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【ハロー・ジャパン】② ソニーが輝きを取り戻す道はどこに?

 

文=南冥一鯊southsharker

海外メディアの報道によれば、ソニーは自社株式の取引量が低迷していることから、ロンドン証券取引所から撤退することを決めた。ロンドンでの上場維持には毎年1000万円以上の経費がかかっており、撤退はコスト削減につながるという。

これは屈辱的な決定だ。かつて無数の人々から慕われた家電の巨頭、スター級企業が、なんとわずか1000万円のコスト削減のために上場廃止を選ぶなど、すすり泣きしたくなる出来事だ。パソコン事業を売却し、テレビ事業を分社化した後、現在のソニーはモバイルとゲーム事業に期待をかけている。しかし、将来には依然、極めて大きな不確定要素が満ちている。では、将来ソニーがかつての輝きを取り戻す道はどこにあるのか?

ソニー没落の謎

ソニー没落の原因は非常に複雑だ。まず、頼みの綱だったハードウェア製品が韓国と中国のメーカーの強力な挑戦を受けた。これがソニー没落の背景だ。

パソコン分野では、レノボは強大なサプライチェーン管理能力とIBMのパソコン事業買収によって、技術とブランドを一層強化し、一気に世界規模のトップ企業になった。携帯電話分野では、ファーウェイや中興、レノボなどの新勢力が突然現われ、コスト的な優位を生かすとともに、技術研究とインターネットについての思想を強化してきた。彼らはもう日系メーカーを追い出し、現在はサムソンに全面的に戦いを挑んでいる。こうした背景の下、ハード製造能力でソニーの没落は避けられなかった。

次に、ソニーの没落は日系メーカー没落の縮図だということだ。これは日本企業と日本人の特徴と無関係ではない。誰もが知るように、日本人は特に細かさを追い求め、真剣に仕事をするが、まさにこの点によって多くの日本企業は細部の完ぺきさを追求し過ぎ、業界の大勢を理解することを軽んじ、モデルチェンジすべきタイミングを逃してしまう。中国にはこんな言葉がある。「車を引っ張ることに没頭しなければいけないが、それ以上に顔を上げて道を見なければいけない。なぜなら、車を引いて道を見るのを忘れたら、おのずと道を間違えてしまうから」

携帯電話分野は非常に典型的な例だ。ソニー・エリクソンはとても早くから携帯電話事業を始めたし、かつてはウオークマンとオーディオビジュアル(AV)分野の優位によって、携帯電話分野で輝きを見せた。しかし、2007年のアップルのタッチパネル型スマートフォンも、グーグルの携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」のブレークも、ともにソニーとは関係がなかった。特に、多くの携帯電話メーカーがハードとソフトを組み合わせたエコシステムに向かっている時、ソニーは依然としてハード製造で必死にもがき続け、没落が早くから決定づけられていた。

ソニーにはネットについての思想が欠けていて、その大きな潮流の下でタイミングよくモデルチェンジできなかったという人もいる。実際、ネットの思想の本質はユーザーのニーズに対する関心だ。この点、ソニーは確かにどんどんひどくなっていた。ソニーは巨大になるにつれ、消費者からますます離れていった。特に、強力なリーダーシップのある社風がいっそう盲目的な自信を指導者に持たせたため、製造業の全戦線で敗退してしまったのは十分に理解できる。

ソニーの未来はどこに?

家電製品でのソニーの全面的な退場はもう大勢になっている。ソニーの未来はB2B(企業間取引)分野にあるのかもしれない。その未来は部品メーカーになることだろう。

家電製品でのかつてのソニーの輝きを考えれば、同様にB2Bでの実力は遜色ない。例えばバッテリーでは、ソニーはノートパソコンやスマートフォンで際立った実力を備えている。昨年末、バッテリー事業の売却を求める社内の意見に対し、最終的にはリチウム電池部門は売却しないと決め、バッテリー事業の力を借りた復活実現に希望を託した。

携帯電話用カメラの市場では、ソニーはAV分野での優位により、現在では大部分のアンドロイド製品のフラッグシップモデルに部品を供給している。iPhoneまでもが第5世代からソニーのカメラを採用するようになった。まもなく発表されるiPhone6もソニーのカメラセンサーExmor IMX220を使うと言われており、その実力は簡単に見て取れる。ソニーは先日、「自分撮り」の流行によるフロントカメラ用センサーの需要激増に対応するため、約357億円を投資し、スマートフォンとタブレット端末向け製品の生産能力を増強すると発表した。

家電製品で勝つすべはないが、ソニーはB2B事業に進出しても差し支えはない。バッテリーであれAVであれ、あるいはそのソフトウェア、コンテンツなどの分野でもそうだ。めまぐるしく変化する消費者のニーズの影響を受ける必要はなく、B2B事業はより安定している。ただ少しの大型顧客をしっかり引きつけておけばよい。ソニーは引き続き技術革新の優位を発揮できるし、特に基礎研究でその強みをより生かせる。

ここで断言したことは実際、ほかの日系企業では進められており、日立や東芝などはB2C(企業の一般消費者向け事業)からB2Bへの転換をもう終えている。日立を例に取ると、パソコンの生産停止からハードディスクドライブ事業の売却まで、2007年から徐々に家電事業をやめている。その後、2012年9月には薄型テレビの国内生産を終了した。現在の日立は基本的にB2B企業にモデルチェンジし、クラウドコンピューティングやスマートシティ、重機事業にピントを合わせている。業績もまずまずであるし、どんな価格設定でレッドオーシャン(競争の激しい市場)で戦うべきか心配する必要もない。ソニーはこうした方面で日立に本当に学ぶべきだ。

 

人民中国インターネット版 2014年9月19日

 

 

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