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多様化する庶民の財テク

 

中国人民大学財政金融学院 類承曜・准教授インタビュー
 中国の財テク市場は 「初級発展段階」

 

天津の南開大学で行われた大学生による模擬株式投資のコンテスト

 

——先生は、中国が「国民総財テク時代」に入ったと思われますか。

 

承曜氏(以下、類と略す) 確かに中国では、投資や財テクブームが起こっていますが、すべての人が財テクをしているわけではありません。

経済学的見地からすると、財テクは人間が意識的に財を増やす行為であり、主に投資のことを指します。現在、投資能力を持っているのは事実上、収入が中レベル以上の人々で、例えばホワイトカラーの人々です。それに反し、多くの農民や都市の貧困層は財テクをすることができません。なぜなら彼らは、収入のすべてで生活を支え、投資する資本も意識もないからです。

財テクをしている人々は、中国の総人口の10~20%しか占めていませんが、彼らは中国の経済と社会の中核的な役割を担っています。彼らの投資行為は、中国の経済と社会に対し影響力があります。例えば、この数年来の「財テクブーム」は彼らが巻き起こしたものです。

銀行や証券取引所のホールでは、大勢の退職したお年寄りたちが株やファンドを売買しているのをよく見かけます。また株式や不動産市況の変化も巷の話題になっています。しかし、これらは中国の投資市場に対し決定的な影響を与えることはありません。なぜなら「散戸」と呼ばれる中小の個人投資家は、力がまだかなり弱いからです。しかし、人々が財テクの意識を持ち始めたことは、疑いのない事実です。

 

——以前と比べ、庶民の財テク意識にどのような変化がありますか。その原因は何でしょう。

 

類 1970年代末から80年代までと比べると、現在の財テク意識とその手段は多様化しました。以前は余分なお金があれば、銀行に貯金するか国債を買いました。90年代には証券取引所は設立されたものの、株の売買をする人がまだ少なかったです。

1997年から、内需拡大と国内市場を刺激するために、政府は積極的な財政政策と金融緩和政策を実行し、銀行の貯金・貸付の金利を引き下げ続け、大衆の消費を奨励しました。これによって人々は、貯金の利息が少なくなり、そのうえ物価が上がり、銀行に預金すればするほど引き合わないことにだんだんと気付きました。

とくに2005年になってから、中国の株式と不動産の市況が値上がりし、国の外貨準備高が激増したことによって、中央銀行が大量に発行した貨幣が市場に流通し、賃金の引き上げによって庶民の財布が膨らんできたのです。そのうえ、一部の投資家が株や不動産で金を儲けたという神話によって、一般の人たちが、貯金を引き出し、もっと率の高い株と不動産に投資し、今日の「投資・財テクブーム」が形成されていったのです。

表面的には、中国では、一夜のうちに人々の財テク意識が、かつての保守的な考えから開放的なものに変わりつつあるように見えます。しかし実は、根本的な原因はやはり「改革・開放」政策が始まってから30年、中国経済の実力と経済情勢が急速に発展したことにあるのです。つまり1つには、人々がお金を持つようになったこと、2つには、投資と財テクの道がつくられたことです。今日の現象は「水到りて、渠成る」(条件が整えば、自然に成就する)とも言えるでしょう。

 

——政府は人々に「財産所得」を持たせることを提起しましたが、これはどう理解したらよいのでしょうか。

 

類 これまで人々の収入は基本的に、労働による賃金でしたが、現在は、多くの人たちの収入に、株やファンド、不動産などの投資による利益が加わりました。それは「改革・開放」以前や「改革・開放」初期には「公明正大な収入」ではなかったのです。計画経済の影響を受けたため、国は個人の投資行為を、少なくとも認めることはなかったのです。

しかし中国の市場経済の発展につれて、国は個人の投資行為を奨励し始めました。投資家の利益と積極性を保護するために、投資による利益を、人々の合法的で正当な私有財産の範疇に入れ、それを政策の形にして認め、投資家の心配を取り除きました。これは国が個人投資による利益所得を認めたことを示しています。

 

——庶民の財テクの現状はどうでしょうか。どんな問題があるのですか。

 

類 国際的な財テクモデルの発展動向から見ると、一般的には「大衆財テク段階」から「機構財テク段階」になります。「大衆財テク」というのは、財テクする人が独立して行う段階を指します。しかし、すべての財テク者が投資の専門家になれるわけではないので、彼らに代わって投資する専門機構が出現します。

人々は資金を彼らに渡して管理してもらい、財テクの目的を達成しようとするのです。ここから「機構財テク段階」に入ります。しかし現在の中国は、まだ「大衆財テク段階」にとどまっています。それは、株式市場にたくさんの個人投資家が存在していることを見れば分かります。

中国の財テク市場はまだ「初級発展段階」にあり、発展の前途と空間は非常に大きいと言えるでしょう。

当面、本当にやらなければならないのは、証券市場をもっと完全なものにし、また監督・管理制度をさらに完備することです。

「情報の不平等」「不正工作」「インサイダー取引」などは、市場の不良現象を反映する言葉です。これは先進国にも存在しますが、市場の監督・管理体制が比較的完備しているので、事件の発生率はかなり低いのです。米国の証券市場には、専門の弁護士がいて、詐欺行為を調査し、株式投資家の利益を保護するために訴訟を起こします。

現在、中国は、まだそこまで達していないため、中小の投資家は往々にして、不良現象の犠牲になっています。ですから、中国の投資と財テクの市場を合理的な方向に健全に発展させるためには、安定し、公平で、公正な、開かれた投資環境の構築につとめなければなりません。

 

 

人民中国インターネット版 2009年3月

 

 

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