毎年3月に行われる全国人民代表大会(全人代)が近づき、各地の代表選挙の準備が大詰めを迎えている。北京市の朝陽選挙区では、「ニセモノ撃退の英雄」「権利擁護のパイオニア」として有名な王海氏が末端の人民代表に名乗りを上げ、注目を集めている。
1973年、山東省青島市に生まれた王氏は、95年から「ニセモノの疑いのあるものを買い、賠償を求める」という独特の方法で、携帯電話、家電製品、医薬品などの幅広い分野のニセモノ撃退、権利擁護活動を展開し、一時、「王海現象」と呼ばれる大論争を引き起こした。
その後、北京大海商務顧問有限責任会社を設立、企業・社会団体として、損害をこうむっている企業に、ニセモノ対策の専門調査やコンサルティングサービスを提供している。2001年5月には「王海オンライ」(www.wanghai.com)を開通させ、「中国で最も影響力のある権利擁護ホームページに発展させる」との目標を掲げた。
王氏のニセモノ撃退行為は、消費者の自己防衛意識を高めただけでなく、まだ知名度が低かった『中華人民共和国消費者権益保護法』の普及を加速させた。その結果、一部の商店からニセモノや欠陥商品が明らかに減り、ニセモノの製造・販売に関わる人は、「王海」という名前に恐れを抱くようになった。
彼はいま、人民代表への道を模索している。その夢は6、7年前から描いていた。当時、一部の商店が、消費者の権益を侵害していたにもかかわらず、法律の不備が原因で、消費者には抵抗の術がなかったからだ。
そして、王氏が中心になってまとめた『物業管理に関する立法議案』が、山東省代表の尽力により、2003年3月、全人代に提出され、全人代の立法事務の一つとなった。これにより、彼はより強く、代表になる必要性を感じた。代表になれば、弱者の利益を代表して意見を提出でき、立法に参与でき、法律に存在する抜け道をなくし、法律的側面から根本的な権利擁護を実現できると考えた。そこで彼は、出身地以外であっても代表として名乗りを上げることができることを知ってから、自薦の形で立候補する準備を進めてきた。
自薦で代表を目指す人材は、王氏が初めてではない。早くは1998年、湖北省潜江市の教育関係者が、初の自薦候補として当選した。もちろん今でも、自薦候補は多くの難題にぶつかるが、どんな困難があっても、自薦候補の一歩に、中国各界が関心を寄せている。
『人民日報』にも、「自薦候補の増加」と題する文章が掲載され、この動きを奨励している。王氏をはじめとする民間の自薦候補の誕生は、中国の選挙メカニズムの改革の未来を映しているのかもしれない。(文・張春侠)
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