「水墨画を描く」A   講師 沈和年先生
日持ちする便利野菜――じゃがいも
 

完成 穂先に水を少々付け、色を薄め、続けて後ろのじゃがいもを塗る。とこるどころに余白を残してもよい。
沈先生の今月のことば「じゃがいもについて」

 じゃがいもの呼び名は、中国では地方によって違います。上海辺りでは「洋山芋」、北京の近辺になると、「土豆」と呼びます。教科書では「馬鈴薯」が一般的です。

 煮物や炒め物、スープによく使われるじゃがいもは、タマネギやニンニクなどと並んで日持ちするため、常備野菜として便利。身辺な食材を今回の題材にしてみましょう。

「じゃがいも」を描くポイント

輪郭線の強弱の付け方と並び具合で、じゃがいもの質感を出し、転がっている様子を表現する。

       
  1. 中筆に水を含ませ、余分な水気をふきんで取り、抑揚をつけながら矢印の方向に描く。

  2. 間隔に気をつけながら、手前から後ろへ順番に描いていく。   3. 大筆に水を含ませ、藤黄(植物からとった黄色の樹脂で、黄色の絵の具)を薄め、代赭と墨を少し加えて混ぜ、筆の腹も使って、手前から順番に塗る。  

【ちょっとバリエーション】

じゃがいもの絵が、単純で物足りないと感じた方は、こちらの絵にもチャレンジしてみてください。(1)(2)どちらも、じゃがいもとおなじ表現手法で描けます。題材を変えただけのため、抑揚がある線を活かして描いてみましょう。

 
(『ステキなはがき絵(犬と猫)』(ニ玄社)より)

  プロフィール
上海大学美術学院卒。唐雲氏に師事。1990年留学のために来日。洋画家・荻太郎氏に学ぶ。中国水墨画の伝統の上に、現代的で斬新な感覚を盛り込んだ画風は画壇で注目されている。現在、上海市美術家協会会員、日本翠風会代表、国際水墨芸術促進会運営委員。日本全国向けの水墨画添削指導に当たっている。作品集に『沈和年画集』(上海書画出版社)、『沈和年作品集1、2』、『墨絵をたのしむ』(全3冊)、『ステキなはがき絵』(全3冊)(二玄社)がある。