峡谷を越え雲南・チベット高原へ
単騎、万里を走る 「イチョウじいさん」
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虎跳峡の入り口を通りかかっている車列 |
ふいに、小さな赤い点がレンズの中に飛び込んできた。赤い点は少しずつ大きくなり、こちらに向かってかなりのスピードで動いている。「あれを見ろ! 自転車に乗っている人がいる」と驚きながら仲間たちに声をかける。
近くまで来ると、赤いTシャツにスニーカー姿の、26インチの自転車に乗ったお年寄りであることがわかった。格好から見て、現地のチベットの人ではないようである。不思議に思いながらその人物に近づいて尋ねた。「こんにちは! 自転車でどこまで行かれるのですか?」
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考察隊に旅の話をする「イチョウじいさん」として親しまれている林金根さん |
彼、72歳の林金根さんは、浙江省麗水市の林業の技術者だったが、すでに定年退職している。長年にわたってイチョウの研究に携わり、地元の人々に「イチョウじいさん」という愛称で呼び親しまれている。2002年2月20日、彼はひとりで自転車に乗って、「我愛中華 単騎十万里」という壮挙に挑んだ。浙江省麗水市から出発して、28の省や直轄市、自治区にある1200余の県、市を走り抜け、国境すら越えて、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオスまで行き、4年半かけて7万6890キロを走りぬいた。林金根さんは誇らしげに各国のビザの押されたパスポートと香港、澳門の通行許可証を取り出してわれわれに見せてくれた。「インターネットで林金根の三文字を検索すれば、わしを紹介する資料がたくさん出てくるんだよ」と林さんは楽しそうに笑った。誰もが彼をたたえ、次々に記念写真を撮った。
「0808、早く来い! わしは2008年8月8日まで自転車で走り続けるぞ! 北京まで走っていく。 北京オリンピックを応援するために」。そういうと彼は再び自転車に跨り、引き続き彼の万里の旅を走り出した。遠くに小さく消えてゆく後ろ姿を見つめながら、心の中で彼の成功を祈った。 (馮進=文、写真)
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