危機下で高騰する住宅価格
張春侠=文
米国の不動産業にとって金融危機は悪夢だったが、中国の不動産業にとっては絶好のチャンスであった。2008年、中国の不動産市場は調整期に入っていた。中国の経済学者は、中国の不動産市場の調整周期は3〜5年と見ており、もっとも楽観的に考えても、調整は2009年の年末までと言っていた。しかし、住宅ローンの金利引き下げなどの政府の優遇政策によって中国の不動産業は、ほかの業種より速く回復し、しかも何度も記録を塗りなおした。
7カ月連続90%上昇
「高すぎて買えない。待つしかない」。深圳市でIT関係の仕事をしている楊さんは、あきらめの表情で言った。住宅価格が一月の時点で一平米あたり1万1000元だったのが、9月には2万元に高騰した。楊さんは早く購入しておけばよかったとずっと後悔している。データによれば、深圳市の住宅価格は2月から9月まで7カ月連続して、上昇幅は累計して90%に達している。
住宅価格が高騰したのは深圳市だけではない。三月から、北京、上海などの大都市でも起こり、住宅価格上昇のニュースは絶えることがなかった。住宅市場では再びかつての勢いを取り戻している。
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2009年10月、秋季不動産交易会が広東省深圳市で開幕し、多くの市民でごった返した(新華社) |
しかし、去年、世界的な金融危機の影響を受け、国内の不動産市場は低迷し、住宅価格は大幅に下落した。春節(旧正月)以後、北京や上海、深圳などの住宅市場は、程度の差はあれ、割引やキャンペーンセールを行い、値段を下げたものさえあった。統計によれば、2008年1〜11月までの間、全国の商品住宅販売面積の取引量は同期比で19%下回り、ここ10年で初めての下落となった。2008年年末、国内の不動産市場の取引はさらに下回り、しかもその低迷状態はずっと2009年の初めまで続いた。
不動産取引を刺激し、その発展を促すため、政府の関係部門は相次いで住宅ローンの金利を引き下げ、二軒目の住宅を買う場合の資金貸付の条件をゆるめ、不動産業の営業税の減税など、一連の優遇政策を打ち出した。優遇政策が起爆剤となって、数カ月分も累積していた不動産に対する需要が、一気に高まった。
取引量が右肩上がりになってきたのにつれ、住宅価格も上昇し始め、しかも、ますます収拾がつかない状態になった。主要都市の住宅価格は引き続き上昇し、今年の初め一平米一万元まで下落した北京の南三環路近くの住宅価格は、7月には1万5000元に上がった。統計によれば、9月の全国70の大、中都市の住宅価格は同期比2.8%上昇したという。人々は騰貴した住宅価格の重荷に耐えられず、「自分が住宅を買えば孫まで支払わなければならない」という現象まで現れている。
相次ぐ「地王」の登場
今年に入り、三つの新しい「地王(極めて高い値で競り落とされた建設用地)」が誕生した。
10月20日、南京国土資源機関が土地10カ所総面積110万平方メートルを競売にかけた。ディべロッパー44社が激しい競争を繰り広げ、その中の保利不動産会社が17億9000万元という驚愕の値段で、住宅用地一カ所を競り落とした。結果、その住宅地の地価が1平米6956元となり、去年譲渡した隣の土地と比べ、少なくとも二倍以上上昇した。その日譲渡された土地10カ所の総価格のプレミアム幅は、200%以上に達したのは珍しくなく、400%を超えたものもあった。
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中海不動産が競り落とした上海市普陀区の長風エリアの土地(新華社) |
「世界的な金融危機に襲われたのに、南京の住宅価格は逆に大きく上昇した」。許さんがずっと目をつけていた住宅は、年初めにはまだ一平米一万元前後であったが、現在は1万3、4000元にまで上昇している。「すべて地価のせいだ。『地王』が次々に出現したので、住宅価格も高騰しないわけはない」
中国の人々にとって、「地王」は馴染みのない言葉ではない。しかし2009年、「地王」はマスコミで頻繁に取り上げられるようになった。
9月8日、保利不動産会社は15億9200万元で南京の「地王」を購入し、南京不動産市場の門戸を開いた。その後、中海不動産集団有限公司は70億600万元の高値で上海市普陀区長風エリアの土地を購入した。床面積に換算すれば、一平米2万2409元となり、中国の新たな「地王」となった。その前の「地王」は、記録を3カ月間保っただけにすぎなかった。それ以前に北京や広州にも「地王」は誕生しており、全国の土地市場はどこも、2007年の賑わいを再び盛り返したように見える。
しばしば更新された「地王」の記録は、将来の住宅価格をさらに高めるに違いない。今年の情勢から見れば、「地王」が誕生するたびに引き起こされるもっとも直接的な変化は、「地王」周辺の住宅価格の高騰である。短期間の内に1平米1〜2000元上昇する。
北京では今年の上半期、三つの「地王」の登場で、住宅地地価が1平米1万6000元近くまで上昇した。現在の「地王」である広渠路15号土地周辺の住宅価格は、一平米1万5000元となった。
転換点は現れるのか
住宅価格の上昇と相次ぐ「地王」の誕生につれ、住宅を購入しようとする人々の心理的負担がますます重くなっている。年末までには、不動産取引税、頭金、住宅ローンの利率などの優遇政策は期限を迎える。これらの政策は今後引き続き行われるかどうかは、いまだに誰にも分からない。
一方、関係部門では有利な対策を取っている。住宅・都市農村建設部(省)は、土地の供給を増やし、市場の監督・管理を強め、保障性住宅(低所得者の生活保障を目的とする住宅)建設を推進すると明らかにした。年内には、3000億元を「安居プロジェクト」に投資すると表明した。上海は十月以後、「史上最大規模の土地集中供給」を実施し、12の区にある40の土地をまとめて販売し、それによって「地王」出現の現象を抑えようとしている。
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