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峡谷を越え雲南・チベット高原へ


 

横断山脈に差しかかるまで、車列は金沙江に沿って進んでゆく。石鼓鎮の「長江第一弯」と呼ばれる急カーブを過ぎて間もなく、虎跳峡の入り口に到着。遠くから眺めると、切り立った崖の下に、長江の水が激しい勢いで沸き返り、その上空を鷹が繰り返し円を描いて飛んでいる。

 

長さ20キロメートルに及ぶ虎跳峡は、上、中、下の三段に分けられる。危険な早瀬は18カ所もあり、落差は213メートルに及ぶ。一番幅の狭いところでわずか30メートル、峡谷は3900メートルと、世界でも稀に見る深さである。虎跳峡を過ぎ、国道214号線に沿って60キロメートルほど上ったところが小中甸である。

 

小中甸の「康司村」

 

空から撮影した小中甸・康司村

 小中甸鎮はシャングリラ県の南部に位置し、雲南省からチベット自治区に入るための交通の要地である。康司村はその要地に入って最初の村であり、茶馬古道においてテン茶をチベットへ運ぶ際、避けて通ることのできない道でもある。茶葉やさまざまな生活物資を背負い、いくつもの山を越えて内地からチベットへ向かうキャラバンは、ほとんどがここでひと休みして調整し、食べ物を調達してチベットに入る。

 

 小中甸は平均標高2830メートル、牧草地、森林、生物及び水などの資源が豊富だ。原始林の面積は53129ヘクタールに及び、自然の牧草地は4.67万ムー(1ムーは6.667アール)である。「康司」はチベット語で神聖な湖、神聖な山を意味し、山と水に恵まれたすばらしい土地である。ここにはチベット族、漢民族、ペー族(白族)、回族、ナシ族(納西族)など8の民族が住んでいる。そのうちチベット族の人口は8796人で、小中甸鎮の全人口の92.24%を占める。

 

 豊かな自然、特色あるチベット式の民居及び風土と人情は、現地の貴重な観光資源となっている。夏が来れば、自然の牧草地に色とりどりの花が一面に咲き乱れる。秋にはいたるところが紅葉に染まり、魅惑的だ。そのため、ここはシャングリラの前庭の花園という美名でも知られる。1986年、パンチェン・ラマ10世はチベット視察の際、仏事を行なう場所としてわざわざ康司村の南側より数百メートル離れた場所を選び、僧侶や信徒に福を賜り、災いを消すための「摸頂」という盛大な儀式を行なった。その後、現地の人々はここにパンチェン・ラマ10世の滞在記念塔を建造し、遠くに住む人々もこの地を聖地と見なして参拝に来るようになった。

 

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