漢詩望郷(32) 『唐詩三百首』を読もう(24) 杜甫を読むB この頃の詩、「房兵曹の胡馬」や「画鷹」などは、杜甫の詩人としての鋭い観察眼が感じられます。内容も胡馬や鷹に彼の人生のあり方を鋭く切り込ませたもので、非凡なものを感じます。 やがて、天宝3年(744)4月の頃、杜甫は、李白と運命的出会いをします。杜甫33歳、李白44歳でした。李白は、3年前、都長安で朝廷に迎えられましたが、彼の自由奔放な人間性は、真に理解されることなく、都を去り洛陽にさしかかったところでした。二人がどのようなキッカケで出逢ったのかも分かりません。漢詩史上に燦然と輝く二人が共に時間を過ごすことが出来たことは、奇蹟かも知れません。しかも二人の詩風は全く違ったものでした。杜甫は年長である李白を敬愛しています。当時の詩で「君を憐れむこと弟兄の如し」と詠い、友情の深さを感じさせます。やがて、二人は別れますが、これ以後、再び会うことはありません。その李白を杜甫は、その後も思い続けます。この思いは、何故なのか考えてみると面白いと思います。 杜甫は、天宝5年(746)長安の郊外に居を構えます。この遺跡が長安杜公祠です。これについては、次回お話しします。次にあげる詩は、「唐詩三百首」には載せられませんでしたが、杜甫が李白を思っていたことを伺わせる当時のものなので読んでみましょう。 春日李白を懐う 白也詩無敵、飄然思不群。 【通釈】 天才は天才を知る。この頃の杜甫の詩には、素晴らしいものへの絶対的な評価があると思います。他にも「飲中八仙歌」等もあり、彼の鋭い評論は止まることを知りません。学問に燃えて、世にでんとしていた杜甫の気持ちが伝わってくると思います。 |