国内で売れに売れる輸出品
張春侠=文
「外貿大集」という新しい言葉が、今年、中国を駆け巡った。本来は輸出用につくられた商品を国内で売る「輸出品大売り出し」のことである。世界的な金融危機によって、国際市場の需要が大幅に減少し、中国の多くの輸出企業は在庫を抱えた。一方、政府の経済刺激策によって、国内市場の需要は拡大の一途をたどった。そこで多くの輸出企業は国内市場に目を向け始めた。
各地にさまざまな形の「外貿大集」が出現した。それは輸出企業が国内市場を開拓する新しい試みとなった。
まず北京から始まった
土曜日の朝早く、北京の東部に住んでいる田さんは北西部にある金源燕莎ショッピングモールに駆けつけた。そこでは「外貿大集」が催されている。「手ごろな値段でいいものが買えるそうだ。こんなチャンスは見逃せないわ」
だが、田さんがモールに着いたときには、一階の「外貿大集」の売り場はすでに黒山の人だかりだった。写真をプリントできるマグカップやTシャツ、自分でつくれるヨーグルト製造機、指の爪くらいのフラッシューメモリ、監視と音楽の機能を持つ掃除ロボット……。斬新なデザインや目新しい機能を持つこれらの輸出商品を見て、田さんは眼が散った。
「こんなグッズはあまり見たことがなくて、新鮮!しかも値段も納得できるし」。田さんは30元で、自分の写真がプリントできるアルミ製の水筒を買った。そしてすぐに、ユニークなデザインでわずか20元の、綿と麻の混紡のハンドバッグを買いに飛んで行った。
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2009年10月、第106回中国輸出入商品交易会が広州市で開幕し、2万社以上の国内企業も参加した |
金源燕莎ショッピングモールで催された「外貿大集」は、北京市商務局が世界的な金融危機が輸出企業にもたらす影響を緩和するために3月5日から行ったキャンペーンである。このキャンペーンに出品されたのは、輸出用に生産されたが輸出できない商品ばかりで、一般市民に向けて売り出されるのはほとんどが初めてのものだ。しかも値段は非常に安い。このため「外貿大集」が始まると、たちまち数万人の買い物客が押しかけ、初日のたった数時間で、売り上げは十万元を上回った。
ヨーグルト製造機を主な製品としている北京日創電器公司は、かつて売上げは非常に好調であったが、突如、金融危機がやってきた。「去年の10月から、わが社の海外受注は激減し、販売量は急落しました」と総経理の張紅さんは言う。張さんは思い悩んだが、「外貿大集」に出展すると、思いもよらなかったことに、初日に150台以上のヨーグルト製造機がわずか2時間で売り切れた。
もっとうれしかったのは、多くの大手代理業者や小売業者が商談にやってきたことだ。「商談のスケジュールがもうびっしり詰まって、忙しくて仕方がない」と張さんは嬉しい悲鳴をあげている。
消費者の反響が大きかったので、北京はその後三回、「外貿大集」を開催した。輸出商品はどれも売れ行きが好調だったため、終了日を何度も延ばさざるを得なかった。
「外貿大集」は他の省・市からも注目された。山東省や浙江省、陝西省西安市、河北省承徳市などの企業もこの活動に加わった。統計によると、北京で開催された計四回の「外貿大集」の活動には、延べ351社の輸出企業が参加し、売り上げは3063万元に達した。
これをきっかけに、多くの輸出企業が国内販売市場に参入するルートを見つけた。現在、16社の輸出企業が北京の高級デパートやスーパーマーケットチェーンに正式に進出し、国内市場に根づいた。
全国に広がる輸出品販売
北京の「外貿大集」の大成功によって、多くの輸出企業は国内市場の可能性に気づき、さまざまなルートで国内販売市場の拡大をはかるようになった。
北京では輸出企業が不定期に「外貿大集」を開催してきたが、これとは違い上海市の商務部門は、輸出品の国内の販売を奨励し、8月からは上海市の十数の大型デパートやスーパーマーケットが「輸出品専門カウンター」を設けて輸出品を販売するようになった。
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北京のあるショッピングモールで催された「外貿大集」は、多くの買い物客を集めた |
委託加工貿易で有名な広東省は、「広東省製品の全国巡回展」というキャンペーンを打ち出した。それによって今年、マッチングに成功した件数は120以上、内陸部の30以上の大都市に及び、1〜8月で4610億元の投資を誘致できた。「対外貿易のバロメーター」といわれる広州交易会(中国輸出入商品交易会)は今年、初めて「国内買い付けセンター」を設け、国内販売ルートを探すのに苦しんでいる輸出企業のために、「国内販売」の場を提供した。
商務部(省)も「全国外貿大集」と呼ばれる輸出商品の全国巡回展を始めた。南京市で開かれた6日間の展示会には、全国各地の500社近い輸出生産・加工企業が参加した。出展された商品は服飾品、インテリア、鞄・靴など2000種類以上もあった。浙江省金華市で開かれた展示会は、わずか4日間で1200万元の売上げや成約があった。
今年、商務部は、輸出企業が国内販売のルートを広げるために、大規模な国内販売企業と対外貿易企業のマッチング商談会を3回開催し、かなりの成果をあげた。商務部流通産業促進センターの徐敏副主任は「今回の輸出商品巡回展は短期間の展示即売会ではなく、2年にわたって巡回する『外貿大集』である」と言っている。「外貿大集」は今後、大連などの都市で次々と展開されることになっている。
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