再編により回復した工業
孫雅甜=文
2009年、中国の工業界は大きな構造調整をはかった。
中国政府は、昨年12月の中央経済工作会議で、2009年は「成長の維持」が最重要であることを明確にした。また急速な発展方式を変更し、経済構造の戦略的な調整を推進することを、政府の任務の一つであるとした。
その後、2009年1月から2月にかけて、政府は相次いで、鉄鋼、自動車、船舶、石油化学、繊維、軽工業、非鉄金属、設備製造、物流、電子情報の『十大産業調整振興規画』を発表した。調整、再編、モデルチェンジ、グレードアップを目指す産業構造は幕を開けた。
設備製造業のグレードアップ
設備製造業は金融危機の深刻な影響を受けた。がその一方で、中国の設備製造業の基地の一つである瀋陽は、産業構造の調整やグレードアップを通し、発展へと勢いづいている。中国の変圧器業界大手の「特変電工瀋陽変圧器集団」は、絶えず技術革新を図り、高品質製品開発に重点を置き、市場シェアを向上させた。
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乳製品の生産基地である内蒙古自治区では、すでに国際的な先進技術水準にある液体牛乳の生産ラインを備えている(新華社) |
これと同時に、瀋陽市政府は、企業の吸収合併による再編を強力に支持し、社会資源である生産要素を優良企業に集め、北方重工集団、瀋陽鼓風機集団など大手の重点企業でベスト十大設備製造基地を造った。その結果、企業の生産率はアップし、市場競争力も明らかに強化された。
瀋陽の発展は、ある側面から言えば、構造調整とグレードアップによって設備製造業に機会をもたらした。
設備製造業の景気指標によると、今年7月から9月にかけて、設備製造業の販売高は1兆1335億9000万元で、同期比17.1%の増加となった。今年の上半期と比べても、穏やかな伸びを見せている。
低排出ガス車購入の奨励や農村部の自動車買い替え補助金政策(「車を農村に」)、農機具購入補助金政策などの効果が現れはじめている。今年、10月下旬、自動車生産販売台数は1000万台を突破した。
鉄鋼、石炭業の統合再編
国民経済のもう一つの重要な領域である鉄鋼業の産業構造の調整も歩調を速めている。
中国は現在、鉄鋼メーカーは大小合わせて一千社余り。産業集中度は低く、鉄鋼の過剰生産が深刻な問題となっており、産業内部の再編は焦眉の急である。
2008年、中国鉄鋼業界では、17件の経営統合があった。2009年に入り、金融危機は業界に低迷期と低コストをもたらしたが、大手鉄鋼メーカーにとっては規模拡大のためのチャンスとなった。
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特殊鋼製品を生産している東北特鋼集団は、国内初の高速線材の生産ラインを稼動させた |
3月、宝鋼集団(上海)は寧波鉄鋼(浙江省)を傘下に収め、鉄鋼業の『調整振興規画』発表後、最初の統合再編となった。9月、山東鉄鋼集団は日照鉄鋼集団(山東省)を吸収した。再編後の山東鉄鋼の生産量は2931万トンを超える見通しとなり、新しい中国鉄鋼業界トップの鉄鋼メーカーが誕生した。このほか、鞍山鉄鋼集団(遼寧省)は、今年に入り攀枝花鉄鋼集団(四川省)との再編成を進めている。
一連の再編および政策の細かい規定が、相次いで発表された。これは中国政府が立ち遅れた生産能力を淘汰し、再編統合を推進する強い決心を示したものである。
石炭業界も、大幅な再編に乗り出している。2009年、中国の重要な石炭基地である山西省は、2010年までに、山西省全体で2598ある炭鉱を1000カ所に減らし、2200社以上ある石炭メーカーも百社までに縮小する予定だ。これは、中国石炭業界の内部構造の長期にわたる不合理、資源の浪費、生態環境破壊などの問題の解決に役立つだろう。
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2009年のダボス夏会議で、大連新源動力公司が生産した燃料電池による電動自転車を試し乗りする来賓(新華社) | 繊維業も苦難を脱出
繊維業界は今年、すでに穏やかな回復傾向を示している。 服飾業の盛んな浙江省寧波では、金融危機の影響から、輸出向け商品を主としていた服飾メーカーは深刻な被害を受けた。だが、多くのメーカーは速やかに国内向けの販売戦略を開始した。自主ブランドを作り、国内外並行して販売をし、苦境から脱した。輸出の注文も大幅に回復し、メーカーの稼働率も上昇して、盛んに従業員募集をする現象も復活してきた。 今年1月から7月までで、寧波の服飾業は総生産額166億7000万元を達成し、同期比4.9%上昇した。輸出引渡し額は94億9000万元となり、同期比15.4%上昇した。繊維業は、寧波の急成長する業種の一つとなった。
通信業も徐々に回復傾向に向かっている。今年上半期、中国移動(チャイナモバイル)、中国電信(チャイナテレコム)、中国聯通(チャイナユニコム)三社は、ともに3G(第三世代)携帯電話に約800億元を投資し、関連産業の発展の牽引に力を発揮した。
緩和された中小企業の融資難
2009年、中国の中小企業は、構造改革とグレードアップ、融資の面で進展があった。
広東省の中小企業は、今年早くも他に先駆け復活を遂げた。現地政府は引き続き出資し、中小企業の自主イノベーション能力の向上と、グレードアップの加速をサポートしている。現在、広東省の多くの中小企業は、すでに初期の加工、建築、運輸、商業貿易などの伝統的な領域から、インフラ、機械製造、ハイテク技術などの領域を開拓し、中小企業が現代サービス業、情報技術、生物医薬などの新興産業の主体となっている。
一方、融資難は、絶えず中小企業発展のボトルネックとなっていた。政府は金融機関を誘導して、すでに打ち出した金融支援策を実行した。これらの取り組みは、中小企業の融資手順を簡略化し、村や町に銀行を創立し、少額ローン会社を試験的に設立するなどの措置を実施した。これからの取り組みは、中小企業の融資難の打開に効果をあげている。
さまざまな政策や措置が徐々に実施されるにつれ、その成果も現れはじめている。1月から9月まで、中国の一定規模以上の工業の増加値は、同期比8.7%上昇し、7月から9月にかけては12.4%伸びている。工業の安定は、経済情勢全体の好調をもたらした。中国の1月から9月までのGDPは、同期比7.7%上昇し、7月から9月にかけては8.9%伸びている。これは、中国が世界的な金融危機に対応した包括的な計画の効果がすでに出てきて、中国経済が確固として回復へ向かっていることを示している。
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