近年、農民出稼ぎ労働者に対する故意の賃金未払いやピンはねが横行し、大きな社会問題になっている。毎年、里帰りの季節である年末が近づくと、この種の社会問題が集中的に表面化する。
都市部で働く農民に対する賃金未払い現象は、いまだ解決の糸口が見えず、特に、建築、飲食業界や衣料、靴製造工場などの労働集約的産業で問題が突出している。全国総工会(労働組合)の統計資料によると、2003年11月段階で全国の都市部で働く農民労働者は約9400万人、未払い賃金総額は千億元前後に達している。そのうち、建築施工企業の未払い案件は70%を占める。
温家宝総理は2003年10月24日、三峡ダム地域を視察した際、山奥にある雲陽県竜泉村で、県中心部の「センター広場プロジェクト」の責任者が1年にわたり賃金を支払わず、農民労働者の生活にたいへんな不便をもたらしていることを知った。
そこで、時を置かずに関連部門に問題解決を指示したところ、しばらくして、建築会社から農民に合計3万6400元の未払い賃金が支払われた。総理自らが未払い問題の掛け合いをしたとのニュースが流れると、同問題が、改めて社会全体の関心を集める話題となった。
このほど、労働及び社会保障部と建設部(いずれも日本の省庁にあたる)は共同で、建築企業に存在する農民労働者の賃金未払いやピンはね問題を確実に解決し、農民の合法的権益を保護し、社会の安定を守ることの重要性をうたった通知を下達した。
同時に、各級の地方政府も同問題の解決に力を注ぎ、賃金関連の地方法規・規則を相次いで制定した。これらには、事業体または企業は、農民労働者と労働契約を結ぶ必要があること、未払い賃金のある事業体または企業の入札資格を取り消すことなど、厳しい措置が盛り込まれている。
北京市建設委員会はこのほど、「未払い賃金清算3年計画」を制定し、300億元以上ある北京の建築関係の未払い賃金を3年ですべて清算することを決定した。2003年12月初旬までに、北京市はすでに、70億元の清算を終え、故意に未払いを続けていた湖北省孝昌建築工程公司を北京市場から追放した。
農民の合法的権益を保護できるかどうかは、社会の安定と経済の発展に直接影響を与える。当然、農民労働者に対する賃金未払い問題の根本的な解決が待たれ、実現には社会全体の努力が欠かせない。一方で、農民が都市部で働くための公平な社会環境を作り出し、他方で、健全な関連法規を整え、農民の利益を保護することで、農民労働者が、未払い賃金の支払い要求のために走り回る必要のない社会を作ることが急務である。
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