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運転熟練 人間未熟

元米国副国務長官のロバート・ゼーリック博士(2007年7月から世界銀行総裁)が上海を訪問した時のエピソードだ。夜いっしょに食事した時、話題は中国の交通事情に及んだ。同氏は何回も中国を訪れたことがあるが、車に乗るたびに、いつもびくびくしているという。中国の運転手の多くは、気分次第で頻繁に車線を変更したり、追い越しをかけるし、高速道路では車間距離が近すぎることに気づいたからだ。そのため、同氏は車の中から、フランスの保険業に関わる友人に電話し、中国では交通事故が多いので、保険料コストは他国に比べるとかなり高い、と伝えた。

 確かに、中国の一部の運転手は車線変更に熟練しているかもしれない。しかし、人間としては未熟だ。つまり「運転熟練、人間未熟」というわけだ。生命の重みに対する意識が希薄で、達成できもしないわずか数分間の速さを競って、自分だけでなく他人の命も奪ってしまうからだ。上海交通警察総隊の係官に聞いて分かったのだが、上海で発生した交通事故のうち、車線変更が原因で起きた事故は30%を占め、追突による事故は60%に達している。追突の原因には、無理な追い越しや「余計な」車線変更もある。

 日本を訪れた時、高速道路が渋滞した場合、追越車線へ車線変更する車は一台もないことに気づいた。私は何度も車で成田空港から東京へ走ったことがあるが、約65キロの道のりで、運転手は高速道路に出入りするときしか車線変更をしなかった。走っている車線に車が多く、となりの車線が空いていても、運転手は少しも心を動かさずに、一本の車線を最後まで走り続けた。二人の日本人の友人の話によると、日本の運転手のこうした好ましい習慣は3、40年間を費やしてやっと身に付いたものだそうだ。1990年代、東京のタクシー運転手は時に、むやみに他の車と競走していたため、第二次世界大戦末期の「神風特攻隊」をもじって「神風タクシー」と呼ばれていた。

 中国の高速道路で、「車間距離を保て」という標識は見かけるが、「車線変更に注意」という警告は見たことがない。外国の高速道路で「CHANGE LANE,CHANGE LIFE」(車線変更は人生変更と同じように慎重に)というスローガンを見かけたことがある。中国のデジタル掲示板にもこのような警句を掲げてみてはいかが?

趙啓正

 

 1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。

 

 1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。

 

 2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。

 

人民中国インターネット版 2010年11月

 

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