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静岡県が中国人に愛される理由

 

呉亦為=文 賈秋雅、単濤=写真

茶畑から望む富士山 (写真提供・静岡県)

中国人が日本と言われて思い浮かべるものを並べると、確実に富士山、桜、温泉、新幹線が上位に入ってくる。桜の花びらが舞う温泉につかり、はるかな富士山を眺める。あるいは、高速で走る新幹線から富士山の雄姿を眺めるのが、中国人旅行客あこがれの風景かもしれない。

この数年来、富士山や静岡県にまつわるヒット・ソングやテレビドラマによって、中国で静岡県の知名度が飛躍的に高まっている。2013年6月には、富士山が世界遺産に正式登録される見込みとのニュースが中国のメディアでも伝えられた。上記の極めて大きな日本的な特色によって、静岡県はますます多くの中国人観光客を迎え入れるようになっている。では、静岡県が中国人にこれほど愛される理由はどこにあるのだろう。
富士山の五合目は「再生の旅」の起点だ

富士山と失恋ソング

毎年、7、8月は富士登山のハイシーズンとなる。富士山は静岡、山梨の両県にまたがるが登山口のうち3カ所は静岡県側にある。

富士山登山は日本人にとって一種神聖な体験で、そこには“死者蘇生”の言い伝えがあるほどだ。しかし、遠来の中国人観光客にとっては、また別の意味も含まれているようだ。

数年前、中国では『富士山下』(富士山の下で)というラブソングが流行し、もともと中国人の心の中にあった優雅な富士山のイメージにロマンチックな彩を添えることになった。

このヒットソングは、次のような愛情観を浸透させた。「誰かを好きになることは、まるで富士山を好きになること。目にすることはできるけど、動かすことはできない。もし富士山を動かしたいなら、自分が近づくしかない」というものだ。

『富士山下』は失恋ソングだが、おもしろいことに多くの若い中国人カップルが静岡県を訪れ、手を携えて富士登山を体験している。険しい山道を歩き、冷え込む長い夜を過ごし、10時間近くの苦しい登山を続けて、ようやく頂上で感動的なご来光をおがむことができる。この登山と下山の道は、愛情の苦楽を味わっているふたりにとって、きっと再生の旅、新たなスタートになるはずだ。

ドゥー・ラーラーの足跡

もともと有名な富士山に比べ、浅間神社、修善寺、土肥温泉などの観光地が中国で一躍知られるようになったのは、かなりの部分で数年前に中国で人気を集めたアイドルドラマ『杜拉拉昇職記』(ドゥー・ラーラーの昇進物語)によるところが大きい。

富士山のふもとにある浅間神社。富士登山では必ず通るルートになっている

このドラマは中国でベストセラーとなった同名小説をドラマ化したもので、目立ったところもないOLのドゥー・ラーラーが、さまざまな事件を経て企業の要職に上り詰め、オフィス・ラブでも真実の愛を勝ち取るという成功物語だ。ドラマては、ヒロインと彼氏の間の二度の大きな愛情の転換点は、どちらも静岡県への旅行中に起きている。

最初は、熱愛中のふたりが、静岡県島田市の茶園で愛を確かめ合い、塩郷の吊橋(静岡県川根本町)を手をつないで渡り、駿河湾の連絡船の上から富士山を眺め、浅間神社でふたりの幸せを祈る絵馬を奉納した。

二度目は、ふたりの恋愛が危機に陥り、ラーラーがひとりで土肥港の連絡線に乗り、楽しかった旅を振り返るというものだ。その後、彼氏は愛情を取り戻すため彼女を追ってやって来て、ふたりは修善寺で仲直りをする。

これらのロケ地は、現実の恋人たちがあこがれるロマンチックな旅行ルートとなっている。つまり、静岡県は自分でも知らない間に、中国の恋人たちにとって縁結びの神になっていたのだ。

静岡県中部の寸又峡にかかる塩郷の吊橋は、女の子が橋の中央で恋愛成就を願えばそれがかなうとされている

子どもの頃の思い出と静岡

ロマンチックな愛情物語以外に、静岡を訪れて子ども時代を懐かしむ中国人も少なくない。

静岡市清水区にあるちびまる子ちゃんランドはその代表だ。中国では1980年代生まれを「80後」と呼んでいるが、彼らの記憶には、この日本の「60後」の女の子「桜桃小丸子」のことが鮮明に残っている。彼女に会うため、毎年4000人もの中国人観光客が同ランドを訪れるという。こうした遠方から訪れる中国人ファンのため、ここでは中国人留学生がガイドとして雇っているほどだ。

清水区のS-PULSE DREAM PLAZA内にある「ちびまる子ちゃんランド」。入口には中国語の看板も設置されている

このほか、静岡県は中国の「高達迷」(ガンダム・マニア)の聖地でもある。静岡市葵区のバンダイ・ホビーセンターでは、観光客は原寸大のガンダムの雄姿を見ることができるだけでなく、「聖闘士星矢」(セイントセイヤ)、「奥特曼」(ウルトラマン)、「美少女戦士」(美少女戦士セーラームーン)など中国でも人気のアニメキャラ玩具に出会うことができる。

葵区長沼にある「バンダイホビーセンター」

また、「足球小将」(キャプテン翼)に夢中になり、路地でボールを蹴って育った中国の元サッカー小僧たちは、静岡県には特別な感情を持っている。この漫画のスーパーヒーロー大空翼が、静岡県南葛市(架空の市)の出身だからだ。静岡県にはまだこの漫画関連のテーマパークなどはないが、いつかサッカーにおける“中国の夢”がかなうことを夢見続ける中国サッカーファンにとって、どんな土地柄が日本のサッカーを漫画の世界から現実の世界レベルに成長させたのか、興味は尽きないのだ。

 

富士山が世界遺産に登録されれば、静岡県はますます中国や他の海外からの観光客に注目されるようになるだろう。美しい思い出の雰囲気を持ち、常に新しい喜びと発見を与えてくれる、中国人の心の中のロマンチックな静岡県は、富士山の下で輝き続けている。

  

人民中国インターネット版 2013年6月18日

 

 

 

 

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