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「多極間協力時代」の到来を迎えて

 

中国人民外交学会会長 楊文昌

中国人民外交学会会長 楊文昌
  米外交問題評議会(CFR)会長で学者のリチャード・ハース氏(注)と『ニューズウィーク』国際版のザカリア編集長はこのほど、冷戦終結以来の米国を中心とする「一極時代」に重大な変化が生じつつあると提起した。しかし、今後その変化がどこへ向かうのかについては、はっきりした見方を示していない。そこで私は、ハース氏らの提起した命題を受けて、個人的な意見を述べてみたい。私は「多極間協力時代」は、21世紀前半の世界構造の基本的な特徴であり、「多極時代」の大国と大国の関係をうまく処理することが、「多極間協力時代」を実現する前提条件であると考える。

20世紀を振り返る

歴史の三つの特徴

20世紀の歴史を振り返ると、三つの特徴がある。

第一は、西洋列強が20世紀の前半、世界の資源と市場を争奪して2回の世界大戦を引き起こしたことである。この戦争は各国人民に重い代価を支払わせ、とくにユーラシア大陸の各国人民に痛ましい記憶を残した。

第二は、第二次世界大戦の終了後、平和を渇望する各国の政府と人民が国際連合を創設したことである。この組織は人々の願いにそむかず、先頭に立って全世界が直面する難題を解決するよう期待された。しかし、国連が成立したその日から、米国とソ連の二つの超大国が、世界的規模で激しく対立し、人類はそれによって、四十余年の長きにわたって核軍拡競争の恐怖の中に閉じ込められたのである。

この四十余年間の「冷戦」状態の中で、米ソ間のイデオロギーの戦いは、世界の隅々にまで広がった。どの国でも例外なく、自分がどちらの側に立つか、態度を表明するよう迫られた。これに対し国連もなす術がなかった。

しかし1990年代の初め、「冷戦」の対峙状態は、ソ連の徹底的な崩壊によって終結した。米国は世界で唯一の超大国となった。

1990年代の10年間、米国の、国際社会の問題を主導するうえでの横暴な態度が急にあらわになった。世界各国は、米国という巨大な存在と直接衝突するのを避けるよう努力した。世界はしばらくの間、安定期に入った。

第三は、米ソが「冷戦」で対峙していた数十年の間に、西欧、日本、オーストラリア、カナダ及びアジアニーズが、真っ先にこうした、脆弱ではあるが平和であった時機をつかんで、力を集中してそれぞれの経済を発展させたことである。科学技術もすさまじい勢いで発展した。西欧と東南アジアは一歩先んじて、連携して自らの国力を強化する新しい道を開いたといえるだろう。

20世紀後半、中国、インド、ブラジル、南アフリカなどの発展途上の大国も、国の内外政策を調整し、「改革・開放」と建設重視の方向へ進んだ。ロシアもソ連崩壊の十年後、次第に復興の道を探し当てた。「平和」「発展」「協力」という世界の主旋律は、経済のグローバル化を絶えず深化させ、発展させ、世界の生産力は大幅に高まった。

2008年8月28日、上海協力機構の首脳会議がタジキスタンのドゥシャンベで開かれた(新華社)

 二十世紀の経験と教訓

第一に、20世紀初めに勃発した二回の世界大戦は、いずれも西洋列強の利益の衝突が調停できなかった結果であり、実力を後ろ楯とし、戦争という手段を通して資源と市場を争奪した結果、自分も相手も共倒れになり、同時に全世界に前例のない災難をもたらした。

第二に、米ソ間の四十余年も続いたイデオロギーの争いは、世界各地の情勢の緊迫化を引き起こした根本的な原因となった。二つの超大国は、イデオロギーを基準として敵味方を分けるため、弱国は基本的にどちらかに従属する受身の立場に立たされ、世界は絶えず不安定であった。

20世紀の歴史の中から、次のような結論を導くことができる。第一に、武力に訴えるのは、利益の衝突を解決する理性的な方法ではない。第二に、イデオロギーを基準にして、複雑な全人類の関係を処理すべきではない。第三に、協力による「ウイン・ウイン」こそ、60億の人類が選択すべき唯一の正しい道である。

 

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