現在位置: 観光
広西チワン族自治区・桂林市 「両江四湖」千年の絶景をとどめる

劉世昭=文・写真

南宋の詩人劉克荘が「千山環野立、一水抱城流」(数々の峰が巨人のように大地を取り囲んでそびえ立ち、漓江は舞姫のようにこの都市をたおやかに包み込む)と詠嘆した桂林は、その山水で世に名高く、「桂林山水甲天下」(桂林の山水は天下に冠す)の名句は800年余りにわたって伝え継がれている。

夜の日月双塔

桂林市は広西チワン族自治区にある美しい観光都市。「両江四湖」とは、桂林市を取り巻く漓江、桃花江と木龍湖(鉄仏塘を含む)、桂湖、榕湖、杉湖の、全長7.33㌔、面積38万5900平方㍍のひとつに結ばれた水系のことを指し、北宋年間(960~1127年)に工事が始まった。当時、榕湖、杉湖、桂湖にはたくさんの舟が行き来し、旅人で埋め尽くされるほどのにぎわいを見せたという。

榕湖、黄庭堅が舟をつないだ場所 漓江のほとりにある宋代の城門

ところが、長い年月の間に「両江四湖」の一部の湖は埋め立てられ、昔日の面影を失ってしまった。最近になって、人々は「両江四湖」の浚渫・改造を行い、かつての桂林の「水の都」のにぎわいを取り戻し、宋代の優雅な水上観光スタイルをよみがえらせた。

美景の中の都市 都市の中の美景

榕湖と杉湖は、同じ水系でつながる湖で、岸辺に生えている樹木がそれぞれガジュマルとスギであることからこの名がついた。唐・宋代には桂林城の南護城河(堀)が開削され、歴史的にも著名な人物、高雅な人物が数多く湖のそばに庵(いおり)を結んで住み、文人墨客が湖畔を訪れ詩を吟じ賦を作った。湖畔をそぞろ歩けば、今も地方劇「桂劇」創始者である唐景崧の五美堂別荘遺跡、著名な詞人で清末四大家に数えられる王鵬運の代々の住居遺跡、国民革命軍の軍人で総統代理も努めた李宗仁の官邸、同じく国民革命軍軍人の白崇禧の旧居などが見られる。

古南門脇にあるガジュマルの大木 クリスタルガラスの橋

榕湖の北岸にある古南門は、訪れた観光客が立ち去り難く感じるほど素晴らしいが、これは唐の太宗李世民に仕えた軍人李靖が武徳4年(621年)に建てたもので、1400年近い歴史を持つ。その傍らに立つ榕蔭亭の脇は、北宋の大詩人黄庭堅が舟をもやった場所だ。北宋の祟寧2年(1103年)、大詩人で大書家の黄庭堅は宜州に貶謫(官位を下げて遠方の地に転任させられること)され、翌年桂林を通過した際に、数々の名山を見て回り、ここに舟を着けた。彼の漢詩『桂州に到る』には「桂嶺環城如雁蕩、平地蒼玉忽嶒峨。李成不在郭熙死、奈此百嶂千峰何」(大意 桂林の山が雁蕩山のように城郭を取り囲んでいる。平たんな大地に切り立つようにそびえ立つ。李成、郭熙のような山水画の大家がすでに亡くなり、このような美しい山河があっても何ともならない)と、自らの不遇と桂林の山水に対する深い思いが詠み込まれている。あずまやの傍らにあるガジュマルの古木は、まさに当時黄庭堅が舟をつないだその木であるという。

夜の蓉湖 榕湖のほとりで早朝から鍛錬に励む桂林市民

杉湖の「日月双塔」と榕湖のガラス橋は現代建築の精華だ。双塔のうちの日塔は銅でできており、九重で高さ41㍍、月塔は瑠璃の塔で七重35㍍。日塔は世界で最も高い銅塔、世界で最も高い銅製建築物、世界で最も高い水中の塔だ。一方、長さ22.4㍍のガラス橋は中国初の特殊クリスタルガラスを使った実用に耐える橋梁で、橋全体がクリスタルで、極めて見ごたえがあるものだ。

都市の中の水 水の中の都市

桂林は中国でも最も幸福感を持つ都市のひとつだ。

桂湖はもともとは宋代の城西の堀だった。湖のほとりには、小雨が降っても座っている多くの釣り人がいる。「釣れますか?」と声をかけると、釣り道具を整理している趙さんは「釣れるよ。15㌔オーバーを上げたことだってあるんだ」と答えた。彼によると、ここには50㌔を超える大物もいるという。夜、船に乗って湖に出たのだが、ちょうど竹いかだの漁民がカワウを使って漁をしており、少し眺めている間に、1羽のカワウが水中から40㌢もある大きな魚をくわえて来るのが見られた。

桂林市中心部の靖江王府構内に位置する独秀峰 桂湖付近には世界各地の庭園の景観が広がる

川が多ければ橋も多い。桂林には数え切れないほどの橋があるが、同じような形の橋は見たことがない。中国でも有名なアーチ橋・趙州橋をかたどる榕渓橋、パリの凱旋門の建築様式と中国古代のつり橋を見事に結合させた迎賓橋、中国初の自碇式の柔構造スチールトラスつり橋の麗澤橋、古代城壁型の宝積橋、イタリア・ルネサンス様式の観漪橋、カントリー風の西清橋……。

川の上に造型多彩な橋梁がかかるだけでなく、両岸にはさらに多くのアジア各国のスタイルの景観、建築、彫像が見られる。中国式、日本式、タイ式、韓国式……と、豊富で多彩だ。

都市の中の山 山の中の都市

市の中心部には、明の洪武5年(1372年)に建設が開始された靖江王府があり、その中の「南天一柱」と呼ばれる独峰の独秀峰に登れば、桂林市全体を視界に収めることができる。七星岩、伏波山、畳彩山、宝積山、老人山、西山、牯牛山、象山、穿山……と、東から西に、南から北に、都市を取り囲んで周囲から守っているかのようだ。これらのカルスト地形によって形成された美しい峰々が山のすそ野を流れる「両江四湖」と「手を携え」て、桂林という都市を切り分け、また都市と美しく組み合わされ、千年の賞賛を集める「桂林山水」を形作っている。

夜になり、桂湖に浮かべた竹いかだにかがり火をたきカワウ漁を行う漁民

プロムナード沿いのグルメ屋台街は若者たちに人気のスポット

観光客は山に登り、鍾乳洞に入り、水に遊ぶ。住民たちは散歩し、釣り糸を垂れ、早朝の鍛錬に励む……。人々はみなここで生活を楽しみ、山水を享受する。なるほど、陳毅元帥が桂林を訪れた際にこんな詩を残したはずだ。「願作桂林人、不願作神仙」(願わくば神仙ではなく桂林人になりたい)。

 

【旅のメモ】 旅行最適期 4~10月

◉アクセス

空路▶北京、上海、広州、香港とクアラルンプールなど内外39都市と毎日便がある。国内線53、国際(地域)線が6本あり、150余りの便で結ばれている。

陸路▶鉄道は毎日48本の列車が北京、上海、広州、南寧、成都、青島、深圳などの都市との間で運行されている。ほかに、長距離バスが自治区内や広東省の大都市と結んでいる。

桂林漓江風景区は、1996年2月にユネスコの世界遺産登録の前段階となる暫定リストに掲載。先ごろ、貴州施秉、重慶金仏山とともに中国南方カルスト第2期としての申請が受理された。

 

 

 

人民中国インターネット版

 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850