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中日経済のいま① 中国社会に溶け こむ日系企業

 

中日関係は紆余曲折を経験しながら、国交正常化から40年を経過して、今年から「天命を知る」までの次の10年に入っていく。中日関係、特に経済関係は、5年、10年先を展望する場合、一時的な挫折を乗り越えて、さらに緊密になっていくことは、中日双方の期待というより、経済のグローバリゼーションの中で必ずやってくる結果だと多くの識者は思っている。

今年6月に創刊60年を迎える本誌は、「還暦」を記念して、今月号から経済における中日交流の現場レポートをお届けする。

陳言 コラムニスト、日本産網CEO、日本企業(中国)研究院執行院長。1960年生まれ、1982年南京大学卒。中日経済関係についての記事、著書多数。

2月の中国北方では、まだ肌寒い日が続くが、春節(旧正月、今年は2月10日)を迎えると、暦の上ではもう春になる。白い雪の中で咲く赤いウメやツバキの花は、これから花が咲き乱れる季節になると予告してくれる。

中国のシリコンバレーといわれる北京・中関村。中国内外から集まる研究者は、技術会議を開催している。研究開発の会議では、それぞれの専門分野の議論以外に話が飛んで、国際政治、外交にまで言及することは、いままであまりなかった。特に中日国交正常化から40年だった昨年の終わりごろ、両国の間に祝うムードはなく、双方の技術者も一様に国際関係の話題を避けようとしていた。

日立(中国)研究開発有限公司の田辺史朗総経理は席から立ち上がって話をした。いつもなら総経理たる人は、最新のIT研究関連について淡々とコメントしていけばいいが、田辺総経理は、あえて昨年の両国関係に触れて単刀直入に語った。

「日立研究開発は、不退転の決意でこれからも中国でしっかりと仕事をしていく」

2、3の拍手を合図に、満場から盛大な拍手が湧き上がった。その拍手からみんなの心のなかでは中日の経済関係をおろそかにしてはいけないと思っていることを田辺総経理は感じたそうだ。

国交正常化してから40年、中国が改革開放政策を取ってからでも30数年経っている。この間、日本企業は中国に進出し、メード・イン・チャイナの製品も日本に流れていった。経済交流があるからこそ双方の国民生活は豊かになった。昨年秋以降、中国でビジネスをしていく空気は、北京の天候と同様、徐々に冷え込んできたが、心温まる言葉、堅い決意を技術者たちが欲しがっていると感じていた田辺総経理のあいさつに対する反応も熱烈だった。

世界経済でウエート増す

「不退転の決意で、中国で仕事をする」と語る日立(中国)研究開発有限公司の田辺史朗総経理(写真・陳言)
中国は2009年から世界貿易で最大の国になり、それ以降この状況を維持している。日本も1970年代から世界第3位か第4位の貿易大国の地位を守り、今後数年のうちに大きく変化し、後退することはあまり考えられない。中日ともに世界経済に占めるウエートが大きく、中日経済の変化は、世界貿易全体に影響を与えると思われる。

昨年9月から中日の政治関係が急速に変化した。これに対して、三菱商事(中国)商業有限公司の副社長・中国総代表の矢野雅英氏は「経済規模では中日はそれぞれ世界第2位と第3位の地位にある。今、ヨーロッパ、米国に元気がなく、世界経済は弱体化している。さらに日中経済も停滞してしまうと、世界に新しいリスクを加えてしまう」と警戒する。

中日の経済関係に対して正しい理解を持たなければならない。両国の経済人、研究者は、世界経済の中の中日、中国経済における日本、日本経済における中国の役割など、具体的なデータを出し合い、お互いにとっての重要性を強調した。

世界GDP(国内総生産)から見ると、2011年に米国は21.7%を占め、中国(10.5%)と日本(8.4%)を合わせた18.9%よりも大きかったが、5年後には、中日の合計は米国を上回ると思われている。さらに2020年ごろ中国一国の経済規模も米国を超えていくと中国の専門家は見ている。

世界経済をけん引していく力は、近年東アジアに移っている。欧米先進国の経済は1975年ごろから成熟化したが、日本は1990年代まで戦後の成長を継続させ、その後も世界第2位の地位を長く維持していた。これは中国という大きい隣国があるからできたことだった。また中国が1978年から改革開放政策を実施して経済の成功を収めた要因の一つは、日本から技術、資金を導入できたからである。中日双方の経済成長は、この互恵関係から生まれ、今後も継続できる。世界にはこれほど互恵から来る強い経済成長はなく、元気で順調な中日経済交流は、世界に恩恵を与える。

サステイナブル経済

1960年代に日本で盛り上がった自動車ブームが、40年ほど遅れて今中国にやってきている。

昨年11月の広州モーターショーは例年にましてにぎやかで、会場は殺到した観客でごった返していた。数カ月前に起きた日本ブランド車に対する打ち壊し事件は遠ざかり、今では何の変わりもなく注目を集めている。

