共産党に入党した民営企業家

                      丘桓興

中国共産党の第16回全国代表大会に出席し、内外記者団と会見した「飛躍集団」の邱継宝社長

 

 「中国の民営企業は大発展、大飛躍の春を迎えた」――昨年11月8日、中国共産党の第16回全国代表大会(16大)に出席した民営企業家の邱継宝さんは、江沢民報告を聴いた後でこう言った。報告の中の「いささかも揺ぐことなく、非公有制経済を奨励し、サポートし、導かなければならない」という言葉に、とくに精神を振るい立たされたのである。民営企業は非公有制経済に属し、その中に株式制の民営企業や私営企業、個人業者を含んでいる。

靴の修理工から大社長へ

 今年42歳になる邱さんは、容貌は精悍でやり手の印象を与え、話をすれば論理的で、しかもユーモアがある。現在は中国東南の沿海に位置する浙江省の有名なミシン生産企業の「飛躍集団」の社長である。

 この企業は、現在の固定資産10億5000万元、2001年の売上げ額は16億5000万元、純利益は8000万元以上にのぼる。生産している各種のミシンは、国内販売だけでなく欧米、日本、韓国など百余の国や地域に輸出され、昨年の輸出は1億ドル以上に達した。社長である邱さんの株式保有は、企業全体の83%を占めている。

 しかし、この当代の億万長者は、その出身は本当に貧しく、先祖代々農民であった。彼は中学を途中で退学し、靴の修理工になり、その後、小商いに従事していた。

 20世紀の80年代、中国政府は徐々に私営経済の発展を解禁したため、私営の工商業と生産企業が雨後の筍の如く中国の大地に出現した。1986年、邱さんは地元の政府の支持と奨励を受け、主に銀行借款に頼って、故郷の浙江省台州市で一軒の小さなミシン生産工場を立ち上げた。

 そこから彼はひたすらミシンの生産に没頭した。よく働き、よく倹約して資金を貯め、拡大再生産を行い、技術面での人材を招聘し、米国や日本の進んだ設備を導入し、絶えず製品の等級と質を高めていった。

ついに共産党員になる

 16大の代表として大会に参加した邱さんは、大会期間中、内外の記者たちが取材しようと追いかけ回す「注目の人物」であった。このため、大会の報道係は、もっぱら彼のために記者会見を設定した。

 記者たちが関心を持ったのは、彼が私営企業主の代表であり、しかもこうした身分の人物が党の全国代表大会に出席したことは、中国共産党の80余年歴史上、初めてのことである、という点であった。

「飛躍集団」の研究センターと生産現場(写真 飛躍集団提供)

 中国共産党の伝統的な政治概念では、私営企業主はすなわち資本家であり、労働者の余剰労働を搾取する人物に属す。こうした人物は、革命党のメンバーになれないばかりでなく、まさに革命の対象であった。

 今日、中国の前進にともなって、この種の概念は修正されつつある。なぜならそれは、中国の現実から遊離しているからである。

 今は亡きケ小平氏は20年前に、こう指摘した。それは、階級矛盾がすでに社会の主流ではなくなり、中国の今日の最大の矛盾は、経済が遅れているため、国民が物質的、文化的にさらに多くのものを求めているのに追いつかない、ということだ。このためオヒ氏は、経済建設を中心とする党の新路線を提起したのだった。

 中国共産党の江沢民・前総書記は、ケ小平理論をさらに一歩発展させた。彼は私営業主を「中国の特色ある社会主義事業の建設者」と、初めて正式に名づけたのだ。彼は、経済建設を加速するために、執政党である共産党としては、社会各階層の人々を団結させ、すべての積極的な力を動員し、私営業主を含む先進的な人々を党に加入させ、党の隊列を大きくするばかりではなく、党の影響力を強化し、党の社会に対する結束力を増強しなければならない、と考えた。

 邱さんは身をもってこれを体現している。現在、全国の私営企業は2670余万あり、私営企業の生産額は中国の国内総生産(GDP)の43%を占めている。私営企業に働く人は1億人以上いて、その発展の趨勢は依然として強い。今日の中国の私営企業の発展は、生産力の発展を促進し、国家の税財政収入を増やすばかりでなく、さらに就業を拡大し、社会を安定させている。もっと言えば、今日の私営企業主は、以前の資本家とは違って、彼らこそ改革・開放の受益者であり、社会主義制度を擁護し、労働者大衆とも良好な関係を保っている。政治的にも経済的にも、無視することはできない力である、と彼は述べた。

 邱さんは江沢民前総書記が、執政党に関して「時代とともに前進する」という新しい考えを示したことを賞賛し、記者団に対して、自分はこの新しい思想の擁護者であり、実践者でもあると述べた。

党員としての義務を果す

 邱さんが率いる「飛躍集団」には現在、1700人以上の職員・労働者が働いているが、その中に108人の中国共産党員がいる。会社内に党委員会が設立され、党委書記は人望の高い老党員である。邱さんは党委員会の委員の一人である。規定に基づいて、企業内の党組織は、党の方針や政策の実現を宣伝し、職員・労働者の教育に気を配り、企業が発展を維持するための各項目の権利の保障をしっかり行うなどの責任を負っている。社長としての邱さんは、全面的に企業の業務に責任を持つ。そしてまた一党員として、各項目の方針や政策が企業内で実施されることをしっかりと保証し、党員の義務を実践するよう努めている。

 十数年来、邱さんの指導の下で、彼の企業はずっと合法的な経営を行い、法規通りに納税する模範となってきた。

 「飛躍集団」の職員・労働者の生活は、企業の発展につれて絶えず改善され、一部の人々の生活は、早くも「小康」(いくらかゆとりのある)の段階に入っている。それは、マイカーや別荘を持ち、高級なものを食べ、流行の服を着るという生活である。

 邱さんの収入は多いが、依然として普通の庶民と同じ質素な生活をしている。家庭内の日常の出費を除いて、一部の金は社会公益事業や慈善事業に寄付し、残りの金は企業の拡大再生産に繰り入れている。彼は、企業を持続的に発展させることによって、絶えず国家の税収の増加に貢献し、さらに多くの人々に就業の機会を提供することが、社会に対する自分の恩返しであると見なしている。

 最近の調査資料によると、邱さんのようにすでに入党したか、またはまさに入党しようとしている私営企業の経営者はますます多くなっている。改革・開放の先進地域である広東省では、5分の1の私営企業経営者が入党を希望している。経済の発達が遅れている河南省清豊県では、全県内にある185の私営企業の中で、100人以上の企業主が入党したいと申し出ていて、現在までにすでに20数人が入党申請書を手交された。