ポンフェイ先生の旅アドバイスB
上から下から、滝を眺める

ダイナミックな黄果樹の滝

  Q 「九寨溝」(四川省北部)は日本のテレビでもよく紹介され、人気上昇中だ。友達に誘われているが、注意点は何だろうか。

 A 九寨溝の空港は、今年九月に開港すると聞いている。交通がだいぶ便利になり、今年は九寨溝ブームになるにちがいない。

 できれば、九寨溝では三泊してほしい。手つかずの大自然、自然の湖など見学できる場所は広い。夜は少数民族によるショーをお勧めする。レベルが高く、一見する価値がある。誰もが驚く華やかで楽しいショーだ。何よりも九寨溝は夏が涼しい。避暑地の最も理想的なところである。

 Q 九寨溝以外に、自然豊かな地域を旅したいが、ご紹介いただけないか。

 A まだ日本人観光客は少ないが、貴州省がこれからますます注目されてゆくだろう。私は貴州を中国の「カナダ」と呼んでいる。特に「黄果樹の滝」がすばらしい。滝を、上から下から、右から左から、表から裏から、眺めることができるのは世界でもここしかないだろう。5月から十月までは雨季で、この時期の滝は水量が多くて特に迫力があり、壮観だ。渇水期は避けたほうがよい。

 黄果樹で滝のほか見逃すことができないのは、鍾乳洞の「竜宮」と「天星観光ゾーン」である。「竜宮」は船に揺られ、鍾乳洞のなかをまわる。これは中国でも珍しい。「天星観光ゾーン」はできれば三時間ほどかけてゆっくり散策するのがよい。水上盆栽、水上石林、カルスト台地、滝、いずれも楽しい。

 黄果樹から貴陽(貴州省の省都)に戻る途中、ぜひとも洪福遠さんのろうけつ染め店に寄ってください。彼は「中国十大民間芸術家」の称号をもち、ろうけつ染めの世界ではとても有名な方である。値段も手頃、日本人好みのデザインも多い(住所・貴州省安順市福遠蝋染芸術館、電話・貴州0853―3461184)。

 Q 黄果樹以外に、貴州省の面白いところを紹介していただけないか。

ヤオ族の子どもの踊り

 A たくさんあるが、一つご紹介しよう。貴陽からバスで五時間ほど離れた「茘波県」だ。日本のどのガイドブックにも紹介されていない。「大七孔観光ゾーン」「小七孔観光ゾーン」「亀背山原始森林公園」(カルスト台地)、鍾乳洞の「天鍾洞」、また開発中の「茂蘭カルスト原始森林」など、いずれも面白い。ただし、歩くには少々体力が必要なので気をつけよう。もう少し整備されれば、家族自然体験旅行の理想的な場になるのは確実だ。

 茘波で、奥地のヤオ族の村との交流会を企画したことがある。ヤオ族の子どもの踊りがとても印象的だった。村は全然観光化されておらず、村人たちのほほ笑みや素朴さがとても魅力的である。鍾乳洞が驚くほど多く、カルスト地形の森林が貴重な茘波県、世界で滝の密度が最も高い黄果樹鎮など、今後、貴州省が話題を呼ぶことは間違いないと思う。観光客が少ないうちに一度行こう。手つかずの雄大な自然を満喫できる。


 彭飛(ポンフェイ) 中国上海生まれ。上海復旦大学卒業。1993年、大阪市立大学文学部で文学博士号を取得。現在、京都外国語大学助教授。旅関係の本に『中国旅行ハンドブック』(DHC)、『海南島をゆく』(PHP)、ほかに『大阪ことばと外国人 例文中国語・英語訳つき』(中央公論新社)など、著書多数。