郊外に再現 歴史の記憶
ボルガ荘園内に復元されたパブロフ城 |
30数棟のロシア風建築物
聖ニコライ聖堂が復元された後、それだけが独りぼっちに見えたので、投資者は思い切って「ボルガ荘園」という看板を掲げ、多くの歴史的建築物を園内に復元していった。例えば、ミニチュアレストランは、もともとハルビンの太陽島にあり、外観は大型船のようで、当時のロシア人が最も愛したリゾートレストランだったが、1997年の大火で焼失してしまっていた。また、ファンタジークラブは1920年代のハルビンで最も有名なナイトクラブだったが、時代の変遷の中でその姿を消してしまっていた。さらに、ボルガ荘園のツーリスト・センターは1925年に破壊されたロシアのニジニ・ノヴゴロド繊維工場の展示ホールを復元したものだ。
プーシキンサロンには19世紀半ばごろのドイツ皇室特注のピアノが置かれている。ロシア人の演奏家が観光客のためにショパンの曲を演奏しているところ |
復元された19世紀末ごろのロシア風建築物のプーシキンサロン。さまざまな文化芸術展なども開催され、中国とロシアの文化交流促進に役立っている |
現在、園内には30数棟のロシア風建築物が並び、宿泊、飲食、会議、芸術展示、ステージショー、湿原ネイチャー観光などが一体となったハルビンの新しい観光スポットとなっている。ここを訪れるのは中高年のツアー客が主で、ほとんどは聖ニコライ聖堂を懐かしんで訪れ、ついでに復元されたほかの歴史的建築物も見学し、過去の麗しい歳月を追憶する。一方、マイカーで訪れる若者もおり、彼らにとっては新鮮なロシア風の田園風景が大きな魅力となっている。
ロシアのニジニ・ノヴゴロド繊維工場展示ホールを復元したボルガ荘園のツーリスト・センター |
ボルガ荘園内のファンタジークラブで上演されるロシアのステージショーを楽しむ観光客 |
現在のボルガ荘園の総面積は0.6平方㌔で、将来はさらに5平方㌔拡大する計画となっている。旧ハルビン駅を復元し、さらに領事館街とアルバート商店街の復元へと進む予定で、これらの建築群を通して、20世紀初頭のハルビンの歴史的風貌を人々に感じてもらおうという考えだ。ただ、復元された歴史的建築物は、いくら真に迫るといっても命のない器に過ぎないので、復元は提唱に値しないという意見もある。しかし、急速に変貌する都市にあって、歳月の歩みをとどめ都市の歴史を記憶に残すことは、人々にとって1つの願いだろう。そう考えると、このレトロなボルガ荘園は、ないよりはあった方がいいものだ。人々の記憶は、これら生き返った歴史的建築物に、新たな魂を吹き込むかもしれないのだから。
人民中国インターネット版 2011年12月