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盧溝橋で中日和解を考える 連携してアジアのインフラ整備

 

文=ジャーナリスト・陳言

何年ぶりに盧溝橋を見に行っただろうか。川にはほとんど水はなく、草も低い。橋を渡って、西に向かって車をしばらく走らせ、山の麓まで続くトウモロコシ畑は、緑の海となっている。道路の両側でのんびりと草をはむ羊の大群に目をやり、車の速度を落とし、その後また、山に向かってひたすら走る。

78年前の1937年7月7日、北京は同じく暑くて、盧溝橋あたりでは水を飲もうと思っても井戸以外のところにはなかっただろう。

今年の7月7日、習近平党総書記(国家主席)を筆頭に政治局常務委員7人全員がここ盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館を参観したという報道を読んだ。記念館の中には、小泉純一郎元首相が同記念館を訪れた時の写真があったが、今も掲げているだろうか。

今年7月、北京・盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館を見学する中国の青少年(新華社)

9月上旬に安倍晋三首相が訪中するという日本の報道を読んで、安倍首相も小泉元首相と同様、この記念館を訪れるだろうかと思った。戦争からすでに70年経ち、戦争で倒れた兵士、巻き込まれて死んだ一般市民をどんな形で共に追悼し、二度と戦争をしないことを誓い、和解し、さらにこの和解をもとに、中国と日本は両国だけでなく、アジア、世界の平和を築いていくために、共同でなすべきことはたくさんあるのではないかとも思った。しかし、現実の国際関係の中では必ずしもそうなっているわけではない。

敵がい心を笑い飛ばそう

6月30日、北京のあるタブロイド紙は、日本の週刊誌報道を引用して日本の政治家がメディア各社のキャップとの会食で「酔って本音を吐き」「安保法制は南シナ海の中国が相手なの。だから、やる(法案を通す)と言ったらやる」「米国と共に南シナ海の中国をたたく必要がある」と述べたことを記事にした。

10年前だったら、中国メディアは一斉に追随報道をしただろうが、今回は、世論だけでなく、中国政府もあまり関心を寄せなかった。政府の反応といえば、外交部スポークスマンが、記者の質問に対して冷ややかな言葉で答えたのみであり、その言葉も特に深刻なものではなく、単に形式的なコメントをしたという感じだった。

中国のある評論家は、「日本の新安保法案は疑いなく中国を意識したものであり、少なくとも日本が中国を仮想敵国の一つとしてとらえていることは高校生ですら理解している」と語り、日本の政治家が酔って吐いた本音にはいささかも驚いていない。新安保法案と新たな対中国戦争の準備とは違うと思っている。

同じく中国ではだれかれがインターネットで日本に対して過激な発言をし、またテレビドラマであまりにも奇想天外な抗日シーンがあっても、一昔前ならば、それなりの「いいね!」はもらえたものだが、今はそうではなくなっている。敵がい心をあおるナショナリズムに対しては無視するか、笑い飛ばす気持ちを中日ともに持つべきだと思われる。

「爆買い」がヒントでは?

78年前の中国と日本の間に、年間10万人の行き来があっただろうか。今は年間500万人を下らない。日本も中国観光客をノービザにしたら、年間1000万人の中国人が観光に行くかもしれない。ビジネスの面でも、中国と日本は、互いに世界では最も緊密な貿易国になっている。

しかし、相手国に対する敵がい心を政治家やメディアがあおっていることは、事実であり、企業への影響も少なくない。統計的に日本企業が潮のように中国から撤退したわけではないが、撤退の事例が出ると、メディアは集中的に報道する。

『北京商報』は7月9日、ダイキンが中国における家庭用空調事業をすでに日本本土に引き上げてしまったことを取り上げ、今年初めに発表された『中国空調市場年鑑』のデータを引用し、パナソニック、ダイキン、シャープなどの外資系空調の中国市場におけるシェアは全部合わせても6%に満たず、中国では既に周辺ブランドだと述べた。

一方、本当に日本商品は魅力がなくなっただろうか。日本での「爆買い」は中国、日本で取り上げられている。中国のネットメディアが推奨している「日本に行ったら必ず買うべき家庭常備薬」「神薬」は処方せん不要の常備薬だが、訪日中国人観光客の「爆買い」によって、小林製薬の第2四半期の売上高は前年同時期の5倍超だったと中国では報じられている。

さらに東京などの大都市へ出かけて投資目的に日本の不動産を買う現象も起きている。日本円が22年間で最安値の水準にまで下がり、2020年の東京五輪を好材料とし、不動産価格が高騰する見込みがあり、ついに不動産にまで手を出しているのが実情だ。しかし、本当にこのような購買行動がいいかどうかについては、頭をひねらざる得ない。

日本企業にとっては中国市場の開拓は、絶えず消費者ニーズに合う商品を開発し、それを市場に送り込むべきだが、すでに中国地元企業とは競争できなくなり、本国に撤退すること自体は理解できないことではない。ただし、中国の消費者が日本まで追っかけて「爆買い」する現象を見て、中国でのものづくりを考え直すヒントにしようという日本企業はあまり見かけないことが不思議である。「爆買い」は一過性の現象と見ているのか、それとも中国市場を根から信頼しないのかは不明であるが、戦後70年経っても、日本の中国理解、また中国の日本認識は、まだこの程度なのか。さらに戦争について言うと、和解を実現したとは事実だろうか。

一国の力では達成できない

安倍首相は7月4日、3年以内にカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムのメコン川流域5カ国に対して7500億円の資金援助を行う意向を表明し、インフラ設備の整備など政府主導のプロジェクトに使用される。日本メディアの一部は、安倍首相による今回の援助の目的は中国をけん制することにあると率直に伝えている。

中国もアジアでの投資を速めている。7月11日、中国が投資した車両製造基地は年間100両の新幹線型の車両を新造し、さらに電気機関車、軽軌道用車両など全系列の軌道交通関連の装備を製造する能力を持っている。中国・タイ協同鉄道プロジェクトについての交渉が進展し、フィージビリティースタディー(FS)、融資枠組み方案、人員の研修方案などの問題に関し一連の共通認識および成果を得たと表明した。

日本のメディアは安倍首相の行動を何でも中国をけん制していると好んで説明する。毎年8000万㌦のニーズがあるアジアのインフラ市場では、中国か日本の一国の力でそれをやり遂げることはできるはずがない。

中日は、アジアでともに新しいインフラ市場を開発していくことはできないことだろうか。第三国で一緒に困難に直面し、汗を流す。共通の目標に向かって努力し、またそれによって中日間の和解も進展する。盧溝橋だけでなく、中日にはもう戦争はあり得ない。それを信じて、和解を進めるべきである。

 

人民中国インターネット版 2015年7月31日

 

 

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