ポンフェイ先生の旅アドバイスC
人気のトンパ文字をたずねて

トンパ文字。右上から下に、馬、森林、薬草と毒草を分ける、もたれる、机、寝る・横になる

 Q 最近、よく耳にするが、トンパ文字ってどんな文字?

 A 中国雲南省の麗江古城(世界文化遺産)に現存する象形文字だ。文字伝承者がご存命なので、世界の最後の象形文字と注目されている。日本ではキリンビバレッジ(株)が発売した飲料「日本茶玄米」がトンパ文字を使用して話題をよんだ。トンパ文字の名刺、トンパ文字のTシャツ、トンパ文字をあしらったペンダント。特に日本の若い女性に人気がある。トンパ文字を知っているのに、麗江を知らない人が多いのもおもしろい現象だ。私のところにもトンパ文字を使って店の看板にしたい、トンパ文字の書籍を紹介してほしい、トンパ文字の講座を聞きたいなど、問い合わせも多かった。

 Q 麗江には簡単に行けるのか?

 A 東京と大阪から昆明へ直行便(JAS)が運航している。昆明から、飛行機で30分ほどで麗江に着く。麗江を訪れる観光客は年間30万人前後。「官房大酒店」という五ツ星級のホテルもある。機会があれば、ぜひ黒竜潭公園にある「トンパ文化研究所」を訪ねてください。グループで行く場合は、事前に連絡したほうがいい(電話・麗江0888―5124676、趙世紅)。トンパ文字の伝承者に出会うことができるかもしれない。

 貴州と比べて、雲南のほうが標高が高い。麗江ではゆっくりと歩こう。

 Q トンパ文字のほか、麗江の見どころは何か。

 A 大索道(ロープウェーで4506メートルまで登り、玉竜雪山を楽しむ)、小索道(リフトで雲杉坪という草原へ行き、玉竜雪山を眺める)、大研鎮(800年前の町の風景を保っている)などがある。いずれも夏はそれほど暑くないのも魅力で、行く価値がある。夜はナシ族の歌と踊りのショーがお勧めだ。

 Q なぜトンパ文字が日本で急に話題になったのか?

浅葉克己さんは昨年秋、紫綬褒章を受章した(黒竜潭で)

 A 1999年に昆明で開催された「花博」(世界園芸博覧会)をはじめ、雲南を紹介する記事や写真集、エッセイ、日本のテレビ番組などの影響で、雲南は日本での知名度が高い。雲南への交通の便もよくなり、観光客が増えたことも要因の一つだ。また、東京在住のアートディレクター、浅葉克己さんの仕掛けとも関係している。彼はトンパ文字をイラスト化した名刺やシールを発案した。しかもトンパ文字に新しい意味を与えているのがおもしろい。たとえば、「座る」のトンパ文字に「チャンスを待て」、「歩く」のトンパ文字に「行動あるのみ」。浅葉流の発展的な意味の付加で、かわいい文字のなかに自分の願いをかなえ、幸せをよぶ不思議な力がこもっていると感じとるからだろう。

 Q トンパ文字はいつごろの時代の文字か。

 A 成立年代の解明は、トンパ文字研究の最大の課題である。千年前にすでに存在しているが、有力な手がかりはまだ見つかっていない。そのなぞを解き明かす資料の出土や大発見が期待され、多くの人々の関心を引いている。

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京都市右京区西院 京都外国語大学 彭飛
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 彭飛(ポンフェイ) 中国上海生まれ。上海復旦大学卒業。1993年、大阪市立大学文学部で文学博士号を取得。現在、京都外国語大学助教授。旅関係の本に『中国旅行ハンドブック』(DHC)、『海南島をゆく』(PHP)、ほかに『大阪ことばと外国人 例文中国語・英語訳つき』(中央公論新社)など、著書多数。