人気の上海雑貨街を行く
高原=文・イラスト 馮進=写真
旅行で上海を訪れたなら、誰でもきっと何か小物を買って記念にしたいと思うはずだ。こうした場合、大型のデパートやショッピングセンターでは面白みがないし、道ばたの屋台では品質やデザインがいまひとつと感じる。いったいどこへ行けば安くてつくりもよく、味わいのあるものを売る店があるのだろう。実は上海という都市はとても日本に似ていて、こうした場合最適なのは小さな店が集まるエリアで、きっと満足できるものが見つかるはずだ。
新天地と田子坊
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その新天地と比べると、田子坊の小さなショップははるかに庶民的だ。お客も国内の観光客が多い。弄堂(入り口に門があり数棟の集合住宅が並ぶ小路)に一軒また一軒と小さなショップが並んでいるため、うっかりすると人が住んでいる家に入り込んでしまいそうだ。店に並ぶ商品の多くは安価で、ほうろうびきのカップ、手作りのぬいぐるみ、鉛筆、カードやシール、絵葉書といったたぐいの商品が所狭しと陳列されている。それらの商品は、つくりはシンプルだがアイデアに富んでいて、見ただけで人をにっこりさせてしまう。例えば、あるショップの入り口にかかっていたTシャツには中国の緑の軍帽をかぶったオバマ大統領が描かれていた。また、いくつかの店では1980年代式の古臭いほうろうびきのカップが売られていた。本来なら誰も見向きもしないようなものだが、「給料上げてよ」「残業しません」などといったフレーズが大書されたことで、たいへんな人気商品になっている。ここの品物は安価だが、とても流行をとらえているのだ。上海の若者の流行トレンドが知りたいなら、田子坊ははずせない場所だ。
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新天地「simply life」の店内に並ぶ小物 |
屋台が並ぶ東台路の骨董街 |
東台路
田子坊が若者に人気のショッピングエリアだとすると、東台路は中高年観光客が最も好む記念品市場である。ここは「古玩一条街」(骨董ストリート)の異名を持つが、実はにぎやかな屋台の後ろに控えめに並ぶ間口の狭い店でこそ、ほんとうの骨董が売られている。いつも通りに並ぶ屋台で売られているのは、模造の量産品なのである。ここでは、大きなものは仏像やついたてから、小さなものは銀のアクセサリーや古銭まで、なんでもそろい、骨董的な気分を醸し出している。
実は、一人の中国人として、わたしは外国人がどうしてそんなに東台路の模造の骨董が好きなのか分かりかねている。以前、知り合いの日本人数人が、上海に到着するなり東台路をぶらつきたいを言ってきたことがある。わたしは必死に止めようとして、あそこで売られているのは模造品でだまされてはいけないと話した。すると意外にも、彼らはみなそのことを知っていて、安い模造品だから記念に買って帰ることができる、それでこそ中国に来たのが無駄にならないという。そんなおもちゃにいったいどんな意味があるというのか、そして毎日東台路にあれだけ多くの外国人が引きも切らないのか、わたしにはどうしても理解できなかった。考えてみれば、わたしはこうした古いものに囲まれて育ってきたのですっかり見慣れていて、少しも珍しいとは感じられないのだ。しかし、そういえばわたしが日本の東京に行ったときのことだ。日本人の友人がどんな日本料理が食べたいかと尋ねたとき、わたしは即座に「おでん」と答え、彼女を当惑させたものだ。おそらく、それと同じような道理なのではないだろうか。
長楽路
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「瀚芸旗袍店」には90歳になる超ベテラン職人がいる |
長楽路はとても長い通りで、3本の南北に走る通り3本に貫かれ4つのブロックに分かれ、その一ブロックごとに違った顔を持っている。富民路と陝西南路の間は、アニメのフィギュアや模型を扱う店が多い。陝西南路と茂名南路の間では、チャイナ服のオーダーメードショップが多く、映画『花様年華』で使われたきらびやかなチャイナドレスの多くがこのエリアで作られたそうだ。茂名南路と瑞金路の間には、アイデアショップなども見かける。瑞金路から成都路にかけては、若者向けファッションのデザイナーの店が並び、自分のブランドで洋服を売っている。なかには、すでにファッション業界で頭角を表しているデザイナーも少なくない。あなたの慧眼をもってして、多くの店のなかからそうしたデザイナーの痕跡を見つけてみてはいかがだろうか。
人民中国インターネット版 2010年10月