泰山の十八盤というつずら坂の路

　山東省は、中国大陸の東部沿海にあり、経済がかなり発達している省である。北京と上海の中間に位置し、海を隔てて日本と向かい合っている。面積は15・67万平方キロ、海岸線は3100キロ以上ある。人口は940万人を数える。

　ずっと昔から山東省は、日本と密接な往来があった。秦の時代、始皇帝は徐福を派遣して、山東省の膠東半島から数千人を率いて東の日本へ向かわせた。山東省・琅ヤ台にはいまも、当時、徐福が東へ向かったときの遺跡が残っている。徐福の一行が着いたと言われる日本の和歌山県と山口県は、山東省と友好関係を結んでいる。

　山東はもともと「孔孟の郷、礼儀の邦」と呼ばれている。孔子はこの地で誕生した。泰山はこの地にそそり立ち、黄河はこの地で海に注ぐ。

　歴史的に見れば、中華文化にいまも重要な影響を与え続けている著名人がこの地から輩出した。例えば、偉大な思想家であり、教育家でもある孔子が樹立した儒家の学説は、中国伝統文化の支柱となっている。有名な古代軍事思想家の孫武が著した『孫子の兵法』は、いまでも世界の軍事と経済の分野で崇拝される経典となっている。

　山東は孔子、孫子のほか、平和主義を主張した墨子、書聖の王羲之、大工の神さま魯班、神医の扁鵲、三国志の諸葛孔明、文学者の李清照、辛棄疾、蒲松齢らもこの地の出身だ。

煙台の蓬莱閣

　山東省は観光資源にも恵まれている。観光スポットは700余りあり、そのうち、ユネスコの世界遺産リストに登録されたものは2カ所、国の歴史文化名城は六カ所、国の風景名勝地は3カ所、国の自然保護区は三カ所、国の森林公園は26カ所、国や省クラスのリゾート地は16カ所、「中国優秀観光都市」は12にのぼる。

　孔子の里・曲阜には、世界でも珍しい「東方文化の華」と称される「曲阜三孔」（孔府、孔廟、孔林）の古建築群が完璧に保全されていて、ユネスコの世界文化遺産リストに登録されている。

　数ある中国の山の中で「山々の父」とも「五岳独尊」とも称される泰山は、山東省の中部に位置し、雄大かつ壮麗な風景と、厚みのある文化的蓄積で有名であり、ユネスコの世界自然遺産リストと世界文化遺産リストの両方に登録されている。

　「中華民族の揺りかご」である黄河は、山東省内を570キロ流れ、渤海に注ぐ。黄河の河口である黄河デルタは、中国でもっとも整った、もっとも広い、もっとも豊かな湿地の生態系で、「鳥類の国際空港」と言われ、国のクラスの自然保護区である。

　ホウ突泉、千仏山、大明湖、霊岩寺は、「泉城」といわれる省都の済南に彩りを添えている。2008年の北京オリンピックで唯一、一部の競技が行われる都市の青島市や、「この世のパラダイス」といわれる煙台市、「もっとも住み心地がよいモデル都市」という威海市、新興の海辺都市の日照市、これらの都市が中国東部の数少ない「黄金海岸」を形成している。

孔子の生誕2550年祭

　また、戦国時代の斉国の故都、ﾗﾍ博には古城遺跡、斉の万里の長城遺跡、東周殉馬館、『聊斎志異』の作者で「短編小説の王」といわれる蒲松齢の旧居などがある。歴史と文化で有名な青州市の竜興寺で発掘された千年以上前の、穴の中に埋められていた仏像群は、20世紀中国考古学の十大発見の一つと言われる。

　楊家埠の年画と凧は、郷土色が濃厚で、民俗色が強い。「中国北方の水城」との誉れが高い聊城市は、東昌湖の開発に大いに力を入れて、「煙柳碧水、灯影ショウ声」（かすむ柳と青い水、光と影に櫂をこぐ音）といった旅情をつくり出している。

　また、小説『水滸伝』の舞台の梁山、『金瓶梅』の舞台の臨清には、今もその遺跡が残っている。古い運河のほとりにある微山湖に咲く一面の蓮の花は、「桃源の仙境」の感を与える。

　山東省の観光祭りの行事は豊富多彩である。ﾎｫ坊の国際凧揚げ祭り、青島の国際ビール祭りと海洋祭、曲阜の国際孔子文化祭、泰山の国際登山祭り、カ沢の国際牡丹祭などである。このほか、修学旅行、書道の旅、ゴルフの旅、博物館の旅、生態系の観察旅行など、30以上のテーマ別の観光もある。

　また、山東は中国の四大料理の一つである「魯菜」の本場だ。斉魯文化がしみ込んだ美味しい料理に、世界でも有名な青島ビールや張裕の葡萄酒を添えれば、人々はその味に満足するはずだ。

　山東省は観光の条件が整っていて、観光サービスの施設も日増しに完備してきた。現在、中国最大の政府系の観光ウェブサイトである「山東旅行コンサルタントネット（www. sdta.gov.cn）があり、日本語版もそろっている。

済南の大明湖

　山東省には九つの空港がある。そのうち、済南、青島、煙台は国際空港で、国内線と国際線が飛んでいる。その中には全日空、日本航空、東方航空が青島から東京、大阪、福岡行きの三つの航空路を開設している。

　山東省には沿海の港湾が26カ所ある。青島から下関への海上航路がすでに開通している。山東省の高速道路は2411キロに達し、全国一位を占めている。鉄道網も完備していて、運行距離は2400キロである。

　日本から山東観光に来るのは便利になった。済南、青島、煙台、威海の四カ所の出入国管理を行う都市では、日本からの観光客に、現地でビザを発行するサービスを実行している。また、特に日本の青少年の中国理解を促進するため、山東省に来る修学旅行には、2002年1月1日からビザが免除された。

　山東省は、儒家の文化の薫陶を深く受けた孔子の里であり、古い文化をもつ斉魯の郷である。だから人々は純朴で、社会の治安が良い。山東の人々は、情熱的に客をもてなすので、山東の観光に来た人はきっと、自分の家に帰ったような感覚にとらわれるだろう。

　孔子の曰く。「朋あり遠方より来たる、亦楽しからずや」と。日本のみなさま。どうぞ山東省においでください。（山東省旅遊局提供）