チャイナスコープ
社会的弱者に配慮し 思いやりのある社会作り
 


 四川省の田舎から成都市に出稼ぎに出ている楊さんは、ある家政婦派遣会社と賃金交渉した際、法定の最低賃金基準である月340元を要求し、拒否された経験がある。

 すぐにでも仕事をしたかった彼女は、数十元のために貴重なチャンスを失いたくはなく、提示された月300元という条件を受け入れた。供給過剰の中国の就職市場では、楊さんのような競争力のない労働者が、労働に見合った対価を受け取れないケースがしばしばある。

 低所得者層(社会的弱者)の利益を保護するため、中国は1993年、『企業最低賃金規定』を公布し、労働者の権益を一定程度保護することに成功している。

 しかし、非公有制の就業形態(パートタイム、季節労働など)が日に日に増え、従来の月給を想定した最低賃金基準では、就業の多様化に対応できなくなっている。北京、上海などでは、パートタイム就業者層の最低賃金基準が公布されているが、労働者は弱い立場にあるため、細かい規定がない問題には効力が及ばないケースが多い。

 労働者が報酬を受け取る合法的権益を保護し、労働者個人とその家族の基本的生活を保障するため、今年3月1日、新たに『最低賃金規定』が施行された。新たな『規定』には、企業従業員だけでなく、出稼ぎ労働者やパートタイム労働者に関する規定も含まれている。

 『規定』では例外を除き、雇用者側は、労働者の残業手当や福利厚生を別計算した上で、賃金が当地の最低賃金基準を下回らないことを保障しなければならないとしている。違反した場合、労働保障部門は、雇用者側に未支払い賃金の2〜5倍の賠償金支払いを命じることができる。

 『規定』によると、最低賃金の基準は、一般的に月給と時給の二形式がある。

 月給の最低賃金基準を確定し、調整するには、当地の就業者及びその扶養人口の最低生活費、都市住民の消費価格指数、従業員の平均賃金、経済発展レベル、就業状況などの要素を参考にするだけでなく、従業員の社会保険及び住宅購入積立金も考慮しなければならない。また基準は、少なくとも二年に一回は調整する必要がある。


 中国では、多くの労働者が低所得者層に属する。もし政府が保障を与えなければ、基本的生活の権利が脅威にさらされる恐れがある。

 そのため労働市場の規則を法制化し、労働者、特に低所得者層の合法的な所得権の確保は、労働市場の健全な発展のための必然的な要求であるだけでなく、人を思いやり、社会的な公平を実現するための重要な保障である。