会社の本部を義烏に
スーダン人のハリルさんは1986年に中国にやって来た。初めて義烏を訪れたのは92年のこと。そのとき、この地にはビジネスチャンスがあり、地元の人々もとても友好的だと感じた。「ここの人たちは頭がいい上に真面目に仕事に取り組み、信用できる。彼らと商売をしても騙される心配はありません。私の会社は中国の義烏や広州をはじめ、アラブ首長国連邦やイラン、サウジアラビアなど世界各地に合わせて14の支店を持っていますが、本部は義烏に置きました」
その理由について、いくつかの要因を挙げる。
1、取引量が多いこと。92年に義烏にやって来て運送業を始めてから、99年に会社を設立するまでの間に、商売はますます盛んになっていった。義烏は扱っている商品の種類が多く、価格も合理的なため、世界各地からバイヤーが集まる。取引量が多いときは、1日百個近くのコンテナを送り出すことができる。日用雑貨の市場にとって、これは天文学的な数字だ。
2、インフラ設備やサービス環境が整っていること。義烏市政府は海外の企業に各種の便をはかり、さまざまな措置をとっている。たとえば居住や自動車の購入手続きの簡素化、便利な運送・輸出代理サービス、融通の利いた両替業務、出入国手続きの簡素化など。日常生活におけるサービス環境もしだいに整い、居住や飲食面だけでなく、外国の子どもを専門的に受け入れる学校も設立されている。しかも学費や税金は安い。このため、外国商人の数はますます増えている。
3、活気あふれる国際的な都市であること。義烏はすでに国際的な都市となり、誰もが国際ビジネスに携わることができる。ここでは、中国人だけでなく、世界各国の商人たちと取引をおこなうことができるため、世界の市況がわかる。
ハリルさんの言う通り、義烏はその優位性をいかして、たくさんの外国商人をひきつけている。米国、日本、ヨーロッパ、中東などから商人がぞくぞくとやって来る。現在、義烏には外資系貿易会社が700社近くあり、世界各地の商人8000人近くが店舗を設けている。義烏市の市長によると、目標はここを「新シルクロード」の起点にすることで、中国製品をここから世界に送り出したいという。
安くて質のよい商品
中国には「安いもので質のよい品はない」という言葉がある。しかし、義烏で商売をする人たちは、「安くても質のよい商品はありますよ」と自信たっぷりに言う。各国のバイヤーたちがわざわざここへやって来て商品を仕入れる理由は、中国製の雑貨の競争力がすでに世界トップクラスとなり、義烏は貿易センターとして国際的な地位を確立しているからだ。
義烏は雑貨の集散地であり、商品の種類が豊富で、価格も安い。品質も向上しているため、海外のバイヤーがたくさん集まってくる。
雑貨は中国経済においてもっとも優勢な労働密集型産業であり、中東、アフリカ、東欧、アジアの各国に大きなマーケットを持っている。今は日本や欧米などの先進国でも相当なシェアがある。世界中の消費者が「安いもの」を買いたいと願っているからだ。ヨルダンから来たあるバイヤーは、「プレゼント用の飾りナイフを仕入れたいと思っています。ここの商品は思っていたより質がいい。さらにうれしいのは、価格が安いことです。ここに来た理由は、アラブ諸国の商人はもちろん、世界各国の商人がいるからです」と話す。
義烏の商品は種類が豊富なだけでなく、大きな需要も満たすことができる。市場には昔から力がある8大産業(アパレル、日用雑貨、皮製かばん、電子電器、玩具、金物工具、印刷品、靴)のほか、文化・スポーツ用品、水晶工芸品、装飾品、生花、化粧品、眼鏡、時計、雨具など、国内各地の特産品が勢ぞろいする。海外のバイヤーたちは12万種以上の商品から、自分たちが仕入れるべきものを選ぶことができるのだ。初めて義烏を訪れたバイヤーは、「手に入らないものはない。ただ、何を買えばいいのか思いつかないだけだ」と口をそろえて言う。
義烏の雑貨が安いのは、ほとんどの店舗が工場直営のためで、代理商の費用が省けるからだ。一部の商品はデパートなどの小売価格の半分で取引することができる。たとえば、義烏の雑貨市場では写真を入れる額縁が3ドルで売られている。大量に仕入れればもっと安くなる。しかしこれが欧米などに運ばれると、少なくとも数十ドルで売られることだろう。
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