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第三国での協力は可能か

現代国際関係研究院日本研究所所長 劉軍紅

 中日双方の第三国での協力展開について語るならば、私は分けて考えるべき問題があると思う。それは、政府部門が主導する第三国協力であるか、それとも経済のグローバル化という条件の下で考える企業間の協力であるか、ということだ。

 日本企業の中東における協力ケースから見てみると、日本企業は新技術を使用した発電所建設あるいは海水淡水化処理プロジェクトを落札した後、世界的範囲でこのプロジェクトにふさわしい他国企業を探して、協力してこのプロジェクトを完成させようとするだろう。多くの国の部品を使って組み立てる日本車のように。たとえモンゴルの石炭プロジェクトの入札であっても、競うのはやはり中日の企業連合ばかりだ。これは中日企業が自らの戦略目標のために、国際市場の競争において第三国協力を進めることが可能であることを裏付けている。

 しかし、政府の側から見れば、状況はまったく逆である。日本の外務省の政府開発援助(ODA)と中国商務部の対外経済援助が、アフリカで第三国協力を実現することは、かなり難しいことだ。まず、中日両国がこの地域で共通の利益を持つか否かをはっきりさせねばならず、かつこの利益が互いに巨額の投資を引き出すことができるほど大きくなければならない。

 長い間、ODAは日本政府の重要な外交手段であった。ODAと共に協力を行うことは日本の外交戦略に接触することに等しい。こうして見れば、日本は競争関係にある中国と協力していないのは当然で、米国とも協力していない。

 一部の日本の研究者は現在、中日両国がタイ南部、マレー半島最狭部のクラ地峡に運河を開削するよう提案している。こうすることで、中日の貨物船はマラッカ海峡を避けることができ、欧州、アフリカへの距離を大幅に短縮できるという。素晴らしい構想だが、これは米国のインド・太平洋戦略にも関係してくる。

 第2次世界大戦後の70余年来、米国は北部太平洋が安全であることが分かった上で、その力を南下・西進させ、太平洋とインド洋を通ってアフリカ東海岸に直接到達しようとしている。これがいわゆるインド・太平洋戦略である。東南アジアは米国のこの戦略において必ず押さえておくべき場所で、カギを握る中継地点である。この辺りは米国の地政戦略の重要地点であるのに、中日協力による運河開削を許して、その戦略的利益を弱めることができるだろうか。その答えは1990年代に起きたパナマ戦争を見れば明らかだろう。当時、冷戦が終結していたため、パナマ運河の米国における重要性は上昇しており、米国はパナマ運河を支配する必要があった。後に第2パナマ運河が開通しようとしていた時、米国にはさらに新たな支配の動きが現れ、「パナマ文書事件」を起こしてそれを阻止しようとしたのである。

 マラッカに行ってみれば分かるが、マラッカ海峡はあまりにも狭く、沿岸の港にはどこも運送を待つコンテナが山と積まれている。このため、日本はここに海上経済圏と陸上経済圏を建設し、海と陸を連絡させ、その基地とすることを提案している。その中でもカギとなるのがインフラ建設で、日本はこのためにインフラ輸出を提案している。

 また、中国の「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」構想は東南アジアで日本のインフラ輸出戦略すなわち地政学的戦略と交わる。これは利益だけでなく、摩擦も生むかもしれない。さらに大きな視点から見ると、中国、日本、米国、東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリアのそれぞれの利益が全てここで交わるため、いかに相互関係をうまく協調してゆくかは簡単なことではない。これが南海方面でいつでも多くの問題が起こっているように感じる原因だろう。

 中日関係を把握するにはグローバルな視野と時代感覚が必要である。もしわれわれがy=f(x)という計算式で中日関係を計るなら、中日関係yに影響する変量xがあまりにも多すぎる。中日の第三国における協力だけでも、変量の多元化が見られ、それはx1からxnまでずらりと並ぶだろう。中には中日自身の要素だけでなく、それ以外の要素もある。われわれが中日関係の好転をいかに願っていても、実現しようとするといつでもとても難しいのは、まさにこうした原因からである。このため、中日関係を考えるときに、さらに多くのことを考える必要があるのだ。

 

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