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古都が開放的な不夜城に

 

高原=文 馮進=写真

西安は中国でも名高い歴史ある文化都市だ。紀元前1046年に周の武王による鎬京(今の西安)遷都が行われて以来、13の王朝がここに都を置き、政治、経済、文化の中心として栄えた時代は1200年以上にも及ぶ。そのうちの西周、秦、漢、隋、唐は中国の歴史上でも特に繁栄を誇った時代だ。それだけに、西安は語りつくせないほどの輝かしい歴史を持つだけでなく、そこかしこに故事・伝説が息づいており、至る所に文化財が残されているかのようだ。この古都のことを持ち出すと、すぐに兵馬俑、始皇帝陵、華清池、未央宮などが思い浮かぶが、逆に現在の姿はぼんやりし、特に語るべきこともないかのようだ。

しかし、たとえ千年の古都であっても、自らの誇らしい歴史を負担ではなく財産として前進していかなければならない。現在の西安は、まさにそうした都市だ。

■大雁塔と噴水ショー

これまであまりに多くの人が西安の歴史や古跡について書いてきた。私たちはそれとは違う、西安の新鮮な一面を発掘したいと考えていたが、曲江はそれにぴったりの場所だった。

大雁塔と引き立て合う噴水ショーは、ヨハン・シュトラウスの『春の声』の軽快なワルツのリズムに乗って吹き上げた水を躍らせ、きらびやかな絵画を描き出して千年の古塔に新たな色彩を加えている 大雁塔と噴水を背景に記念撮影をする観光客

曲江新区は西安市東南部に位置し、市の中心部・鐘楼から車で20分ほどで到着する。ここは唐代に皇帝の庭園があった場所で、大雁塔、曲江池、唐城壁遺跡などがこのエリアに残されている。2003年、西安市はここに曲江新区を設置し、主に文化、観光産業を発展させてきた。現在では国指定の文化産業モデル区となっており、拡大・建設が進んでいる。

観光地としての曲江は大雁塔をランドマークとし、その北にはアジア最大とも言われるミュージック・ファウンテン(音楽噴水)広場を擁している。南北346メートル、東西218メートルの広場にある噴水池は、面積2万平方メートル、8段の池が次第に高くなり、最終的に大雁塔の足下に至る。各噴水池ごとに7段階に水を噴き上げるようになっており、これは7層の大雁塔と呼応している。また、音楽に合わせて多彩に噴水の形が変化し、きらびやかなライトアップ効果と相まって華麗なショーが繰り広げられる。幻想的な光と影の饗宴が、高くそびえる素朴な風格の大雁塔の前で展開される様子は、まさに夜の西安の絶景と言えるだろう。

私たちが西安を訪れた時はまだかなり寒く、夜には気温が氷点下5度前後まで下がった。しかし、噴水ショーはそのために中止になることもなく、平日は1日2度、休日には5度行われていた。最も人気なのは毎晩6時に行われるショーだ。人々は分厚いダウンを着込んで、あちらこちらから噴水広場の周囲に集まってきた。ショーがクライマックスを迎えるにつれて歓声が上がり、数人ごとに噴水の前で記念撮影をしたり、連れ立ってそぞろ歩きをする姿が見られた。こうした光景はなぜか私をほっとさせ、大雁塔広場のこの噴水が孤独な設置物にならず、多くの人に楽しみをもたらしていることをうれしく感じさせた。

■地元重視で街並み再現

大雁塔の西には、2012年12月22日にオープンしたばかりの秦漢唐商業街があり、ファッション、娯楽、ショッピング、飲食などが集中し、1カ所ですべてが楽しめるショッピング・センターとなっている。その西は大唐通易坊だ。「通易」とは往来交際、交換・交易の意味、「坊」は唐代の都市区画である条坊制の坊からつけられており、歴史的街並みを再現した通りに各地のグルメを提供する店やバーが集まっている。一方、大雁塔の南は大唐不夜城文化娯楽エリアで、大唐芙蓉園、曲江池遺跡公園、唐城壁遺跡公園などのレジャー公園が取り巻いている。これらが組み合わさって巨大な大唐文化商業エリアを形成しているのだ。観光客は歩くほかに、新しく設置された観光ケーブルカーで街並みを眺めることもできる。

開元広場は、「開元盛世」をテーマにしており、像のほかに8基の蟠龍をモチーフにしたLEDライト照明柱が組み合わされている。中央の最も高い台座には高さ4.59メートルの玄宗李隆基像が立つ 大唐不夜城の通りに面して西には、建築面積1万7000平方メートル、荘厳な雰囲気を持つ西安美術館がある

中国の多くの都市で、私たちはさまざまな歴史的街並みを再現、復元したショッピングストリートを目にしてきたが、その多くには失望させられた。粗末で安易な再現建築は本来の風格が損なわれ、通りにはまず例外なく全国各地の軽食グルメが集められ、まったく特色のない廉価な観光土産が売られている。まったく、自分がどこにいるのか分からなくなるほどだ。目先の利益にこだわり成功を急ぐため、そこには嫌悪感をもよおすような「観光気分」があふれている。そうした街並みは観光客のために建設されたもので、本来の生活とはまったく無縁のものだ。営業終了のベルが鳴り観光客が去ってしまうと、がらんともぬけの殻になってしまう様子がイメージされる。

それに比べ、曲江新区のショッピングストリート、公園は再現した街並みではあるものの、精巧で古典的な感じを与える。しかも、エリア全体が地元の人々の買い物や娯楽に対するニーズを満足させ、そのついでに観光業を発展させているのだ。例えば、秦漢唐商業街は、再現された歴史的街並みの外観を削いでみれば、内部はまったく現代的なショッピング・センターの構造を持っており、地元の人々の日常生活ニーズから出発して建設されたものだ。

また、大唐不夜城は設計が非常にユニークだ。このエリアは、通りの中央にある公園を中軸として、そこに唐代の画家、詩人、書家、科学者などの像が並び、歴史的に有名な「貞観の治」(太宗李世民の治世)、「武后当政」(武則天による執政)、「開元盛世」(玄宗李隆基前半期の治世による繁栄)といった歴史の軌跡を振り返っている。道路の両側にはそれぞれ曲江芸術博物館、西安美術館、西安太平洋シネマコンプレックス、西安音楽庁、源浩華蔵博物館などがあり、西安大劇院も建設中で、西安における重要な文化・娯楽施設がここに集まっている。

大唐不夜城の中軸線となっているのは南北1500メートルの歩行者天国で、その中央には数々の像が見られる。通りの両側には唐代の建築を模した建物が多彩にきらびやかに立ち並び、さらに壮観さを加えている

大唐不夜城の中軸線に沿って北から南に向かって歩くと、まるで盛唐の西安を行くようで、無数の偉人がキラ星のごとく並ぶ。それはまばゆいばかりで、ただただ仰ぎ見るだけだ。また、両側には豪華で風格ある再現建築が並ぶが、随所に往時の繁栄のノスタルジアと誇りが満ちており、どれも決して忘れ去られることのないものだ。ところが現在では、人々はこうした中軸線上を歩き、洋画の展覧会に出かけたり、ハリウッド映画を見たり、オーケストラを鑑賞したりする。私は、この都市が過去に対する誇りと追想を大切にしながら、より開放的に未来に向かって進んでいくことを願っている。

 

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