Sketch of BEIJING

 
 


清明節(チンミンジエ)
写真・文  佐渡多真子

 清明節の日、おばあさんと両親に連れられて、小さな男の子がおじいさんのお墓にお参りに来ていた。中国の習慣にならって、墓石の名前をなぞっている。

 お墓に、おじいさんの写真が貼ってあった。この坊やが生まれるずっと昔、35歳で亡くなったそうだ。写真のその人は、おじいさんと呼ぶには、あまりに若い。

 この坊やは、この人が誰なのかわからずに、家族に連れられてお参りに来ているようだった。けれども、おじいさんは、孫の元気な成長を、きっと喜んで見ていることだろう。

 ふと気がつくと、この坊やを、ずっと見守るおばあさんの姿があった。その慈しみ深い表情を見ているうちに、この坊やは、きっとこのおばあさんが必死でつなげた、愛するおじいさんの命なんだ、と感じてきた。(2004年4月号)

  note
 
春の到来を告げる清明節は新暦4月5日ごろ。お墓参りをするほかに、ピクニック、植樹、ブランコ、凧揚げなどをして過ごす習慣がある。

 

 
  profile
佐渡多真子(Tamako Sado )
 1990年、フリーカメラマンとして独立し、日本の雑誌などで活躍。95〜97年、北京大学留学。その後、北京を拠点とした撮影活動を続けている。写真集に、『幸福(シンフー)?』(集英社)、『ニーハオ!ふたごのパンダ』(ポプラ社)がある。