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年配の人たちによれば、昔、貧しかったころのごちそうには二つがあった。その一つがゆで卵である。赤ちゃんの生まれた家があると、その親戚や隣近所の人たちが卵をたくさん集め、産婦に贈った。産後の体をいたわるためだ。
もう一つが、紅焼肉と呼ばれる豚肉のしょうゆ煮。昔は肉が高かったので頻繁には食べられなかったが、春節(旧正月)や祝祭日になると、紅焼肉を鍋いっぱいに作ったものだという。
いつごろかはわからないが、ある人がこの二つをいっしょに煮込んだ新しいメニューを発案した。「良いものをさらに良くする、極上品にする」という意味が込められているという。まるい卵が「元宝」(旧時の貨幣で、金銀を錠状に鋳造したもの)の形に似ているため、人々がこの料理に「元宝肉」という美しい名前をつけたのだった。
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豚肉は縦4センチ、横3センチの大きさに |
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ネギ、ショウガ、サンショウ、八角など香味野菜や香辛料 |
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ゆで卵の皮をむいて、用意する。 |
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鍋で1時間ほど煮込む |
生活が豊かになったこんにちでは、祝祭日でなくとも元宝肉が食べられるようになった。本社職員の葉広中さんにとっては、食べたくなると作る「日常食」となっている。そんな葉さんに教えてもらった元宝肉の作り方は、次のとおり。ご興味のある方は、ぜひ試してみてください。
@豚肉は縦4センチ、横3センチの大きさに切り分ける。
肉は、中国で「五花肉」と呼ばれる、豚の前足と腹の間の部分(ばら肉)を使うこと。脂身と赤身が層をなしていて味わい深いので、肉の煮込みにはピッタリだ。
A鍋にサラダ油を熱し、砂糖を少々加える。よくかき混ぜた砂糖が褐色に変わり、ブツブツと泡立てば、・の肉を入れてよく炒める。
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本社職員の葉広中さん。エプロン姿が似合っています |
B肉にほどよく焼き色がつけば、料理酒としょうゆ、塩、ネギ、ショウガ、サンショウ、八角、桂皮、それに肉がひたるまでの温水を加え、強火で約五分煮込んでから、弱火で一時間ほど煮込む。
Cその間に、ゆで卵を用意する(卵の数は、肉の量やお好みで加減すること)。ゆで卵は皮をむき、白身の部分にナイフで切れ目を入れる。見た目をよくし、味をしみ込ませるためである。
D弱火で煮込んだ肉に・のゆで卵を入れ、10分ほどいっしょに煮込めば、できあがり。二つのうまみが、豊かにとけあうごちそうである。
[ポイント]
★Aの肉は、時間をかけてよく炒めること。焼き色をつけるためだけでなく、余分な脂をとるためでもある。肉の脂が出てきたら、調味料や香味野菜、香辛料などを加える。
★Bは、温水を少しずつ加えるのがコツだ。冷水を使えば、せっかくの肉のうまみが閉じ込められてしまう。温水を少しずつ加えてこそ、うまみが十分に引き出せるのである。
材料(3人分)
豚ばら肉……500g 卵……5個
サラダ油、砂糖、料理酒、しょうゆ、塩、ネギ、
ショウガ、サンショウ、八角、桂皮……各少々
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