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上海スタイルの芸術区

 

田子坊を歩く

田子坊の芸術コミュニティーはひっそりと静かな里弄の中にある。ぶらぶらと歩いていると、芸術家たちと近所の人々の間にとけあう濃厚な生活のにおいと芸術的雰囲気を感じることができる

ファッショナブルな芸術コミュニティーの田子坊は、上海市の中心部盧湾区のにぎやかなエリアに位置している。もともとは1950年代に里弄(横町)内に建設された工場で、上海食品工業機械工場など5つの工場から構成されている。90年代中期には、これらの工場の収益は下降の一途をたどり、やがて工場の建物は長年使わないままに放っておかれた。

しかし、著名な画家である陳逸飛さんが自分のアトリエをここに移したのをきっかけに、田子坊は再び活気を取り戻した。「逸飛工作室」が呼び水となって、田子坊に「比翼芸術中心」「香格納画廊」などアトリエやギャラリーが相次いで移ってくると、黄永玉、爾東強、王劼音などの著名な芸術家たちも次々にこの地に親しむようになった。

ともに芸術家たちが集い、アトリエやギャラリーが密集する芸術コミュニティーでありながら、上海の田子坊と北京の798芸術区の雰囲気はまったく異なる。798芸術区で見られるのは芸術家たちの作品であるが、田子坊では見られるのは芸術家たちの生活だからである。

田子坊のそう多いとはいえないいくつかのギャラリーを眺めてから、通りの脇にあるカフェでひと休みしていると、田子坊の奥の方からおばさんたちがおしゃべりしている声が聞こえてくる。またはファッショナブルなデザイナーが開いたブティックやアクセサリーショップでは、2つとない記念になる買物をすることもできる。夜の闇にすっかり染まってしまう前に、里弄の景色をカメラに収めていると、上海なまりの「すみませんね、ちょっと通してください」という声が聞こえてきた。振り返ってみると、野菜を買って帰ってきたところという風情のおじさんが、買物かごを手に脇をすり抜けてゆく。

こんな風景に驚くことはない。田子坊では、普通の住民と芸術家たちが隣り合って暮らしているのである。毎日観光客が絶えないが、人々はそれにもすっかり慣れ、そんな変化にとくに慌てることもない。

前衛的な芸術が集まる濃厚な生活感の漂うエリア。これぞ「上海気質」ともいうべきものである。

 

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