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上海博物館
上海博物館館長 陳燮君

上海博物館の外観

 上海博物館は、新中国成立後の1952年に創建された大型総合古代芸術博物館である。

 新館は1996年10月12日、上海市中心部にある人民広場の南の端に落成、開館した。新館のデザインは奇抜でとても目を引く。青銅館、陶磁器館、書法館、絵画館、彫塑館、玉器館、印章館、貨幣館、家具館、少数民族工芸館などのほか、3つの臨時展示
ホールがあり、陳列面積は1万2000平方メートルに及ぶ。

 価値の高い陳列品だけでなく、世界一流の設備を備え、多くの文物研究家、文物鑑定の専門家を抱えている。また、120種以上の学術書や博物館所蔵品の図録、目録を出版し、各種の国際的学術会議に参加した職員数は100人を超える。上海博物館が、国際学術交流活動を組織した数も少なくない。

 開館以来約50年で、上海博物館は、購入、寄贈、調達、交換、考古発掘などのルートで、99万7000余点の収蔵品を収集した。中でも特に貴重な文物は、12万1000余点である。青銅器、陶磁器、書法・絵画が収蔵品の中心で、国宝レベルの一級品も数百件にのぼる。これらのうち、西周の「大克鼎」、牛形の「犠尊」、書聖・王羲之の『上虞帖』は、秘宝中の秘宝と言える。

酒温める器 牛形「犠尊」

                魯忠民


牛形「犠尊」(青銅器)
春秋戦国時代(紀元前6世紀) 長さ58.7×高さ33.7センチ 1923年 山西省渾源県陳李村出土

 青銅器 春秋時代(紀元前6世紀) 長さ58.7×高さ33.7センチ1923年 山西省渾源県陳李村出土

 犠尊は、古代に使われた酒を温めるための器。写真の通り、水牛の形をしていて、首と背中に計3つの穴がある。真ん中の大きな穴に酒の入った器を置く。前後の穴には、酒を温めるためのお湯を注ぐ。

 商や周の青銅器で、このような構造のものは極めて珍しい。落ち着いた造型で、文様が美しく、特に注目に値するのは、鼻輪がついていることだ。これは、春秋時代に、すでに、牛に鼻輪をつけて飼いならしていたことの証拠であり、中国家畜飼育史を研究する上での貴重な実物資料となっている。