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中日関係に新局面を開こう

北京対外経済貿易大学国際経済倫理研究センター 顧問委員会理事長 劉徳冰 氏

聞き手=王衆一

 昨年11月に中日首脳会談が実現し、両国関係は新たな年を迎え、ここ数年のぎくしゃくした局面からの転換が期待されている。この好機にどうすれば両国関係は正常な軌道に乗るのか?このほど、国際貿易業務に30年以上従事してこられた劉徳冰氏にインタビューし、中国が本腰を入れて取り組んでいる改革開放の深化と中日協力推進の関連性、役割について、長年の実務経験を生かして、国際経済倫理を研究されている立場から語っていただいた。

――改革開放事業に深く関わって来られましたが、当面の改革の全面深化の新段階をどのように見ておられますか?また日本はどのように関わるべきでしょうか?

 劉徳冰氏 改革の全面深化の提起は時宜を得ていました。中国は36年にわたる改革開放を経て、社会・経済の面で大きな進歩を遂げてきたと同時に、多方面の問題に虚心坦懐に取り組んできました。中国が改革をさらに前進させて行くためには、新たな大きな推進力を注入し、前進の方向を明確にしなければなりません。

 まず、改革の全面深化はさらに高い位置に立っており、中国の歴史的規範、近現代史の得失、成功と失敗、新中国の発展の歴史をじっくり見つめ、改革開放から得た経験と教訓を生かし、中国の未来のために、発展思想を構築しなければなりません。

 次に、改革の全面深化は過去数十年来の中国社会の矛盾、例えば貧富の格差、地域格差、環境悪化、汚職・腐敗などの矛盾を着実に解決していくことです。

 第3に、改革の全面深化は一つの分野を対象にしたものではなく、一つの総合的なプロジェクトです。早期の改革開放は各方面の基礎が脆弱でしたから、西洋医学の手法で、頭が痛ければ頭痛を治療し、脚が痛ければ脚を治療するといったように問題ごとに一つ一つ解決してきました。現在は総合的な国力が高まり、中国医学の手法のように、中国の全体的な発展に努めています。

 この他、中国は自らの発展を世界に溶け込ませ、国際市場、国内市場の双方と協調しています。シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロードという「1帯1路」がその良い例です。そこでは沿線各国が自主的に参加し、団結して発展を目指すことを主張し、中国の「公平、協力、相互利益、ウインウイン」という国際的な発展の理念を発揮しています。私は日本が「1帯1路」に積極的に参加し、アジア自由貿易地域構想を推進するよう願っています。

――中国の30年以上にわたる改革開放の成功は世界にどのような有益なヒントを与えたのでしょうか?

 劉 人類社会の発展を見ると、1776年から西欧の産業革命が始まり、市場経済の理論体系が実践に移され、世界経済の発展を促し、純粋自由経済を標榜する「ワシントン・コンセンサス」を生み出しました。ところが今日、西欧の経済理論に世界を困惑させる問題が起き始め、一連の経済危機を引き起こしました。

 一方、中国経済発展の成功体験は世界に一つの新しいモデルを示しました。これが「北京コンセンサス」ですね。これは各国は各国独自の優れた伝統文化と実情に基づいて、計画的に自らに合った発展の道を歩むということです。この理論は次第に世界的に受け入れられていますよ。

――日本は最も早く中国の改革開放に参加した国の一つですが、中国の改革開放のプロセスで中日協力はどのような役割を果たしましたか?

 劉 改革開放の初期、中国企業は設備、製造技術、マネジメントのレベル、労働者の質のどれをとっても遅れていましたので、ハードからソフトに至るまで全て外国から導入しなければなりませんでした。しかし、長期的な視点で考えると、中国企業が強大になろうとすれば、輸入に頼ってはならず、自ら能力を向上させなければなりません。そこでわれわれが考え出したのは「技術と貿易の結合」という手法でした。設備を購入する代わりに、無償で技術指導を受け、次第に国産化率を高め、最終的に民族産業を実現しました。

 その過程で、日本企業とわれわれとの協力関係が最も良かった。なぜなら、われわれは彼らとの腹を割った交流を通じて、彼らに中国産業の確立には長い道のりが待ち受けているが、独立自主の実現は中国産業が発展するために通らなければならない道であることをよく知ってもらったからです。そこで、彼らが中国と事業を展開しようとすれば、長期的な視点に立脚しなければなりませんでした。中国は彼らの当時の現有技術はもちろん、彼らがそれから作り出すハイテクも必要でした。

