中日軋轢続く 高まる政治的リスク
中国と日本は長年、戦略パートナーとしての関係を樹立しようとしているが、なぜかいつも上手くいかないようである。
ベトナム・ハノイで開催されたASEAN+東アジア3国(中日韓)首脳会議で、温家宝総理と日本の菅直人首相の非公式会談が行われるか否かということが注目された。中日双方が互いに批判の声を声高に叫んでいるのをみると、アジアの大国である両国が瀬戸際戦術を推し進めているのではないかという疑問さえも抱かせる。
日本が中国の漁船船長を拘留した事件により両国間の関係は急激に悪化した後、一時は関係改善のための動きが見られたが、今はまた冷めた関係に戻っている。その理由はどうもはっきりしない。外交部の胡正躍部長助理は「日本がマスコミを通じて、自国の領有権を主張」すれば、会談が友好的ムードに行われる訳がない、と指摘している。また間接的な言葉で、日本が中日間の争議に米国を参与させようとしていることを述べている。だがこの表面的な問題のほかに、個人の感情にまかせた発言や、内政的考慮、政策の機敏さと柔軟性が欠けたことなどが原因で、中日関係を再度の悪化に向かわせたのかもしれない。
中日関係の緊張による不穏なムードは、この度の首脳会議に出席した東南アジア諸国にも蔓延しており、為替問題などの議題もさほど注目されなかった。会議に出席したヒラリー・クリントン米国務長官が、中日関係の軋轢に対し冷静な対応を求め、日米中3カ国の話し合いの場を持つことを提議したほどである。
日本の政府関係者が述べた内容によると、最終的に、菅直人首相と温家宝総理は、1対1の懇談を行ったが、その時間はわずか10分間ほどであった。中国は公的な報道を控えている。
人民大学国際関係学院の時殷弘教授は「中日関係の悪化は9月をピークに少しずつ沈静化している」と述べている。
日本外相のマイナスイメージ
時殷弘教授によると、今年48歳になる前原誠司外相の外交上の取り組み方は、融通が利かないことがある。この度、中日首脳会談を中国側がキャンセルしたことは、前原誠司外相が中国の一連の対抗措置に対し「極めてヒステリック」との発言をしたことに対する反撃なのかもしれない。この発言に対し、中国の外務省報道官は「一国の外相として、このような言論を発表したことに非常に驚愕した」との感想を述べている。
時殷弘教授は「中国からすると、中日関係の改善において、前原外相が最大の障害となっている。彼のイメージはマイナス的なものが多い」と述べている。
中日両国は戦略的提携パートナーとして、その関係を樹立しようと努力してきた。だが、さまざまな問題がしょっちゅう出ては、その努力が泡になっている。首相の靖国神社参拝に対する中国の抗議や、この度の尖閣諸島をめぐる争議などがその例である。
2009年、中国は日本の最大貿易相手であり、両国の貿易額は2,700億ドルに達している。東シナ海の海域における争議など、国の主権問題において、中日両国は長期にわたり睨みあいの状態が続いている。だが、これまでこのような争議が貿易関係に影響を及ぼすことは滅多になかった。
この度、中日両国の関係が悪化した後、中国側がレアアース(希土類)の日本向け輸出を取り止める、あるいは制限するということが報じられた。ハイテク企業にとってレアアースは無くてはならないものであり、レアアースのほとんどを輸入に頼ってきた日本にとって、その知らせは震撼させるものであった。この度のASEAN+3国首脳会議において、日本はベトナムなどの国と、希土類資源の共同開発する協議が合意に達した。これにより中国への依存度を減らす狙いである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年11月3日