私の妻(日本人)は昨年、上海へ中国の生活を体験するため出かけた。ある日、長男(5歳)と長女(2歳)を連れて、上海動物園へ遊びに行った。夕方、妻らは居候している私の兄の家に帰り、"我在外面打架了"(私は外で殴り合いをした)と言って、兄たち家族全員を驚かせた。小さい子供を連れた女性が一人で、誰と殴り合いをしたのかと、皆の顔は真っ青。妻を囲んで事情を聞いた。
実は「殴り合いのけんか」ではなく、「口げんか」だった。動物園でパンダを見て、子供たちは大喜びした。さあ、帰ろうと動物園を出たとたんに、自転車に乗った男が猛スピードで真正面から走ってきた。急ブレーキをかけたが、長男にぶつかった。幸い長男は転びもせず大事にはいたらなかったが、その男はなかなか詫びない。それどころか、どっちのせいかと、まるでこちらに非があるように言ってくる始末で、妻と口論になったようだった。
我在外面打架了。(私は外でほかの人と殴り合いをした)
我在外面吵架了。(私は外で口げんかをした)
この二つの表現に気をつけよう。ちょっとおかしいと思うが、日本で刊行されている中国語の教科書には、"吵架"よりも"打架"のほうがよく出ている。"吵架"よりも、"打架"のほうを先に覚えてしまう日本人学習者が実に多いようだ。これはなぜか。
日本語の「けんか」の意味は、「口げんか」と「殴り合いのけんか」の両方の意味をもっており、意味領域が広い。日本の中国語教科書は「けんか」を"打架"のみと訳すことが多いのも主要な原因である。
"吵架"は「口げんかする」「口論する」「言い争う」の意味である。"吵嘴"
"争吵" "口角(jue)""斗嘴" とも言う。
妻は上海で初めて体験した口げんかで"吵架"という単語をしっかりと覚えたようだ。どこで"打架"の単語を覚えたかと聞くと、長男と長女は家でおもちゃの取り合いでけんかしたとき、中国の親戚からいつも"別打架了"(けんかしないで)と言われたので、聞き覚えたようだ。確かにこのように大人が子供に注意する場合に軽く使うようだ。
"一点点小事,別吵了"(ささいなことで、けんかしないでよ)とけんかを仲裁することを中国語では"
勸架"と言う。やじ馬のことは"看熱閙的人"と言う。
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