東京通信
相次ぐ「浮上」 @米ハワイのオアフ島沖で、愛媛県立宇和島水産高校の実習船が、急浮上した米原子力潜水艦に衝突され、沈没した。(2月10日) こうして見ると、少なくはない。政治や科学、技術、社会問題、体育、文化などさまざまな分野にわたる記事に、「浮上」「急浮上」という言葉が頻繁に使われる。このほか、ネパール王室射殺事件、インドネシアの対外債務問題、韓国の統一相責任論、栃木県黒磯市の女児誘拐事件、神戸市北区の女子中学生殺害事件などでも使われた。 この言葉が使われ出した経緯について振り返ってみると、実は2001年2月10日午前8時45分、愛媛県立宇和島水産高校の実習船えひめ丸がハワイ・オアフ島沖で急浮上した米原子力潜水艦と衝突し、沈没した事故が起きてからであることがわかる。事故後、実習船に乗り組んでいた35人のうち生徒4人を含む9人が行方不明となり、その後八人の遺体が収容された。 「浮上」という言葉が多用されるのは、米原子力潜水艦の「急浮上」による事故が、人々に大きな衝撃を与えたからではないか? それで各メディアが相次いで「浮上」という言葉を多用し、「浮上」した事件を取り上げたのではないか? 用語として頻繁に使われるようになり、文字通り「浮上」が浮上したのだ。 この言葉が流行語になるかどうかはわからないが、こうしたことで、この言葉の使い方がよくわかるようになった。また、昨年起こったさまざまな事件についても、よく理解できた。 いくつかの新しい言葉が、いまも脳裏に「浮上」してくる。アイドルの香取慎吾が扮する慎吾ママの「おっはー」(おはよう)に続く新語「おっつー」(お疲れさま)や、小泉首相の所信表明演説で広まった「米百俵精神」「聖域なき」(構造改革)などである。新語や流行語を通して深める日本社会への理解は、私が体得した貴重な知識となっている。 (本誌東京支局長・張哲) |