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人騒がせな「外資撤退説」世界一の投資受け入れを見落とす

文=陳言

最近、「外資企業の中国撤退が加速している」という説が一部メディアで流されている。幾つかの事実を列挙しているが、全体的に言えば、これらの報道はまさに「群盲象を{な}撫でる」であり、物事の一端を見ただけで全体を当て推量しているという特徴が目立ち、とても厳密な分析とは言えない。

統計から見ると、昨年の中国国内総生産(GDP)成長率は7・4%であり、減速したとは言え、米国の2・4%、欧州連合(EU)の0・8%、さらに昨年末に公表された日本の0・2%(実質マイナス成長)よりはるかに高かった。受け入れた外国投資から見ても、昨年は中国が米国を上回り、世界一になった。外資撤退説は一部企業の戦略転換と中国全体の状況をバランスよく見ていない偏った見方と言わざるを得ない。

シチズンなどが工場を閉鎖

報道によれば、春節(旧正月)直前に、日本の著名な精密電子機器メーカー・シチズン時計の在中国生産拠点である西鉄城(シチズン)精密(広州)有限公司が工場を閉鎖し、従業員全員を解雇すると発表した。発表から30分後に、1000人余の従業員が労働契約を解除され、指定の期日までに退去するよう指示された。同じ時期に、マイクロソフト社もノキア東莞工場と北京工場を閉鎖し、生産設備をベトナム工場へ移転させる計画を明らかにした。この両工場の閉鎖によって、同社は9000人の従業員を削減する。

また、一部メディアはパナソニック、ダイキン工業、シャープ、TDKなど幾つかの著名な日本企業も製造拠点を日本本土に戻す計画を推進していると報道した。ユニクロ、ナイキ、フォックスコン、船井電機、クラリオン、サムスンなどの世界的な企業も続々と東南アジアとインドに新しい工場を建設し、中国から撤退する歩調を速めていると報じた。

しかし、ここから、「外資企業が中国撤退を加速している」という結論を導くのは、間違いなく「木を見て森を見ない」である。事実、特にマクロ的な事実は、多くの断片をつなぎ合わせて形成されるが、しっかりとした全体的な観察とデータによる分析に基づいて描かれたものではなく、幾つかの個別的な例に依拠して導かれた結論は、客観的とは言い難い。

ここで、国内と国外の二つのデータによって、「外資企業の撤退が加速している」という説がどこから生まれたか検証してみよう。

対外投資と受け入れが均衡

中国商務部(商務省)の情報によれば、昨年、中国が実際に使用した外資は1195億6000万㌦、前年同期比1・7%増で、しかも対外投資と受け入れ外資が初めて均衡に近づき、1項目当たりの契約金額は昨年比14%増となった。

国連貿易開発会議(UNCATAD)のデータによれば、世界経済の不景気、政策の不確定性と地政学的なリスクなどの影響を受け、昨年の世界の外国直接投資は前年比8%減少し、約1兆2600億㌦まで下落した。しかし、昨年、中国が導入した外国直接投資は約1280億㌦で、前年比約3%増となり、外国直接投資を最も多く導入した国となった。

世界的に見て、外資を最も多く受け入れた国・地域は中国であり、2位は香港、3位は米国だった。香港にはそれほど重要な産業あるとは言えず、投資の大部分は香港経由で大陸に入っている。大陸部と香港地域の受け入れ投資額を合わせると中国に対する投資額は米国の倍以上になる。

しかし、多くの経済メディアはシチズンなどの撤回に目を奪われ、世界全体の投資がどこに向かっているかという事実を見落としている。

国内の産業構造は大変化中

外資流出が加速しているという説は成り立たないが、国内の産業構造には確かに大きな変化が起きている。

外資を導入している中国投資業界の変化から言えば、サービス業が製造業を上回っている。昨年にサービス業に投じられた外資は総額の約56%を占め、うち代理販売、輸送サービス業に実際に使用された外資の規模が比較的大きく、製造業が受け入れた外資は下降し、総額に占める比重も下がり続けている。

次に、製造業について言えば、賃金と生産コストが絶えず上昇しているため、一部の労働集約型ローエンド製造業の外資企業は生産拠点を低所得国へ移しているが、中国のハイテク産業、ハイエンド製造業に対する外資は減っているというより、むしろ増えつつあり、外資を引き付ける製造業の質の向上を示している。

断片的な分散した情報でも、インターネットで検索してみると、多くの企業が戦略を見直しており、傘下企業の転出もあるが、転入もあるということが分かる。例えば、中国の広大な自動車市場は外資を引き付け、内陸部に自動車工場を建設し、インテル、サムスンなどの企業も中国に数十億㌦を投資し、成都、西安にハイエンドテスト技術やチップ設計などのハイテク工場を建設し、医薬業界の巨頭である米ジョンソン&ジョンソンは上海にアジア太平洋イノベーション・センターを設立し、傘下にシンガポール、オーストラリア、日本の三つの研究開発部などを収めている。

今後は、製造関連の外資企業の撤退も出てくると思われる。外資企業だけでなく、中国の縫製企業などもこれから海外移転を選択するだろう。産業構造の改革によって一部の企業が中国から離れること自体は、自然の成り行きである。人騒がせな記事は新聞雑誌の販売に寄与するかもしれないが、それ以上の何ものでもないだろう。

 

人民中国インターネット版 2015年3月12日

 

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