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石油に頼ってきた大慶は、今
後、ハイテクによる「第二の
創 業」を進めている
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中国最大の油田、大慶油田は、中国の国造りの牽引車となってきた。1960年代に開発されたこの油田は、多くの原油を日本に輸出して外貨を獲得するとともに国内の産業に石油を供給してきた。
荒野の中で油田を発見し、採掘するのは並たいていのことではない。「刻苦奮闘」の精神を発揮した労働模範の王進喜は「鉄人」と称えられ、いまも中国の人々の心の中に生きている。
しかし油田の埋蔵量は無限ではない。新しい科学技術をもってしても、これまでの産油量を維持することは困難になってきている。それなら大慶は、ロシアのバクー油田のように滅びてしまうのか。
いや、大慶はいま、ハイテクなどを駆使して、新たな都市に変貌しようとしている。「第二の創業」と呼ばれるその試みは、すでに成果をあげ、新しい大慶が徐々にその姿を現し始めた。
この夏、温家宝総理が大慶油田を訪れ、「第二の創業」の実情を視察した。そして吉林省長春で、政府の「東北振興計画」を発表した。大慶のような中国・東北の資源型都市をいかに近代的都市に転換させるかが、いま中国の大きな課題となっている。
激しく変貌する大慶の姿を現地からリポートしよう。
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大慶市内には多くの「泡子」と呼ばれる湖があり、「街の中に湖があり、湖の中に街がある」といわれる |
大慶市は、中国の東北部、黒竜江省の西南にある。ここで1959年に発見された大規模油田は、その年が中華人民共和国建国10周年の「大慶の年」に当ることから「大慶油田」と名づけられた。
その後、石油の採掘とともに石油関連の精製・化学工業も発展し、いまや240万の人々が住む中都市となっている。北京からは空路でハルビンかチチハルまでが約一時間半、そこから高速道路に乗って約一時間で着く。汽車で行くと約14時間かかる。現在、大慶でも空港を建設中で、完成すれば北京から約一時間半で行けることになるという。
繁華街で働く巨大ポンプ
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大慶市は、黒竜江省の省都ハルビンと、中ロ国境の町である満洲里市の間に位置し、交通は縦横に発達している |
大慶の市街地に入って最初にびっくりさせられるのは、繁華街の近くに、原油を汲み上げる巨大な鉄のポンプが稼働していることだ。
この採油ポンプは、頭を上げたり下げたりしながら、まるで中国式の叩頭式の礼をしているように見えるので、「叩頭マシーン」とも言われている。普通は、石油採掘現場の広々とした場所で稼働しているのだが、大慶では、街角でも工場の敷地の中でも、小学校の運動場でも公園の林の中でも、至るところでその姿を見ることができるのである。
どうして街中に採油ポンプがあるのか。案内してくれた地元の邸さんはその理由をこう説明してくれた。
「遊牧民が草と水を求めて住まいを移動していくように、石油採掘者たちも油を追って住居を移していくのです。都市を建設する際、私たちはできるだけ、生産量の豊富な油田や油井を避けて住宅などを建設しようとして来ましたが、どうしても避けることができない例外的なケースもあったのです」
「しかし」と邸さんは続けてこう言った。「こいつらは本当に偉い奴ですよ。黙々と、40年以上も働き続けているポンプもあるのです」。だが私には、このポンプの姿が、昼夜を分かたず黙々と働く大慶の人々の精神を象徴しているように見えた。
水に恵まれた都市
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毎朝早く、人々は黎明湖にやってきて、心身を鍛える |
もうひとつ、驚かされたのは、この北国の街の大慶が豊富な水資源に恵まれていることだった。大慶は、市内でも郊外でもあちこちに、大小さまざまな湖沼が点在している。現地の人々はこれを「泡子」とか「水泡」とか呼んでいる。大きなものは数十平方キロもあり、湖面ははてしなく広く、霞がたなびいている。小さいものは数十平方メートルで、小さな池のようだ。
市街地では、こうした湖沼は整理、統合されて、いくつかの社区(コミュニティー)の公園になっている。周囲には樹木や草花が植えられ、文化・スポーツ施設も設置されて、市民の休養と憩いの場となっている。
そのうちの一つ、黎明湖の周囲に造られた黎明公園は、毎朝、空が白みだすとともに市民が続々とやって来る。太極拳をする人、体操をする人、湖を回るジョギングをする人……ほとんどが中高年の男女だ。
夕方になると、納涼の人の流れがいつまでも続く。勤め帰りに友達とやってくる人、子ども連れの人……。ぞれぞれの好みに応じて、自発的にさまざまな活動が行われる。カラオケもあれば、当地独特の「二人転」という歌と踊りの民間伝統芸能も、屋外でのダンスもある。
大慶の市街地は自然がいっぱいあり、大自然の中に抱かれた都市といってもよい。市街地の面積はかなり広いが、それぞれの市街地は分散していて、建築群がくねくねと続き、密集した感じはない。大自然の風が、四方八方から吹き込んでくるのである。
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大慶市の住宅区 |
市内の建築物はあまり高くない。とくに住宅は四階建て以上のものは少なく、日照を遮られるという問題は起こっていない。夜になると人々は屋上に出て涼をとる。満天の星と月は、手を伸ばせばつかめそうだ。道路は広く、交通渋滞はない。緑地や広場が多い。大慶は広い土地を有しているからだ。
とはいえここは油田の街であり、石油化学工業の都市である。大気汚染があっても不思議ではない。だが、空気は透明、新鮮で、水は清く、空は青い。まったく汚染がないというのも、驚きの一つであった。
希少鳥類が繁殖する湿地
黎明湖の湖面の広さは約1平方キロもあり、北京の昆明湖の3分の1ほどに当る。しかし大慶市内には、このような公園が十数カ所もあるという。郊外も含めれば、大慶を取り巻いて1平方キロ以上の湖が80以上もあるという。こんなに水の多い都市は、中国では数少ない。
これには理由がある。大慶はもともと松花江と嫩江という二つの大河によって造られた松嫩平原の一部にあり、松嫩平原は、実は珍しい天然の湿地なのだ。その資源の豊かさは、世界でもあまり例を見ないという。このため国連環境計画(UNEP)は、大慶の北西部にある20余万ヘクタールの「紮竜自然保護区」を「国際重要湿地」に指定している。
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大慶の豊かな湿地は、丹頂鶴などの希少鳥類の生息地となっている |
この自然保護区では、「観鶴楼」の上から葦の草むらの中に潜む鶴や野鳥を観察したり、人工飼育場で鶴の群れと遊んだりすることができるのだ。
「紮竜自然保護区」は、絶滅が危惧される希少動物の一つである丹頂鶴の故郷である。現在、自然界に生息している丹頂鶴は世界に千羽余りしかいないが、ここにはそのうち野生の鳥は700羽余りが生息し、人工繁殖の丹頂は80数羽いる。また保護区内には、190種以上の鳥類が数万羽も生息している。
大慶をとり囲むさらに広い範囲では、240種以上の鳥類、数十万羽が生息しているといい、大慶市の動物保護部門は、こうした基礎の上に、東北アジア渡り鳥繁殖センターを建設しようとしている。
大慶の湿地帯にはさらに、広大な草原や牧場、農業の適地がある。大慶北部の林甸県では、低温の地熱地帯が発見され、すでに開発と利用が始まっていて、温泉につかることもできる。
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