中国には、さまざまな「麺食」(小麦粉で作った食べ物)がある。よく知られているのが、餃子(ギョーザ)と麺だが、ほかに独特な地方色に彩られているのが、今回ご紹介する「猫耳朶だ。
本社財務部の童永恩さんは北京生まれ。家ではいつも各種の麺食を作っている。中国の北方の人たちには、麺食を食べる独特の方法があるという。それは、よく練った生地を小さなかたまりに切りわけ、親指を使って中央が凹型になるようによじる。それを沸騰した湯でゆでてから中華鍋に入れ、野菜や肉といっしょに炒める、というものだ。この小さなかたまりが猫の耳に似ていることから、料理の名前も俗に「猫耳朶と呼ばれるようになった。
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財務部の童永恩さん |
童さんは、幼いころに猫耳朶を食べたことがあるが、その後は食べる機会も減ったため、だんだん記憶が薄らいだ。ところが二年ほど前から、彼女の家では甘粛省から来たお手伝いさんを頼むようになった。お手伝いさんは家事の合い間に、ふるさとでよく作っていた猫耳朶をこしらえた。それは実に独特で、簀のような細いコーリャンがらの「蓋簾」を使って、生地をよじった。それで、美しくめずらしい模様が表れたのである。
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よく練った生地を、小さく切りわける |
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親指を使って生地をよじる |
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沸騰した湯でよくゆでる |
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材料をそろえて、サッと炒める |
豚の赤身とニンジン、セロリ、水でもどしたキクラゲと合わせて炒めると、彩りもきれいだし、とてもおいしい。童さんは、この料理が気に入って、今では彼女の食卓の「常連客」になっているという。作り方は、次のとおり。
@小麦粉は水を加えながらよくこね、丸くまとめたら、パチンコ球ほどの大きさに切りわける。
A簀(あればコーリャンがらのもの)の上に@を置き、一つひとつを親指で軽くよじる。すると、一方に模様が表れ、もう一方は凹型にへこむ。
Bよじった生地を沸騰した湯の中に入れ、四分ほどゆでたら、穴じゃくしですくう。
C中華鍋に食用油を熱し、ネギとショウガを炒めたら、食べやすい大きさにスライスした豚肉とニンジン、セロリ、水でもどしたキクラゲなどの材料を加える。
D半ば火が通れば、ゆであげたBを加えて炒め、さらに細かく切ったニンニクの芽、塩、お好みで化学調味料を加えて、サッと炒めてできあがり。
【一口メモ】
★「蓋簾」は、コーリャンがらなどで作った円形のキッチン用具。鉢や鍋のふたにするほか、食べ物を置く皿としても用いる。
[材料](3人分)
小麦粉…………………………500g
ニンジン……………………2本
セロリ…………………………1株
水でもどしたキクラゲ………50g
豚肉(赤身)…………………100g
ネギ、ショウガ、ニンニクの芽、
食用油、塩……………………少々
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