「9月まで、われわれの販売は非常に順調だった。9月以降、少しは影響を受けたが、これからは好転していき、中国市場は依然としてたいへん明るいと思っている」と、昨年11月23日、東風日産乗用車販売の担当者・文飛氏は広州モーターショーで語っていた。

昨年、開かれた広州モーターショーで、トヨタはDear(中国語で親愛の「親」)と銘打ったコンセプトカーを発表、また在中国の企業名を「豊田中国」から「中国豊田」に変更し、現地化を強調
近代都市では自動車が風景の不可欠な要素となっている。しかし中国では、2011年の自動車普及率が1000人に58台で、日本の593台に比べて十分の一以下だった。日本の経験からすると、自動車がここで売れないことはありえない。

問題はブランドである。日本ブランドの車は、中国ではとても高い評価を得ており、ブランド・イメージは、中日の外交問題によって影響を受けたことはない。

既存の都市ではこれから車がどんどん売れていき、新しく生まれてくる都市でも同様になるだろう。中国では都市に住む人口は、2010年現在、45%(世界銀行の2012年データ)とされている。毎年人口の1%を都市部に移住させるだけでも1400万人にのぼる。これはオランダの人口に匹敵し、また広州市の人口に当たる。言い換えれば、ヨーロッパの一国か中国の近代的な大都会に相当する都市が毎年一個ずつ中国に現れてくる勘定だ。しかもすべて順調に移住したとして、2020年の都市人口はやっと55%になる。

中国では、昨年11月ごろから工業化、情報化、都市化、農業現代化が提起されている。サステイナブル(持続可能な)経済は、都市化ではなく、さらにその他の要素も加えることによって実現していく。これからの10年に、少なくとも1億4000万人の人口が都市部に移り住み、日本と同じぐらいの人口規模の経済が中国から生まれてくる。社会インフラ技術、IT技術、新農法などはこれから中国で大きな市場を見つけられると思われる。

表では広州モーターショーのように、消費者は自動車に関心を寄せる。その背後には、都市部での道路などのインフラ建設、都市間の交通システム、資源リサイクルなどがある。その一つひとつを完成する工事などによって、中国経済を持続的に発展させていく。

中国の経済成長システムは、都市化などで現れたようにサステイナブル要因が変化しており、日系企業に対しても新たな空間と要望を提出している。

日本ブランドは現地化へ

中国での新しい経済潮流に乗り遅れまいと日系企業は、現在大きく脱皮している。

昨年7月、中国撮影家協会主催の「夏休み撮影教室」で、キャノンから提供されたデジタルカメラを手に真剣な面持ちで指導を受ける小学生(新華社)
いままでは経営方式を含む既存の技術を中国に持ってくるだけでも、現地では革新的な意味を持ち、生産された製品が人気を集め、市場も自ら拡大していった。しかし、そのような時代はもはや終わり、現地化の意味が重要となってきた。

「中国での研究開発、生産体制を強めて、中国の顧客により多くの先進技術を持ち、新しい価値に満ちた製品を提供していく」と、ホンダ中国本部長の倉石誠司氏は広州で語る。すでにホンダからは中国の現地で開発し、生産された「理念」という車を広州モーターショーで展示し、中国消費者の反応を探っている。

「中国発の新製品を開発していき、また中国におけるエコシティーに対する概念を取り入れて、新しいエコシティーをITの側面から提案する」と日立(中国)研究開発有限公司の田辺総経理は、日本にいる時と違う研究開発の方向性を示す。ここ1、2年に研究開発の現地スタッフを多く採用して会社の実力を高めている。中国市場に合わせて、コンシューマー(消費者)製品、社会インフラにおける新しいIT技術を日立研究開発公司で開発している。

キャノン(中国)有限公司の小沢秀樹総経理は、「われわれの親会社は日本企業だが、キャノン(中国)自身は、中国で生まれ中国の消費者、ひいては世界の消費者のためにものを作る会社だ」と、グローバル企業であり、同時に中国企業であることを強調している。小沢氏が総経理になってから、「CANON」のコマーシャルには中国語表記の「佳能」が付くようになり、一般消費者に中国語で覚えてもらい、また中国が自然災害などに遭遇した際、多くのチャリティー活動に参加している。

三菱商事中国における社会貢献活動は活発で、社員も積極的に参加している。昨年3月、矢野総代表は、全国の場所からの40人あまりの社員を率いて、貴州での植林ボランティア活動に参加した。「植林だけでなく、学術研究、文化活動の支援など、できる範囲内で地元の社会貢献活動を行っている」と矢野総代表は話す。

「日本ブランドでメード・イン・チャイナ」、さらに研究開発も中国で行う。日本企業は中国で脱皮して新しい形態でこれから天命を目指していくだろう。

 

人民中国インターネット版 2013年2月18日

 

 

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