People's China
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ロシア情緒たっぷりの街並み

高原=文 馮進=写真

中国人の印象のなかでは、黒龍江省の省都・ハルビンは異国情緒が色濃く漂う街だ。800年前、女真族(満州族の前身)がここに早期の都を築いた。「ハルビン」という名称は満州語の「アルジン(阿勒錦)」から転じたもので、「栄誉」の意味を持つ。

聖ソフィア大聖堂 聖ソフィア大聖堂正面入り口のアーチ形

近代になって、中東鉄道(帝政ロシアが敷設した鉄道で、満洲里からハルビンを経て綏芬河に至る本線と、ハルビンから長春・瀋陽を経て大連・旅順に至る支線から成る)が敷かれたことで、多くの外国人がハルビンに殺到し、多額の資金がもたらされた。外国人が最も多かった時期には20万人を超え、当地の中国人の数を上回って、ハルビンの総人口の52%を占めたほどだ。外国人の中でもハルビンに最も大きな影響を及ぼしたのがロシア人だった。彼らはここに数々のロシア文化の痕跡を残し、ハルビンを親しみをこめて「東方のモスクワ」と呼んだ。

華麗で厳かな大聖堂

ハルビン市の中心に位置する聖ソフィア大聖堂は、ハルビンのシンボルになっている。その赤レンガの外壁と玉ねぎに似た緑の丸屋根からは、ロシアのメルヘンの香りが漂ってくると言っても、決して過言ではない。周りには多くの高層ビルや近代的なビジネスセンターが教会を見下ろすように建ち並び、教会は背をかがめ、いかにも窮屈そうに見えるが、この街にとって欠かせない存在であることには変わりなく、ハルビンらしさを代表している。

 ハルビン市のシンボル、聖ソフィア大聖堂

聖ソフィア大聖堂は東アジアで最も大きなロシア正教の教会で、典型的なビザンチン建築だ。1907年に創建され、帝政ロシア兵士の軍用教会だった。後に、ハルビンに住むロシア人が増えたため、1923年に増築が始まり、9年をかけて今に残る大聖堂が出来上がった。

広場から見ると、中央の大きな球状の丸屋根が周りにそびえる大小のとんがり屋根を睥睨しているかのようで、ロシア風の主従式建築構造が顕著であることが分かる。立面にはアーチ形が最も多く用いられている。入り口の上部も窓の上部もアーチ形に設計され、大きなアーチが小さなアーチを覆うように重なり、何重になっているのか、瞬時には数え切れないほどだ。さらに、丸、四角、十字の形の幾何学模様が加わり、建築全体の複雑かつ華麗な美を際立たせている。ただ、華麗と言っても、そのレンガの赤と屋根の緑のコントラストは控えめでもあり、落ち着いていて、独特な風格をかもし出している。

聖ソフィア大聖堂内の歌声に多くの観光客が耳を傾けていた

大聖堂内に入ると、長椅子や講壇はすでになく、ハルビンの街の歴史をたどった写真が展示されているだけだった。中央ドームの側面の壁は壁画が剥落し、まだら模様になっていて、外観と比べ、より以上に長い時の変遷と世の移り変わりの激しさを感じさせる。ただ、天井から吊り下げられた九つのシャンデリアからは、当時の厳かな礼拝の雰囲気が多少なりとも感じられ、心なしか敬虔な思いにいざなわれる。

「銀貨」を敷き詰めた通り

ハルビンで最もヨーロッパ情緒が漂う中央大街 

聖ソフィア大聖堂以外で、ハルビンで最もヨーロッパ風なところと言えば、それは中央大街だ。この有名な商業街は、最初1898年に切り開かれ、当時は「キタイスカヤ」(中国街)と呼ばれた。1924年に、あるロシアのエンジニアが命を奉じて通りを改修し、長さ700㍍の街路の路面すべてに四角い石を敷き詰めた。一枚の石は縦18㌢、横10㌢。花崗岩製で、その形がロシアパンに似ているので、人々は「パン石」と呼びならわしてきた。当時、一枚の石は一元の銀貨に相当し、普通の家庭の一カ月の生活費に当たったという。この通りは銀貨を敷き詰めていると言ってもいいだろう。

中央大街で観光客のために似顔絵を描く画家 

中央大街の両側には、今でもハルビンで最も美しいヨーロッパ風の建築が保存されている。例えば、19世紀末のアールヌーヴォー(新芸術運動)時期の風格を持つモデルンホテル(馬迭爾賓館)、ルネサンス風格の婦人児童用品商店、バロック風格の教育書店などなど、見切れないほどだ。冬の夕暮れの灯ともしごろに、ちらちらと雪が舞い始めると、古い歴史を持つ建築群はことのほか重厚さを増し、ハルビンならではの美しい景観をつくり出す。

バロック風格の古い建物。現在は教育書店に

夏の中央大街。バーで一休みする若いロシア人観光客も

地理的な優位性に加え、ロシアとの歴史的な縁が深いため、ハルビンはずっと対ロシア貿易の重要な窓口だった。ここに来た観光客は皆、ロシア風の記念品を買い求めたがる。そのため、中央大街には、ロシアの商品を並べた店々が軒を連ね、マトリョーシカやロシアチョコレート、化粧鏡、軍刀、望遠鏡、ウオッカなどのロシア土産を買い求めることができる。と言って、地元の人によれば、ロシア原産のものは実はそんなに多くないとか。仮にロシアに旅したとしても、買った記念品は「メイド・イン・チャイナ」かも知れないのだから、ハルビンは言うまでもなかろう。あなたが、ほんの遊び気分で買い物するのではなく、どうしてもロシア産の土産を買いたいというのなら、それこそ目を皿にして、注意深く見極めなければならないことを申し添えておきたい。

 

人民中国インターネット版 2011年10月