる

不思議なことに、商店街がいかににぎわい、けん騒に包まれているとしても、店の間のわき道に入ったとたん、そこは静寂に包まれている。路地に一軒の骨董を売る露店があった。店主が忙しく並べているのは、古い家から持ってきた木彫りの装飾や工芸品で、残った木材は直接廃品回収業者に売ったそうだ。道の両側の壁は幅の広い石板と赤レンガでできており、これは典型的な福建省南部の建築スタイルだが、残念なことに現在の泉州ではこうした伝統家屋はもうめったに目にしない。現地の人に案内され、私たちは一軒の古い民家を見学させてもらったが、広々としたその家には、70歳を過ぎた老夫婦が住んでいるだけだった。二人は、私たちが訪れても少しも気にかけず、自由に見させてくれた。見学を終えると、老夫婦は戸口に立ってずっと見送ってくれた。30年ほど前、泉州旧市街のいたるところにあったこのような古い家屋は、今はわずかに残るだけで、あの入り口にたたずんでいた老夫婦のように、思い出が遠く去っていくのを名残惜しんでいる。

 

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