この館 この一点

うわぐすりの変化を楽しむ
「鈞窯双耳三足香炉」
 
 魯忠民


陶磁器元(1271〜1368年) 高さ27センチ、口径25.5センチ

 

 「鈞窯双耳三足香炉」は、元代の鈞窯の中でもとても貴重な品で、1970年、内蒙古自治区フフホト市の近くで出土した。同時に出土した陶磁器は六点あり、どれも大型で趣がある。

 専門家の分析では、民間や宮廷で使われていたものではなく、有名な寺院に献上したものだと見られる。鈞窯にある記述の干支により計算すると、香炉が作られたのは、1309年だと思われる。

 鈞窯は、北宋(960〜1127年)初年に作られ始めた宋代の五大名窯のひとつである。産地である河南省禹県の古鈞台一帯は、かつて鈞州と呼ばれていて、そこから付けられた名称だ。のちに、近辺の県や河北省磁県などの陶磁器の産地が、鈞窯を模倣するようになり、鈞窯の一大系ができるきっかけになった。

 鈞窯は、「銅紅釉」の陶磁器と「窯変」(窯焼きの際の温度差によって起こるうわぐすりの化学反応)で有名だ。元代になっても人気で、多くの基本うわぐすりの色は、青地に紫がかった深紅のまだらである。

 今回紹介した「鈞窯双耳三足香炉」の縁の両側には、対称に長方形の耳のようなもの、その下には、獣の形をした一対の取っ手がついている。炉の首に当たる部分には、三頭の麒麟がほどこされ、一頭は後ろ側、二頭は正面にある。

 正面の二頭の麒麟の間には、凸型の四角い額のようなものがあり、上には、「己酉年9月15 小宋自造香炉一個」という楷書の銘文が彫られている。腹部には、獣の顔の模様がほどこされていて、香炉そのものは三本の獣の足で支えられている。

 全体が青いうわぐすりで処理されているが、「窯変」により、うわぐすりの色がうつわの表面に流れているようになっていて、とても生き生きとしたつくりだ。美しく、力強いこの鈞窯は、元代の陶磁の特徴をよく現している。

 
 

内蒙古自治区博物館
文・魯忠民
 写真提供・人民画報出版社
 

 内蒙古自治区博物館は、内蒙古自治区の区政府所在地であるフフホト市新華大街にある。同自治区に作られた最初の博物館であり、同自治区管轄の唯一の総合博物館である。1957年5月1日に創建され、敷地面積は1万平方メートル、建築面積は5000平方メートルである。

 所蔵品は10万点(セット)に達し、ほとんどは、北方の各民族の文物と古生物の化石だ。主に、東胡、匈奴、鮮卑、契丹、女真、蒙古など、中国の古代民族の歴史的文物が多い。当然、蒙古族関連の文物が多く、全国一の所蔵をほこる。

 古生物の化石標本も、時代を網羅し、種類が豊富であることで、世界的に知られている。古生物展示には、三葉虫、サンゴなどの無脊椎動物の化石、シダ植物の化石、ステゴサウルス、ティラノサウルス、イグアノドンなどの恐竜化石、河套オオツノジカ、マンモスなどの古動物化石の骨格などがある。

 また、約6000年前の仰韶文化や約4000年前の竜山文化が栄えた旧石器時代の石器、陶器、骨格なども展示されている。

 常設展示には、「内蒙古生物陳列」「内蒙古歴史文物陳列」「内蒙古革命文物陳列」「内蒙古民族文物陳列」の四つがある。

 調に進んでいて、年末には、一般公開される予定。

 開館 火曜日〜日曜日 9:30〜16:30