日系企業がなぜ中国野球に投資するか

                            取材・文 坪井信人

 

誕生2年目の中国野球リーグ(CBL)でひときわ目を引いたのは、日系企業のロゴマークだった。中国での野球人気は高くないにも関わらず、なぜ、日系企業が中国野球に投資するのか。今年準優勝の天津雄獅(ライオンズ)のほか、中国代表チームのスポンサーにもなっている日立建機(上海)有限公司総経理(社長)の平岡明彦さんに話を聞いた。

 


CBL公認ボールを持つ平岡明彦さん

 ――どんな思いでスポンサーになったのか。

 日本が元気で、王貞治選手や長島茂雄選手が活躍した時代が、いまの中国と重なった。当社は油圧ショベルをはじめとする総合建機メーカーだが、当時は、建設機械の売上も倍々ゲームのように伸びていた。いまの日本の経済情勢は厳しいが、中国は当時の日本と似ていて、野球に投資することで夢を買ったと思っている。もちろん、これは純粋なビジネスだから、費用対効果を第一に考えている。
 
 ――なぜ野球だったのか。

 サッカー、体操、卓球などの選択肢もあったが、野球は日本人となじみが深く、また今年十月末には、札幌でアテネ五輪のアジア予選が開催されるという、目前の話題があったことが大きい。それでも、CBLには四チームしか参加していないわけだから、単独ではインパクトが小さい。決断できたのは、高成長を続ける中国が、「外国を見る」立場から、「外国から見られる」立場に変わってきたという背景があるから。野球チームのスポンサーになることで、中国国内からだけでなく、世界から注目されると見ている。昨年優勝の天津を選んだのは、強いチームをサポートしたかったから。

 ――投資メリットをどんなスパンで考えているか。

 いまの中国では、ある目標を達成するのに、日本の半分のスピードで実現が可能。北京五輪(2008年)までが野球の知名度を上げる期間で、その次の5年間にアジアリーグなどを立ち上げる動きが本格化するだろう。日本人は、大リーグでのイチロー選手や松井選手の活躍に酔いしれ、日米野球などで日本が勝てればうれしいと感じる。国威発揚のためには、こんな「外国と争う場」が必要で、将来的にアジアリーグが実現すれば、中国野球はさらに盛り上がり、投資メリットも十分に発揮できると考えている。

 ――社内での野球への関心は?

 あちこちにポスターやボールを飾ったためか、昼休みにキャッチボールをする人が出てきた。個人で応援に出掛けた従業員もいるようだから、シーズン中にSARS騒ぎが起こり、応援団を送れなかったことが残念でならない。来年以降は、工場や事務所がある安徽省合肥、上海、北京の従業員を動員して、各地で応援が可能だろう。日系企業は、どこも自分のチームだけを応援する気持ちでスポンサーになったわけではないはず。CBL全体が盛り上がってくれ、という思いがある。

 
――スポンサーとしてのアピール方法は?

 建設機械といえば、ショベルカー、クレーン車などの「働く自動車」が男の子に人気で、おもちゃ売り場に行けば、三分の一はそんなおもちゃが占めている。今後はミニチュアを配っていきたい。中国代表のユニフォームには、企業名を「日立建机」と漢字で入れた。これで、アジアの漢字圏の人たちにもアピールできる。わが社のロゴが入った代表が札幌で行進することで、中国野球に関心を持ってもらえたらうれしい。 (取材・文 坪井信人)

中国野球の日系スポンサー(2003年5月末現在)
会社名
スポンサー対象
佳能(中国)有限公司(キャノン) 中国野球リーグ
上海美津濃有限公司(ミズノ) 中国野球リーグ
日本航空株式会社 広東獵豹(レパーズ)
ソウ楽B四洲有限公司(カルビー) 天津雄獅(ライオンズ)
日立建機(上海)有限公司 北京猛虎(タイガース)
小松(中国)投資有限公司 上海金鷹(イーグルス)
三得利(中国)投資有限公司(サントリー) 上海金鷹(イーグルス
日清食品(中国)投資有限公司 上海金鷹(イーグルス

アジア野球選手権2003
(アテネ五輪アジア予選)
(札幌ドーム)

準決勝リーグ 10月31日〜11月2日
決勝リーグ 11月5日〜11月7日

※中国代表は準決勝リーグから、日本代表は決勝リーグから登場。準決勝リーグの1位チームが、11月5日、日本代表と対戦する。