 事実が証明しているように、「技術と貿易の結合」は日本企業に長期的、安定的な中国市場を提供しただけでなく、中国企業と相互信頼による協力関係を築きました。現在までに、タダノ、加藤産業、コマツ、日立などの日本企業は中国企業を買収しました。一方、中国企業はその過程で、日本の生産技術、営業、マネジメント理念を学び、中国産業発展の基礎を固めました。これこそ両国企業にとってウインウインではありませんか?

 われわれは日本人が中国の改革開放事業の発展に果たしてくれた重要な役割を認識しなければなりません。日本の政府開発援助(ODA)による対中円借款は改革開放初期の建設資金不足を解決しただけでなく、首都空港第2ターミナルビル、北京の地下鉄1号線、中日友好病院、上海浦東空港などのインフラ整備に投入され、これらの施設は今でも使用されていますよ。一方、中国は日本企業に広大な市場と投資環境を提供し、日本経済の安定に寄与しました。このように両国の協力は共通の利益をもたらしているのです。

――現在、中国の発展は新たな歴史的な段階に入っていますが、中日協力にはどのような変化が現れていますか?

 劉 北京APECで中日両国政府は「四つの原則的共通認識」に達しましたが、これはここ数年の両国間の矛盾解消に希望をもたらしたと思います。今年は中日関係が前進すると信じています。現在、好ましい兆候が出てきています。例えば、2006年に始まった中日省エネルギー・環境総合フォーラムは2012年から中断していましたが、昨年12月28日、北京で再開されました。中日間のこの他の交流も少しずつ再開され、あるいは新規に行われ始めています。これから中日両国が世界第2、第3の経済大国として展開する経済、貿易協力は、互恵関係維持を基礎に、東アジア貿易の繁栄、世界経済発展に向けたものでなければなりませんね。

――国際経済倫理の研究をされておられますが、以前の実務経験は研究にどのように役立っていますか?また経済倫理は経済の実践面でどのような役割がありますか?

 劉 過去30年間の国際貿易の実務では、数多くの成功例と多くの失敗から得た教訓があります。中国が世界と協力する中で起きる問題の原因は何か、ずっと考え続けています。根本的な原因は人と人との相互交流と理解の基礎が脆弱なことにあると思います。交流の機会が足りず、意思の疎通が足りなくて、どうして信頼関係が生まれますか?私が経済倫理の仕事をしているのは、中国の優れた伝統文化と改革開放の実践経験の力を借り、日本を含むその他の国々が持っている社会学、倫理学の精髄を中国企業に広め、彼らが国際的な要請にかなう現代企業文化を育むお手伝いをしたいからです。

 目下、中国が対外開放を拡大している背景下で、資本は海外に進出し始めています。中国企業が「海外発展」する際に、尊敬と畏敬の心を忘れてはなりません。われわれの事業を尊敬し、相手国とその国民、彼らの文化的伝統、宗教的習俗を尊敬しなければなりません。畏敬というのは、決まりは守らなければならず、環境を破壊してはいけない、ということです。中国の古い言葉に「登高必自卑 行遠必自謙」という言葉があります。人は高い所に登れば自分がいかに小さい存在なのかに気付き、遠くへ行けば行くほど、謙虚になり慎み深くなるに違いない、という意味です。中国企業が国際的にさらに遠くへ、さらなる高みに登ろうとすれば、伝統文化の有益な経験を吸収し、謙虚な気持で事業に取り組み、尊敬の態度で協力パートナーと向き合うことだと思います。

 

 

劉徳冰(Liu Debing)

1954年、江蘇省生まれ。1979年、北京対外貿易学院(当時)対外貿易外国語専攻を卒業。中国機械輸出入総公司駐独総代表兼欧州機械公司総経理、中国機械輸出入総公司副総裁、中国技術輸出入総公司副総裁、中国通用技術(集団)持株有限公司中国技術国際入札公司総経理を歴任。現在、北京対外経済貿易大学国際経済倫理研究センター顧問委員会理事長

 

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