井上俊彦=文、写真
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開会式で講演を行う汪洋国務院副総理 |
7月28日から2日間、内蒙古自治区オルドス市にあるクブチ砂漠国際会議センターで第5回クブチ国際砂漠フォーラムが開かれた。このフォーラムは砂漠にかかわる環境問題について討議するもので、隔年で開催されている。5回目となる今回のテーマは「砂漠エコ文明・共にシルクロードを築く」で、40余りの国と地域および国連などの国際機関から政府関係者や研究者、合わせて300人余りが参加した。
開会式には汪洋国務院副総理(中共中央政治局委員)が出席し基調講演を行った。この中で、汪副総理は砂漠化が世界的に深刻な生態問題であり、経済・社会の持続的発展に影響を与えていることを指摘、長年のたゆまぬ努力によって、中国における砂漠化対策は世界的に認められる成果を上げており、砂漠化を食い止め、砂漠の面積を減らすことに一定程度成功していることを紹介した。また、砂漠化防止に関係する産業を育成し、農牧民の収入と企業の利益を高めることにも一定程度成功していることに触れ、今後はさらに国際的な協力、特に「一帯一路」の沿線国家との連携を強め、共に緑のシルクロードを築くよう努力していかなければならないと強調した。
砂漠化や水不足は世界各地で大きな問題となっており、人々の暮らしや経済活動に大きな影響を与えている。砂漠のないヨーロッパにも難民問題などの形で影響が及んでいるほか、日本でも最近はPM2.5を運ぶとして黄砂が問題視されている。クブチ砂漠はその黄砂発生場所の一つとされるが、この地で緑化に取り組んでいるのは億利資源(ELION)という企業。内蒙古出身の王文彪董事長(55)を中心に27年にわたって黄砂対策や砂漠資源の産業化に取り組み、すでに6000平方キロ以上を緑化しただけでなく、太陽エネルギーやエコ畜産、医薬、観光といった分野で砂漠資源の産業化に成功している。フォーラムではこの企業の取り組みが詳しく紹介された。
そのフォーラムが行われた会議場から車で20分ほどの場所にある「英雄坂」と名付けられた一帯で、尚友福さん(58)が植樹をしていた。金属のパイプを砂に押し付け、ポンプの水圧を利用して穴を開けながら水を注入し、もう一人のスタッフがそこに苗を挿していく。20年来で植樹技術の改良が進み、現在ではこの方法で1日に20ムー(約1.3ヘクタール)に樹木の苗を植えることができ、活着率も90%の高さになったという。そして彼は、次男もすでにこの仕事に就いていることを笑顔で語ってくれた。クブチ砂漠には、樹木と共に緑化の後継者も着実に育っているようだ。
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若い記者に対してていねいに問題を解説する各国の専門家たち |
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最年少参加者の一人で米国ノースカロライナ州の高校で学ぶ蔡元明君(18)は、学生による分科会で環境問題における教育の重要性を訴え国際機関の連携を提案する発表を行った |
億利集団と大手通信機器メーカー・ファーウェイ(華為)の協力に関する調印式も行われた |
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