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環境にやさしいランプ
銀糸象嵌の「青銅牛灯」
 
 魯忠民





青銅器
後漢(西暦25〜220年) 高さ46.2×長さ36.4センチ

 

 銀糸象嵌の「青銅牛灯」は、中国語では「錯銀飾青銅牛灯」という(「錯銀」とは、銀糸で模様や文字などを象嵌する手法)。これは1980年5月、江蘇ハン江県甘泉鎮の後漢の陵墓から出土した。銘文によると、陵墓の主は、後漢(25〜220年)初期に葬られた広陵王・劉荊である。

 中国でのランプの使用は、戦国時代(前475〜前221年)に始まったとされている。漢代には、すでに広く普及していたが、一般市民は陶磁器製ランプを用い、青銅製の使用者は大部分が貴族だった。

 今回紹介した牛形の青銅製ランプは、「紅燭灯」と呼ばれ、灯台、油ランプ、カバー、フタの四部分から構成されている。ばらすことが可能で、拭き掃除にも便利だ。

 油ランプの内部には、二枚の青銅製の半円形板があり、風を遮るだけでなく、光の角度や明るさを調節できる。フタにはキセルのようなパイプが付いていて、煙はそのパイプを通って牛の腹部の水に溶け込み、室内の空気を新鮮に保つことができるという、巧妙な仕掛けになっている。

 このランプは、形が美しいだけでなく、全体に銀糸で精緻な模様がほどこされている。雲と螺旋模様を組み合わせた図柄を背景に、竜、鳳凰、虎、鹿、それに各種の神仙や妖怪などのイメージが描かれ、その奇特な構図や生き生きとした自然な姿は、最高傑作の一つと呼ぶにふさわしい。

 
 

南京博物院
文・魯忠民
 写真提供・人民画報出版社
南京博物院の外観
 


 南京博物院は、中国でもっとも早く創建された博物館のひとつである。前身は、中国近代民主革命家、教育者で、当時、国立中央研究院院長を務めていた蔡元培さん(1868〜1940年)の提唱により、1933年に創立された国立中央博物院準備処である。

 蔡さんは、自らが第一回理事会の理事長を兼任した。そして、購入・発掘・調達を通して、中国全土の20〜30万に及ぶ一流文物を収集した。その中には、絵画「歴代帝王像」「司母戊鼎」などの極めて貴重な国宝も含まれていた。

 1949年に新中国が成立すると、首都が北京に移り、従来の国立中央博物院は、1950年に国立南京博物院と名前を変えた。その後1954年9月、江蘇省の管轄となった。

 博物館の陳列大殿では、常設展として、「長江下流の五千年文明展」「私たちの明日――祖国の歴史、民族、文化展」「江蘇考古陳列」を行っている。その他、面積1万2600平方メートルの、新設された古代宮殿式の芸術陳列館があり、珍宝館、青銅館、書画館、陶磁器館、玉器館、織物・刺繍館、陶芸館、漆芸館、民俗館、現代芸術館、名人書画館の11テーマに分けられている。

 現在、南京博物院には、約42万の各種収蔵品があり、そのうち、国宝級文物及び国家1級文物は2000以上に及ぶ。